長居公園は大阪市住吉区にある都市公園・運動公園で、

広さは甲子園球場の約5倍に相当する66.12ha。

江戸時代は摂津国住吉郷と呼ばれる長閑な農村地帯で

米や麦、野菜などを栽培する田園風景が広がっていたとか。

1925年(昭和元年)、大阪市は当該土地を買収して長居町と名付け、

臨海(りんなん)寺公園として造営計画を決定した後、

長居公園と改称して1944年に開園したが、大阪大空襲で被災し頓挫する。 

終戦後、園内で市営競馬場や競輪場を開設し、

凡そ十年間の運営を経て閉場し、本格的な運動公園の整備を開始。

今では世界陸上が行われた陸上競技場や

サッカーのセレッソ大阪などがホームスタジアムとする長居球技場の他、

相撲場、庭球場、長距離走路などの施設が存立している。

一方、広さ24.2haの大阪市立長居植物園は1974年4月に開園、

ネモフィラやコスモスなど季節の花で一面を覆い尽くすライフガーデンや

専門園11個所ではウメ、サクラ、ボタン、シャクナゲ、

バラ、アジサイ、ジャカランダ、サルスベリなど植物が

美しく咲き誇り一年を通して楽しめる傍ら、

大木のユーカリ林の香りで癒しの時間が過ごせるとか。

 

地元自治会が主催する新緑ウォーキングについて、

ひょんなことから執行部の要請に依り企画段階から打合せに加わり、

開園から50周年を迎える長居公園内の植物園を行先とした。

爽やかな五月下旬、総勢17名で阪急梅田から大阪メトロ御堂筋線の電車に乗り換え

地下鉄長居駅で下車し、3号門出口から快晴の空の下へ。

近くの公園内敷地に入ると黄色い花のような常緑低木が迎えてくれ、

木陰で長居公園の歴史を簡単に説明した後、

植物園と自然史博物館の共通券(大人料金300円)を求め切符売場へ。

 

イリシウム フロリダサンシャイン

年間を通して黄金葉が楽しめるアメリカ産のイリシウム。

春先は萌黄色の新葉、

晩秋はゴールドリーフと赤みを帯びた茎のコントラストが見事だとか。

 

時計台と長居植物園の看板

朝早く起きて準備する弁当など何の楽しみもない、

そんなことを言い張る参加者達が梅田駅のスーパーから出て来るのを待ち、

植物園入口へ辿り着いたのが10時半過ぎ。

 

ライフガーデンの一面を覆うネモフィラ(4月19日、下見時の写真)

カナダからアメリカ西部、メキシコに分布する、ムラサキ科ネモフィラ属。

 

舞洲の丘など全国各地で見受けられるネモフィラの花畑、

ウォーキングの当日、アチラコチラで咲く残花は緑葉に埋もれていた。

 

立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花(美人を形容するフレーズ)

一カ月以上前の下見時は整然と開花する、

大きな花弁に心ときめいたものだが。

ああ~花の命は短くて……、

艶やかな花だけに散りかけは余りにも寂しげで、

栄枯盛衰の落差を感じながら横目で通り過ぎ、

我々が独自に設定した順路を経て、薔薇園の入口辺りに着く。

ふと爽やかな薫風に吹かれ、鼻を突く甘い香りが流れて来た。

 

 

「うわあ、こんなバラの匂いがする場所に来たのは初めて。凄いネ」

今を盛りと咲く薔薇園、メンバーが思わず呟いた感想に頷きながら、

赤い花は光に反射するのも覚悟でスマホのシャッターを押した。

 

 

毎年薔薇園で水彩画を描く画家と会話を交わすなど、

満ち足りた気分で園内をじっくり巡回をした後、

参加者全員に集合を告げ、白い蔓薔薇が枝垂れる光景を背景に記念撮影。

 

キンポウゲ科センニンソウ属、クレマチス

三月頃の早咲き品種、5~10月まで数回楽しめる四季咲き品種、

秋から翌春までの冬咲き品種など

一年を通し様々なクレマチスが楽しめるとか。

 

薔薇園を離れ早咲きのダリアをチラ見しながら速足で先頭を歩き、

漸く茂みの中にあるシャクナゲ園を探し当てたものの、

一般客のご夫婦から、「シャクナゲはもう終わりました」と告げられ、

低木葉に包まれ、萎んだ花を確かめ唖然とし、

シャクナゲの見頃はゴールデンウィーク前後と気付き愕然とする。

「今日は薔薇園だけで十分ですよ、シャクナゲは来年来ても見られるし……」

一行のメンバーから慰められて気を取り直し、大池の畔にある休憩所に入らず、

 

 

 

解放感のある木陰の食卓で凡そ二時間の昼食&おしゃべりタイム。

 

もうすぐ咲く紫陽花の姿や蓮池を見て大池を時計の逆周りに歩き、

餌を求めて近寄る大きな鯉や緑亀を眺めながら一文字橋を渡り、

向こう岸へにあるハート型の花輪の広場へ。

 

ナス科ツクバネアサガオ属の常緑多年草、サフィニア 

花言葉は「咲きたての笑顔」

 

サフィニアの花畑とハート型の花輪を背景に記念写真をと試みたが、

最初は長蛇の列に、今回は制服姿で戯れる男女に阻まれ、

やはり花言葉に相応しい高校生達には敵わないと看過し、

最後の訪問施設の自然史博物館に入る。

 

氷期や間氷期の時代に大阪でも生きていたナウマンゾウや

ヤベオオツノシカなど原寸大の姿を見て回り、自然の歴史を学習した。

 

 

玄関口のホールに飾られた巨象や恐竜の骨組みを見上げながら、

メンバーと他愛のない会話を交わす。

「あれは多分、プラスティックか何かの造り物でしょうネ」

「さっき係員に尋ねたけど、元々本物の骨を造作したとか」

「えっ、大阪平野にも恐竜が生きていたの?」

「何千年前の氷河期で死滅したけど、恐竜で有名な福井県だけでなく

日本列島の何処で生きていたとしても不思議ではないよね。

大阪と言えば都会のイメージが強いけど……」

 

日本原産で山岳地帯に自生するシャクナゲ(石楠花)の花、

古くから日本文化に深く関わり、歌や俳句に度々登場しているとか。

定年退職を契機に隠居生活を送る最中、

高嶺の花と呼ばれるシャクナゲの群生を見たいと切望している。

因みに良く間違えられるシャクヤクはモクレン科ボタン属、

一方、シャクナゲは湿地帯に生息するモクレン科ボタン属である。

恒例の新緑ウォーキングを無事終え、胸を撫で下ろす傍ら、

来年は見頃を電話で確かめて訪れ、シャクナゲを愛でてみたい思いつつ、

復路の地下鉄駅を目指し、歩き疲れた足を引きずりながら歩いた。

 

(写真撮影は5月22日水曜日、爽やかな五月晴れ)