京都市北区紫野にある禅宗臨済宗の龍寳山大徳寺、

鎌倉時代末期に大澄国師が開創している。

後醍醐天皇は当寺院を保護し京都五山に格付けしたものの、

自ら制定した建武の新政が瓦解し室町幕府が開設される。

大徳寺は足利将軍家から軽んじられた結果、

京都五山十刹から離脱し独自の道を選択し

禅修行の専念を余儀なくさせられる。

応仁の乱で消失した伽藍を堺の豪商などの協力を得て復興させた

一休宗純を初め名僧を輩出する傍ら茶の湯世界とも縁が深く

千利休など多くの茶人も関与し、

また羽柴秀吉は本能寺の変で織田信長が自害し果てた後、

信長の菩提寺として塔頭「総見院」を建立している。

江戸時代から明治時代にかけて紆余曲折がありながら、

現在の境内には勅使門、山門、仏殿、法堂が一直線に並び

これら伽藍を中心に二十カ所以上の塔頭寺院が建てられ、

大徳寺も比叡山延暦寺と同じく集合体の名称で、

特定の寺院ではない。

 

二月下旬寒風をついて地元ウォーキングに参加し

総勢21名で大徳寺「聚光(じゅこう)院」障壁画の拝観に出掛けた。

阪急烏丸駅で地下鉄に乗り換え四条→丸太町→鞍馬口と北上し

北大路で下車。暫く歩いていくと北大路通と烏丸通と交差点に差し掛かる。

凡そ半世紀以前、鞍馬口にある予備校へ通うため

鞄をぶら下げ毎日のように烏丸通を往来していたが、

大徳寺がある西方面へは殆ど踏み入れたことがない。

大谷大学の関連施設を横目に西進すると大徳寺の境内へ。

 

禅寺で東福寺に次いで古い大徳寺の三門。

一休宗純が堺の豪商の協力で復興、連歌師の宗長が一階の初層を寄進し、

千利休に依り上層が増築された「金毛閣」。

寺院側が利休のため上層に雪駄を履いた木造を設置したが、

天下人豊臣秀吉の足下を潜らせたことで逆鱗を買い、

彼は切腹を命じられ70歳の生涯を閉じている。

聚光院内に入る指定された時刻まで余裕があるので

近くにある紫野今宮神社へ立ち寄ることに。

 

主祭神は大己貴命(オオナムチノミコト)、事代主命、奇稻田姫命。

創建は1001年で別名「玉の輿神社」と呼ばれている。

八百屋お玉は西陣で生まれ美貌故に三大将軍家光の側室となり、

五大将軍綱吉の生母「桂昌院」として従一位を与えられ、

こうした経緯が「玉の輿神社」と呼ばれる由来とか。

 

明治二年に再建された本殿(国登録有形文化財)。

寒さで彩りが少ないなか、凜とさく白梅を見付け接写。

順番が逆になったが立派な手水所。

 

偶々売店が休みなので名物「あぶり餅」を買えず

仕方なく境内をぶらついた後、

副幹事が全員の拝観料2000円を徴収し聚光院へ向かう。

戦国武将三好義継の養父長慶の菩提を弔うため創建。

女性ガイドの案内で11時20分に入場。

室内は撮影禁止に付きパンフレットの写真を借用。

本堂障壁画(国宝)、永徳が描いたとされる襖絵、

筆使いにメリハリがあって今でも新鮮で躍動感がある。

千利休が作庭とされる方丈「百積の庭」や

150回忌に寄進されたと云われる茶室を巡り最後に

千住博画伯の「時の流れを象徴するモチーフ」とする

白い滝が流れる青い襖絵のある部屋を巡回し

12時過ぎに大徳寺を離れる。

昼食を摂るため幹事が推奨する中華料理店へ赴いたものの、

21名全員が詰めかけ入店まで30分も掛かると聞き、

最後方の男四人は近くにあるドイツ名のカフェを見付け、

談笑しながら軽食を済ませて約束した集合場所へ。

一行の女性から「ランチは何を食べたの?」と訊かれ

大袈裟に「ドイツのサンドウィッチ」と答えると「ワオー」と反応。

賑やかに会話を楽しんでいると男性が割り込んでくる。

「そんなことないですよ、あれは普通の食パンです」

「乗りでジョークを楽しんでいるんやから。大体分かるでしょう?」

「私は根が真面目で正直者ですからww」。

いやいやTPOができてないなあと不服に思いつつ、

皆と一緒に元来た道を戻り地下鉄「北大路」駅を目指したものの、

歩き疲れて烏丸交差点に差し掛かる前で休憩タイム。

「私はこのまま烏丸通りを南下して河原町まで歩きますので。

今日は色々ありがとうございました、それじゃあ」

一行と外れるのは事前に知らせている。

幹事を初め皆も気持ち良く手を振り返しながら

見送ってくれた。

 

 烏丸通りを南下するに付け私小説『青春の光芒』の一節を抜粋。

 秋の日差しが降り注ぐ長閑な土曜日午後、予備校の授業を終え校門の近くで待機していた。

 帰宅を急ぐ大勢の学生達に混じりカオリが女友達二人と現れ目の前を通り過ぎている。徐に歩き出し彼女を見失わないよう校外に出て告白するタイミングを図りながら北上。彼女が一人になるのがベストだが前回のように深追いすれば警戒される、そうかといって友達の前で告白するのも恥ずかしい。気付かれないよう後ろから様子を窺うと、三人の会話が弾んでいるのか一人になる気配は全くない。今日は無理だ、告白するのを止めようと一旦諦めかけたものの、このまま引き下がれば何の解決にもならない。カオリが予備校では何時も友達連れで一人でいるところを見たことがない。それに、このチャンスを逃せば悶々と苦しむ日々が続くだけ。今日で何とか決着を付けたい、周りに友達がいても申し込んでみようと腹を括るしかない。

 黄色に色付き始めた銀杏並木が続き、右前方に大学のグランドが見えてくる。前方には彼女逹がいるだけで誰もいない。告白するのは今しかない、急ぎ足でツカツカと三人を追い越し行先を遮り、そして息を弾ませながら清水の舞台から飛び降りる覚悟でカオリの目を見詰めた。緊張感がピークに達して口籠もり、思うように言葉が出て来ない。やっとの思いで落ち着きを取り戻し交際を申し込む。「ワ、ワタシ北尾といいます。ト、トツゼンで不躾ですがス、好きです。ツ、付き合って貰えないでしょうか?」 途切れ途切れだが何とか言い終えて一息吐く。

 あ、この人……、カオリは思わず手で口を塞ぎ返事に窮し傍で友達二人が俯きながら吹き出したいのを押し殺している。(文字数の関係で以下省略)

 

懐かしいあのグランドも今はテニスコートに改造され、

周りも学生寮と思われる建物が立っている。

否応なしに時の流れを感じざるを得ないと思いながら、

河原町へ向かう道すがら京都御苑の梅林エリアに立寄る。

冬の裸木ばかり目立つ梅林で黄色い蝋梅が咲いている、

寒波襲来のため梅の花は遅咲きで見頃は未だ未だ先のようだ。

電車の中で歩数を確かめると良く歩いたもので凡そ二万歩、

まだウォーキングをする体力は残されているネ。

春の

(写真撮影は2月22日水曜日)