2023/12/04 ファン心理、このようにありたいもの!
ファン心理は、このようにありたいもの!朝日新聞「天声人語亅から連載 天声人語 朝日新聞 2023.11.26(天声人語)ストーンズと老いのかたちhttps://www.asahi.com/articles/DA3S15802214.html 理想の老いとは、何だろう。ロック音楽の代名詞、ローリング・ストーンズが18年ぶりに出した新作のアルバムを聴きながら、そんなことを考えた。しわくちゃのミック80歳、白髪キース79歳。ドラムのチャーリー・ワッツは2年前に逝った。結成60年を超える長寿バンドだ▼「老いも衰えも、変容がとても人間らしくて、魅力的なんですよ」。日本のファンクラブ会長、池田祐司さん(70)はそう語る。半世紀もの間、ストーンズどっぷりの人生を歩んできた強者(つわもの)である▼近年、高齢化したストーンズのライブには変化がみられるという。昔の曲は音が間引きされている。おやっと思う演奏も増えている。でも、それが心地よい。「失敗も面白くなるバンドです」。ファンたちは味わい深く、楽しんでいる▼新作は彼らにしては珍しく、レディー・ガガら著名アーティストが多数参加した。老練な知恵なのだろう。自分で難しくなった音は、変化を恐れず、助っ人と一緒に作ろうというかのようである▼晩年に失明した哲学者サルトルは「他者こそ私の老いである」との名言を残している。老いてなお盛んなのもいいが、衰えを認め、他者の助けを受け入れ、生き延びようとする。その振る舞いの何と人間らしいことか▼新作に続き、北米ツアーも予定される。ミックらの体を心配しつつ、ヨタヨタになっても頑張れと声援を送りたくなる。池田さんは言う。「ずっと一緒に育ってきたけれど、いまを生きている彼らが、一番好きですね」