兵庫県南西部に広がる播磨平野の中央に位置する加西市、

市域内は山林や田畑が目立ち、南東端部に乳牛育成牧場があるなど

基幹産業として「農業」が挙げられる傍ら、

市のチャッチコピー「花、ゆめ、根日姫(ねひめ)」を掲げ、

大型植物園「フラワーセンター」やゴルフ場などでも知られている。

また隣接する姫路市との繋がりが強く、

路線バスが加西市の中心地である北条町まで運行している。

 

【美しい娘の悲恋物語、根日女伝説】

「朝夕に日の隠れぬ地に墓を造りて、その骨を臓め玉をもちて墓を飾れ」

【2人の皇子が愛する根日女の死を悼み、陽の陰らない場所を選んで建造した古墳】

二人の兄弟皇子(後の23代顕宗天皇と仁賢天皇)は

皇位継承争いで父を殺害されて都から逃れ、

名前を変え身分を隠し密やかに播磨国で移住していた時、

播磨国賀毛の里を治める国造許麻(くにのみやつここや)の娘で、

神秘的な美と不思議な力のある根日女と出会う。

忽ち兄弟皇子共々彼女への恋が芽生え、愛を育んでいくものの、

仲の良い二人はお互いに譲り合い結婚しないまま推移し、

やがて皇子二人は都へ帰り大和を平定し帝に就く。

一方、根日女は二人の安否を気遣う心労から病床に伏し、

此処播磨の地で儚く息を引き取る。訃報を受けた二人は悲嘆に暮れ、、

賀毛の里に根日女の墓を築き手厚く葬ったとか。

 

当時、表面を玉石で散りばめて建立した墓は今も、

整備された史跡公園内に玉丘古墳として現存している。

 

六月下旬、雨模様を心配しつつ地元ハイキングへ参加し、

総勢21名で加西市北条町を目指した。

阪急電車で新開地駅まで西進し、神戸電鉄に乗り換えるため

一旦改札を出て料金を精算するのか思いきや、

駅員から同じ構内なのでそのまま乗車するよう指示され困惑したものの、

阪急の子会社なので「さもありなん」と頷きつつ、対面シートの電車に乗り込む。

神戸電鉄を利用するのは初めてだ。

鈴蘭台など名前だけ馴染みの駅を通り過ぎる中、

源平合戦で有名な「鵯越(ひよどりごえ)」を見付け感激した後、

粟生(あお)駅で下車し北条鉄道に乗り換える。

 

「鵯越の逆落とし」は須磨浦海岸沿いも有名で2説あるものの、

平家物語の流れや傾斜の角度などから神鉄沿線が有力らしいとのこと。

 

北条駅に着いた2両連結のキハ40形

2022年3月、北条線(粟生~北条町13.6㎞)の運行開始。

 

目的地北条駅に着いて一行は車内で両替方式を利用し、

釣り銭なしで運賃(大人420円)精算して無事下車。

町内を練り歩いていると、帰宅途中の自転車に乗った中学生たちとすれ違い、

全員から「こんにちは」と挨拶され驚きながら、

それでも何か会話を交したくなり、女学生に問いかけてみた。

「今日は午前中で学校は終わりかい?」

「そうです、試験が終わりましたので帰る途中です」

気後れすることなく元気な声が返ってきた、

挨拶は勿論、ハキハキした返事が清々しい。

都会では見掛けられない光景だと感じつつ、気持ち良く通り過ぎる。

 

 

羅漢寺にある五百羅漢。天台宗で山号は北栄山、本尊は薬師如来。

拝観料200円で平成30年に県文化財に指定されている。

仏教用語「阿羅漢(あらかん)」とは最高の悟りを得て、

尊敬や施しを受けるに相応しい聖者を指し、迷いの輪廻から脱し

涅槃(ねはん)に至ることが出来るとか。

具体的には釈迦の高弟や最高位の修行僧を指し、

如来や菩薩のように単独で信仰されることはなく、

十代弟子、十六羅漢、五百羅漢のように複数の群像である。

 

境内の一角の露天の棚に並べられている小さな鉢植えの花、

とりわけ可愛らしい花は女性に人気があり、

一行の中の4人が買い求めて一つのショピング袋に入れ、

順番に持ち回り歩く姿は、まるで少女に戻ったようで微笑ましい。

 

ウチョウラン、地生ランの一種で小柄な多年草。

野生の山野草のため非常に希少となっているとか。

 

アワチドリ、ウチョウランよりも多めの水分が必要な種類だとか。

 

播磨国三宮住吉神社。住吉大神の宮、九箇所の内の一社。

真夏のようにジリジリ照り付ける日射し、

日除け傘や帽子は必携品だ。

 

酒見寺(さがみじ)、高野山真言宗の寺院で創建は745年。

 

本尊は十一面観世音菩薩像

 

行基がこの地を訪れ、酒見明神(住吉神社)のご神託により

伽藍を建立したのが始まりとか。

廃仏毀釈令で神社から寺院へ名称変えさせられたとか。

 

幹事が予約してくれた割烹料亭で昼食を済ませた後、

古民家カフェに向かう途中、自転車で迎えに来てくれたマスターに

案内されて無事到着する。

 

 

明治時代を彷彿させるような室内を眺めながら談笑し、

運ばれてきた菓子を食べつつコーヒーを飲んでいると、

雨雲が接近しているのか急に辺りが薄暗くなる。

急いでスマホのアプリで雨雲レーダーを確かめてみると、

「アッ、えらいこっちゃ、もうすぐ雨が降り出すわ」。

「そんなことないでしょう、こんなに良く晴れているのに――」

レーダー情報を信じられない人達に仕組みを説明している内、

屋外でパラパラと雨の降る音が聞えてきた。

「凄いね、本当に雨が降り出したやん。

カフェに来ないで北条駅に向かえば、雨に濡れなくて済んだのにネ」

天気予報で一時雨と告知していたが今更引き返せない。

「そんなことゆうたら、案内してくれた幹事さんに悪いですよ」

とかく企画担当の幹事は趣味を兼ねたボランティアでも、

何処かで苦情の一つを聞く羽目になると思いつつ

そぼ降る雨の中、幹事の傘の下に潜り込み北条駅へ急いだ。

 

今月の定例会は8時半に集合した後、17時半に解散。

凡そ拘束9時間拘束の内、鉄道の乗車時間は往復で6時間。

ウォーキングと言うより近場の同県内で知識を蓄えた、

初めて体験した、楽しい「鉄道の旅」でした。

 

(写真撮影は6月23日水曜日、晴れ一時雨)