日本を代表する芸術家 岡本太郎 (1911~1996年)、

神奈川県川崎市にて

漫画家岡本一平と小説家岡本かの子の長男として生まれる。

かの子は、酒と女性に現を抜かし散在する一平に失望して

自殺未遂を図るなど家庭は崩壊状態へ。

これを契機に一平は反省し自粛するものの、

今度はかの子が次々と浮気を重ねる。

太郎はこうした幼少期の家庭環境から独身主義を誓う傍ら、

生来自我が強く妥協を許さない性格を持ち合わせ

小学校を一度退学するなど型破りな芸術家的体質を備えていた。

 

 

画才を豊かな太郎は東京美術学校(現芸術大学)に進学するものの、

「芸術は教えるものではない」と考えて中退して渡仏する。

パリのルーブル美術館などを巡り多くの芸術作品に触れ、

とりわけ衝撃的なピカソの作品を鑑賞して大きく心揺さぶられ、

やがて「ピカソを超える」闘争心へ変わる。

その背景として抽象美術運動やシュルレアリスム運動に接し影響されたとか。

 

*抽象美術とは視界に入る現実世界の再現や具象的イメージの保持ではなく、

色や形自体の表現力で造形世界を形成し美術情感を喚起する美術。

*シュルレアリスムとは作家アンドレブルトンを中心とした文学芸術運動。

フロイトの精神分析とマルクスの革命的思想を基盤とし、

理性や美的道徳的な先入観から解放され、思考の真の動きを表現する

純粋な心的オートマティスム(自動記述法)。

 

岡本太郎は10年間パリで過ごし帰国後、徴兵され中国へ出兵。

彼は自著で「天国から地獄を味わった」と記し、また出兵した5年間を

「あれほどむなしかったことはない」と振り返っている。

戦後、世田谷区にアトリエを構え制作活動に取り組み、

「絵画の石器時代は終焉を迎え、新しい芸術は岡本太郎から始まる」と

新聞にて宣言し日本美術界を否定し前衛的な作品を数々と発表する傍ら

テレビのバラエティ番組への出演も増え「芸術は爆発だ!」など

インパクトのある名言を発しお茶の間の人気者になる。

 

1970年に大阪府茨木市で開催された日本万国博覧会、

岡本太郎の作品「太陽の塔」が今もなおシンボルとして

万博記念公園に天高く聳えている。

彼は年齢を重ねても意欲的に創作活動を続け、

80歳の時、自身の所蔵する多くの作品を川崎市に寄贈した後、

病床に伏した岡本太郎は満84歳で人生の幕を閉じている。

*川崎市岡本太郎美術館は1999年開館している。

 

未だ残暑厳しい9月下旬、地元ハイキングに参加し、

大阪中之島美術館(2022年2月2日開館)岡本太郎展の鑑賞に向かう。

*5月下旬に開催した「モディリアーニ展」に引き続き2回目の訪問。

5月のハイキングの時と同様、巨大猫の円形ベンチの辺りで待機し、

幹事が代行して購入してくれたチケット(1800円)を受け取り入館。

 

 

天井から吊り下げられている迫力ある告知パネル、

「本職?人間だ。史上最大のTARO展がやってくる!」

美術館展示会場には珍しく作品の写真撮影が許可されているのに気付き、

リュックサックからスマホを取り出し準備する。

 

 

色の背景に黒い太陽の光、赤目が不気味だ。

 

 

リボンを付けた女子がサメザメと泣いている抽象画

顔まで覆い隠した大きな赤いリボンが印象的。

 

 

これは何だろう? 左が男性、右が女性の下半身なのか。

 

 

赤や黄色など鮮やかな彩りでピカソの絵のようだ。

こうした絵画が展示場の壁面に多数飾られている。

最初は興味深く鑑賞していたものの、見ている内に目眩でクラクラしてきて

最後は絵画を横目に素通りした。

(やはり素人は抽象画を解説するだけの感性が欠けている。当然ながら、

漠然とした感想は思い付いても作者の深層心理まで推察できないネ)

 

 

青や赤、そして奥にある黒も何かを連想させてくれて面白い。

 

 

 

人間と思われる顔を模した造作物。

下の仮面は「太陽の塔」の頂にあるのと似ているような気がする。

岡本太郎の 芸術活動 を纏めたビデオを視聴して、

数人でベンチに座り感想を述べながら気楽な井戸端会議へ。

Yさんから「自治会の役員を辞めて暇でしょ?」と問われ、

「週2回の バレーボール や毎朝ラジオ体操もしてるから暇ではないね。

そう言えば先日のテレビ番組に向日葵オジサンが出てたでしょう。

長年毎朝駅前広場でゴミ拾いや向日葵の世話をしているらしいね。

奥さんも朝早く起きて水の準備やゴミの分別もして、ホンマ凄いわ」

二人の会話を聞き付けたTさんが会話に割り込む。

「先日そのオジサンから手伝えと言われて。忙しいのでお断りしたけど」

当方も河川敷や公園でゴミ拾いの真似事をしている。

「向日葵オジサンも一人で心細いのよ。手助けをしてあげたら?」

相手の気持ちに配慮するよう促すとYさんは眉間に皺を寄せ言い放つ。

「あのね、他人から強制されたくないの、絶対嫌よ。

そもそもボランティアなんて自発的にするもんでしょ……」

尤もだ頷きながら「他人からの強制は×やろな」と呟くと

「そうそう、ボランティアなんて嫌なら止めれば良いのよ」

「相手の気持ちも汲んでと言ってたじゃあない。それも大事――」

皆で喧々諤々の意見を交わしているとスマホのベルが鳴る。

画面を見ると副幹事からの電話だ。

「そろそろ美術館を出る時刻なので階下へ降りて下さい」

ヒートアップしてきた談義を即行取り止め、

ボランティア活動の是非を含め各々の立場で判断すれば良いやん

と思いつつエレベーターで降りる。

 

 

「岡本太郎」人形に見送られながら館外へ出て

皆で川風に吹かれながら近くのランチ会場を目指した。

 

(写真撮影日は9月28日)