1980年、国鉄再建法の制定と共に内部改革が推進される最中、

旅客収入の増加を図るため、企画切符が矢継ぎ早に打ち出された。

とりわけ大ヒットしたのが、1981年に販売開始した

夫婦で88才以上ならグリーン車乗り放題の

「フルムーン夫婦グリーンパス」。

そして乗り放題きっぷの第2弾と位置付けられたのが

若者向けアイデア商品の「青春18のびのびきっぷ」、

発表は1982年2月で全国発売されたのが3月。

当時の新聞にはフルムーンに絡めた見出しが目立ち、

その主旨として「受験戦争や管理社会を生きる青年が

窓が開き駅弁も買え地元の人と触れ合えるローカル列車に乗車し、

のんびりした時間を見つめ直すきっかけになれば」

との思いを込めたとのこと。

ところが商品の名称が長すぎるとの苦情が相次ぎ

1983年春季より「青春18きっぷ」と名称変更。

発売当初、5年間で71万枚を目標としたものの、

国鉄最後の1987年春季に全国で鉄道旅行ブームが起きて、

年間枚数で60~70万枚と驚異的に伸び、

JR移行後もブームは続き凡そ50万枚程度で推移している。

 

地元ウォーキング「青春18きっぷで行く余呉湖」の直前、

悪天候が確実視され、急遽実施日の順延を図る傍ら

青春切符の利用と販売期間の違いを思い知らされると共に、

関係のない地元自治会の人事問題も絡んでバタバタしたものの、

予定通り21名が集まりJR大阪駅で新快速に乗り込む。

通勤時間帯と重なり立席で電車に揺られていると、

「長浜駅で一旦下車して余呉湖へ行こう。その方がええやろ」

年上のメンバーWさんから上目線で提案され戸惑う。

「あのう、長浜までは比較的便数も多く便利ですが、

余呉へは一時間に一本程度しか運行していません。

今日の段取りをしているのでこのまま行きます」

企画担当者が困惑するのは思い付きで予定を変更されること。

Wさんに理由を述べ毅然とした態度で断り予定通り余呉駅で下車。

湖に向い南下しアスファルトの道路を右折し暫く歩くと

湖畔に一本の柳が見えてくる。

 

日本最古の天女伝説「衣掛柳」

 

天女伝説の羽衣の脱ぎ場所に関して、日本では松や岩が多いが

余呉では北野天満宮から移植された2代目の柳。

2017年10月の台風襲来により大木は倒壊したが、

その一部として残存したのが今の柳の木とか。

北野天満宮の御祭神、菅原道真と衣掛柳との関係は以下の通り。

 

漁師、桐畑太夫が余呉湖で水浴びをする天女の羽衣を隠し、

困り果てた天女は天に帰ることを諦め太夫の妻となり、

やがて一人の男の子を産む。

そして、羽衣を見付けた天女はそれを纏い昇天する。

残された幼子を憐れむ菅山寺の僧、尊元阿闍梨は

寺に連れ帰り養育する。

その後、幼子は成人して菅原是善卿の養子となり、

あの有名な菅原道真と名乗ったとか。

 

このエピソードを読み終え、祇園祭で退治する悪霊、

つまり道真の魂が今でも京都の空を彷徨っているのかと

妄想に耽りながら一人納得する。

 

余呉湖に天女が舞い降りる→漁師と結婚して子供を産む→

天女は羽衣を見つけ昇天する→子供は成人して菅原道真と名乗り朝廷に仕える

→天才である故右大臣などの罠に填まり太宰府に流罪され無念の死を遂げる→

道真の怨霊を取り払うため、今でも祇園祭が開催さている。

 

衣掛柳の近くにある食堂広場で一行を集め、

菊石姫と蛇の目玉石の在処や賤ケ岳の戦いなど余呉湖に纏わる歴史を

説明しようとしたが、皆の聞きたくない視線をひしひしと受け、

「……ナンチャラカンチャラありますが以上です」と速攻切り上げ、

暫く外で待機しているとメンバーが食堂から出て来て、

「向こう側に見えるイベント会場で物品販売をしているそうよ」

息を弾ませながら伝えてくれた。

此処から東側へ移動するのは事前に想定した行動なので、

一行を湖畔の狭い地道を歩き、談笑しながら引率したものの、

駅南を過ぎて会場の手前辺りで菜の花畑に紛れ込む。

道を塞がれても今更引き返す訳にもいかず、

アスファルトの道路まで無理やり雑草を踏み分け

畑の端を通り抜けようと試みた。

 

黄色い菜の花に埋もれ、写真を撮るためスマホを向ける一行

 

背丈の高い雑草をなぎ倒しながら道路に出て、

漸くイベント会場に辿り着き一息吐く。

複数のテントの下に設置された長テーブルの上には、

地元の春野菜や総菜などが所狭しと並べてある。

「きっとトレトレで新鮮な野菜よ」、「いやあ、めちゃくちゃ安いやん」

皆が楽しそうに商品を物色する声を聞きながら一通り見終え、

少し離れたベンチでイベント会場の様子を窺っていた、

メンバーの一人が苦笑しながら近付いて来る。

「ベンチでのんびり待機するなんて、まるで校長先生みたい」

「校長先生? そんな偉そうにしていないけど。

ただ誰かが次の指示を出さないと此処を離れられから」

「それもそうね、一行がバラバラになると大変だから……」

会話を交わしている内に皆は買い物を済ませたのか

三々五々でベンチの周りに集まってきた。

「次は12時11分発の電車で長浜へ逆戻りします。

此処から余呉駅までは僅か5分ですが、

余裕をみて11時半にこの場所に集合して下さい。

それでは今から各自の自由時間とします」

 

 

自由時間を利用して七分咲きの桜並木を南下する後ろ姿、

臨場感が伝わる構図と感じ思わずシャッターを押す。

 

山口誓子の石碑まで速足でウォーキングしようと試みたが、

メンバーに呼び止められ、仕方なく集合場所へ逆戻り。

 

 

近くの湖畔で土筆(つくし)や蕗(ふき)、蕨(わらび)を採取するグループ、

珍しい花を見つけ愛でるグループなどに別れ

長閑な早春の余呉湖を満喫した。

 

余呉湖の北側にある駅付近から見渡した光景

因みに余呉湖一周を2時間で周遊できるのはサイクリング、

やはりウォーキングでは無理やね。

 

長浜駅へ移動し近くの黒壁スクエアに入り、

メニューに長浜名物の焼鯖ソーメンのある老舗店舗を、

見付けたが顧客の長い待ち行列を見てやむなく通り過ぎ、

近江牛グループと鯖寿司&うどん定食グループに別れ、

ようやく昼食タイムにありつけた。

 

 

長浜城天守閣を模した歴史博物館と

もうすぐ満開になる豊(ほう)公園の桜。

さすが「日本さくら名所100選」の一つだけある、

素晴らしい光景に見惚れながら長浜市を後にした。

やれやれ💦

 

(写真撮影日は4月5日金曜日、快晴)