明けましておめでとうございます。

新年一発目の更新は先月のことを。先月ということはもう去年のこと。
年明け最初のマジョルカ戦も終わり少々時間が経ってしまってますが、クラシコ観戦記で一番大事な試合のことを書きます。


2008年12月13日。第15節、カンプノウ・スタジアム。天候は雨。伝統の一戦“クラシコ”。
この時点では勝ち点35でバルサが首位。一方レアル・マドリードは前節ホームに難敵セビージャを迎え入れ、壮絶なド突き合いを演じるも3-4で敗北。順位は勝ち点26の5位。バルサとの勝ち点差は9。マドリーは直前に昨シーズン就任一年目にして見事優勝に導いたベルント・シュスターを衝撃の監督更迭。代わりに監督の座についたのは10月までトッテナムの指揮を執っていたファンデ・ラモス。セビージャの監督経験もあるファンデ・ラモスはリーガのファンにとっては名の通った監督。だが一方で96/97シーズンにはバルサBを率いセグンダからセグンダBへ降格させた監督でもある。

絶好調バルサと傷心マドリーの戦いは地元メディアもこぞって“3あるいは4対0でバルサが勝つ”などとバルサの圧勝予想を伝えていた。
前回、観戦した06/07シーズンのクラシコは直前に行われたCLの決勝トーナメント一回戦、バルサはリバプールに、マドリーはバイエルンに敗れ、あっさりビッグイヤーの夢を絶たれていた。そんな両チームの戦いとあって現地では“失意のクラシコ”と報じられていた。だが今シーズンの状況を考えれば明らかにマドリーにとって“失意のクラシコ”と言えそうだった。
これはライターの金子達仁氏が前々から言っている「監督交代劇があった直後の試合のキニエラは買い」。
キニエラとはサッカーくじ。監督が変わったすぐ後のチームの試合は“勝ち”に賭けろということらしい。それにしても、この試合ばかりはバルサの勝ちは鉄板。思い切って買うとしても精々引分けがいいところ。しかもマドリーはファンデ・ラモス監督就任直後に試合はミッドウィークに開催されたCLのゼニト戦で3-0で勝利し“勝ち”は使ってしまっていた。。。


カンプノウにはイムノが流れ選手が入場。一気にボルテージが上がる。
そしてスターティングメンバーの発表。まずはマドリーから。「カシージャス、サルガド、セルヒオ・ラモス、カンナバーロ、ラウール、ガーゴ、スナイデル、グティ、ドレンテ、イグアイン、メッツェルダー」。場内アナウンスは指笛ブーイングで一瞬にしてかき消される。耳をつんざくとはまさにこのこと。
一方ホームのバルサ。「ビクトル・バルデス、マルケス、プジョル、シャビ、グジョンセン、サムエル・エトー、リオネル・メッシ、ティエリ・アンリ、ダニエウ・アウベス、アビダル、トゥーレ・ヤヤ」。こちらは選手の名前が呼び上げられる旅に「ハイッ!」の大歓声。

マドリーは怪我人続出のため苦肉の策(?)か、本来右サイドバックのS・ラモスを左に置いてメッシにぶつけてきた。単純に守備の為なのか、あるいは目には目を歯に歯をでメッシ、ダニの上がって出来たスペースを攻撃力を使って制するというのか…。けれど普通に考えて左に置いた時点で右SBのS・ラモスに比べたら左からのオーバーラップは半減。やはりしっかり守ることが大前提だったのか。

前半はやはりメッシを中心にバルサが決定的場面を演出する。マドリーも序盤からメッシには強烈なタックルをお見舞い。戦う姿勢は失われていない。攻撃面では、ドレンテがキーパーと一対一でシュートという場面を作るなどビックチャンスもあった。ドレンテが左サイドから毒針を持って少ないチャンスでバルサに致命傷を与えようとゴリゴリと前へ行くドリブルにはバルサのディフェンスも少々手を焼いていた気がする。逆に右のスナイデルはまったく機能せず。コンディションが悪かったのか前半のうちに交代、背番号35番ミゲル・バランカが入る。正直、バランカを見たのは初めて。ここでも今のマドリーの厳しい台所事情がうかがえた。が、このバランカという選手、後半なかなか良かった。これからが楽しみな選手のようだ。
予想通りバルサがゲームを支配した前半は、結局0-0で終わる。マドリーからしてみれば「しめしめ」というところだろう。
一筋縄ではいかないマドリー。“ダービーマッチはその時の順位はまったく関係ない”とよく言うが、それを痛感した前半だった。さすがクラシコ。

後半が始まる。両チームとも選手交代はなし。バルサがいかにマドリーのディフェンスをこじ開けるか。それと後半は私が座っていた側のゴールへ向ってバルサが攻めてくる。こちらサイドでゴールが決まってくれればこれほど嬉しいことはない。ますます後半が楽しみだった。
だが試合は無常にも前半のまま0-0の展開が続く。

ペップが動く。左サイドのメッシを中央に、そしてエトーを右に。このポジションチェンジでセンターのカンナバーロとメッツェルダーを何とか引き出して堅い中央のディフェンスを崩したかったのだろう。さらにダニ・アウベスはウイングバックのような高い位置にポジションを保ち最終ラインはほぼ3バック状態になっていた。アンリ対サルガドはスピードで完全にアンリが制圧していた。
そして後半18分、グジョンセンに代えてセルヒオ・ブスケツが入る。

この采配が見事に当たる。連続してコーナーキックのチャンスを掴んでいたバルサ。ここもコーナーからのセカンドボールに2列目から飛び出したブスケツがミスの目立ち始めていたサルガドにペナルティエリア内で倒されPK!ノドから手が出るほど欲しかった得点のチャンス。キッカーはエトー。

ボールをペナルティスポットにセットするエトー↓
オフサイドって何ですか??

この30秒後、スタジアム全体がため息に包まれる。まさかのPK失敗。この勝負はカシージャスに軍配があがる。試合前、完勝ムードで一杯だったクラシコはどこへ行った???伝統の一戦の名に相応しい重厚な内容のクラシコになっていた。こんな時でもどこからともなくチャントが自然発生的に始まる。一人一人の声がまるでウェーブのようにスタジアムを一周し、そして最後には10万人の声が一つになる。この一体感は鳥肌物。
0-0で終了か…そんな嫌な空気が漂い始めていた後半38分。
再三再四掴んでたコーナーからだった。セルヒオ・ラモスとガーゴに挟まれたプジョルが魂のこもったジャンプ。このドッグファイトに競り勝ったプジョルが落としたボールはPK失敗のエトーの前へ。これはもう押し込むだけ。

カンプノウが揺れた。

電光掲示板には待ちに待った1-0の文字と得点者ETO’Oの文字↓
オフサイドって何ですか??

興奮状態のバルセロニスタ達にさらにプレゼントが。
時間はすでにロスタイム、最後の望みに賭けて前がかりになったマドリーのディフェンスは薄くなっていた。エトーに代わりピッチに入ったばかりのフレブが自陣からアンリへ縦パス一本。アンリは冷静に左でフリーになったメッシへ。最後は好セーブ連発のカシージャスをあざ笑うかのようなループシュート。ダメ押し。カンプノウはまさにフィエスタ状態。

この試合で感動したのはプジョル。守備はもちろん、お世辞にも決して効果的だったとは言えないがたまに見せるオーバーラップすべてにクラシコの重要さを分かっているカピタンの責任感が感じられた。それとマドリーの守護神カシージャスの気迫。もし0-0で終わっていたら間違いなくMVPは彼(個人的に)。数々の好セーブだけではなく際どいシュートを打たれた時は時間をかけてボールをセットしチームを落ち着かせる。そしてバルサを苛立たせる。このしたたかさは若くしてマドリーの正ゴールキーパーとなったカシージャスのなせる業。プジョル同様クラシコの意味を分かっている男の仕事っぷりをまざまざと見せつけられた。

マドリー側から言わせると、ドレンテがもしロッベンだったらなぁ… てとこか?

これでバルサがリーガを突っ走りそうな気もしないでもないが、イニエスタも戻ってきた事だし、ここは決して緩めることなく戦っていって欲しい。



Visca Barca!!