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乙松の自由過ぎるblog

とにかく気まぐれ。行き当たりぼったくりの、思い立ったてきとーな事を、思い立った時に、思い立つまま書いてます。

(前話から)


エリア養老の潜入に成功した

取材班(板長&あんこう)は

さっそく滞在の為にまな板…

滞在用具一式の搬入を開始する

その時はまだ全てが穏やかで

作業は順調に進む


取材班が拠点とする建物は外見から想像を

裏切るような程よい広さを持ち

しっかりした冷暖房設備があるので

短期間なら充分なバンガローである

となりに設置された作業場には

このようなタープが張られ

何を目的にか?

奇妙な道具が置いてある

しかし取材班は大量の滞在用具搬入に

専念していたので

この時我々はある現象に気づいておらず

それは

後の出来事を予言していたのかもしれない


これは搬入準備を始める板長を

たまたま撮影した画像であるが

おわかりだろうか?

このようにすると更にわかると思うが

撮影時には気づかなかったある者が

偶然撮影されていたのである

これはいったいなんだろう?

まるでこれからの出来事を

知っているようなそぶりで

取材班を見て嘲笑うようにも見える


エリア養老を包むのは新緑と野鳥のさえずり

それは

現実を忘れるには充分である

これからを楽しみにしながら

はしゃぐように準備する二人

だが

それをある隅で見つめている者が居た
細める目には何が見えているのだろう

「ねえあんこう、これで全部搬入揃ったかしら?。」

「このクーラーボックスで全てだよ板長。」

「それにしても、素晴らしいキャンプ場ね。」

「ああ、すぐ下は現実世界だけど、ここはそれを一切感じないな。」

「運転で疲れたでしょう?散歩前にちょっとひと休みでもしない?」

「さっきから板長の瞼は半分閉じていたよ。」

「ちゃんと起きてました。」

二人はバンガローへ入り軽く睡眠に入った

時はそんなに進んでいないはずだが

深い眠りから覚めて

バンガローの中に居る理由を理解する時間は

少し必要だった

気だるい体の一部を動かし

隣の板長の存在が確認出来ない時点で

眠気は一気に覚めた

靴が無い

「板長!…」

靴を蹴飛ばし勢いで開けた扉は

激しく音を立てた

「板長!」

「なあに?私はまだ耳しっかりしてるわよ。あなたのいびきが大きいから、鳥が逃げちゃうかと思ったわよ。」

バンガローのすぐ下にある木の下で

椅子に座り木を見上げていた板長は

あんこうを見て笑う

「ねえ見て。鳥があんな近くに」







板長が指差しする先に一羽の鳥が

ちょっとジャンプすれば捕まりそうな位置に

かなり人に慣れた様子だ

確かにこれだけ近づいた鳥は外で初めてだ

あえて言えば

昔飼っていたオカメインコ以来だろう

「可愛い❤️私達が居ても平気なのね。」

板長は再び静かに鳥の動きを見つめる

「おや、あちこちからいろいろな声が聞こえてきたぞ。」

「鳥や蟬、そして緑の中を走り抜ける風。これが私の求めていた風景よ。」

「走り抜けるのは真っ赤なポルシェじゃなかったか。」

「はいはい。あなたはいつもそうやって何か言わないと気が済まないのよね。」

ため息まじりと合わせない視線

板長得意の受け流し

それでもあんこうは個人的に満足であった

「ねえあんこう。場所を移動してみない?さっき広々した場所があったでしょ。そこで森林浴を満喫しましょ。」

「それよりタープの下でゆっくりコーヒーでもどうかな?」

「せっかくここまで来たのよ。ここがどのような場所か?明るいうちに楽しみたいのよ。コーヒーは、夜になっても飲めるでしょ。」

「はいはい、わかりましたよ。探検隊結成しましょう。」

あんこうはバンガローから

自分用の椅子を持ち出し

二人下にある広場へと向かった



少し下った所に

板長が言っていた広場があった

これだけ木々に覆われた場所で

ここだけぽっかりと開けている

前方の視界は木々に阻まれ

濃尾平野はわずかにしか見えないが

空は広々と気持ち良く開けて見え

先ほどより確かに心地よい風を感じる

二人は広場の真ん中を陣取り

しばし語らぬまま

あらゆる自然のエネルギーを体感する

板長はあらゆる音を感じるよう

目を閉じて神経を集中する

あんこうは全身に風を受けて

熱くなって汗まみれの体を冷やし乾かす

わずかに見える濃尾平野を見つめ

何かを探してした


「板長!」

「なあに?何か楽しい事でも見つけたのかしら?」

あんこうの呼び掛けに振り向く板長

「あの遥か彼方に小さく見える塔のようなものはもしかして?」

「え?あれは我が街のシンボル?こんな遠くでも見えるの?」

「だから前に言っただろ?これで信じてくれたかな?」

「びっくりだわ。それだけあの塔が大きい。」

「あれを目標にすれば、ナビが無くても帰れるよ。」

「それは確かかも🎵」

板長にはおおきな発見だったようだ。

(その時二人で撮影した写真)



その時だった

先ほどまで穏やかな陽気が突然変化を始め

なんとなく鳥の声が賑やかに

風も強くなり

鼻を刺激する何かの匂いを

運んできたように感じた




この場所へ到着した時の空模様は

いつの間にか変わっていた

しかし

その時はまだ二人ともさほど

気にはしていなかった

ただ風が強くなり

あんこうが雲に不安を感じ始めた

「板長、そろそろ戻らないか?」

「そうね。戻って夕食の準備でも。」

「期待しても良いのかな?」

「そうねぇ。新鮮な海鮮鍋にでも。」

「なんだって?」

「なんでもないわよ🎵」

一瞬不敵な笑みであんこうを見る板長

あんこうはそれを逃すはずはなく

「板長、それはどーゆー事なんだ?」

「私、何か言ったかしら?」

「はあ?」

そんな意味不明な会話をしながら

二人はバンガローへ戻る

途中先ほどの管理棟にあるトイレに寄る


綺麗な管理棟の中ではラジオが流れ

薪の無人販売

休憩室とそこに漫画が置いてある

ここでまたゆっくりするのも良いが

とりあえずトイレだけ済ませて

バンガローで食事の準備をしようと

二人は急いだが

「えっ?うそ…」

板長は外を見て絶句した

わずか五分くらいの間に

外は猛烈な雨になっていた

ちょっとでも外にいたらかなり濡れる強さ

雨音もかなり凄い

「あんこう、こんな雨になると予報あったかしら?」

「いや聞いてないし、ヤフー様の予報でも記載は無い。」

「ウェザーニュースでも予報されてないわ。」

「ここはエリア養老だよ。目の前に山脈が並べば、このくらいの通り雨はあっても不思議じゃない。」

管理棟の中から外を見つめる二人

雨は強まるばかりだ

「ねえ、傘も無いしどうするの?」

「走ってバンガローまで行くしかないだろ」
 
とあんこうは言うと

管理棟を飛び出して雨の中を走っていく

「ちょっとあんこう!待ちなさいよ!💦」

一瞬雨に怯んだ板長だが

遠ざかるあんこうに続いて

雨の中を走って行った


バンガローまで来た二人

とりあえずタープの下に避難して

雨の様子を見ていたが

弱まる要素は感じない

それどころか雨は風に煽られて

タープの中まで吹き込んでくる

中にあるあらゆる道具

それは正体不明のものまで

つまりタープの中心まで雨は入ってきた

板長は濡れないようにと

道具たちをタープの中心へ寄せていくが

その努力も虚しく

段々と雨ざらしになっていく


「板長、とりあえず椅子は濡れるとまずいから、それだけ持ってバンガローへ。」

「わかったわ。」

二人は再び大雨の中へ飛び出し

隣のバンガローの中へ避難した

すっかり全身濡れてしまった二人

着替えて濡れた服をバンガロー内で干した

二人雨の様子をみていたが

願い通じたのか?

雨が止んできたのだ

「今のうちにタープへ搬入して、夕食の支度を始めましょう。」

「多少濡れたのは仕方ない。なんとかなるだろう。」

二人は夕食の準備に入る

板長が料理担当に

食材を大方用意してあった

あんこうはタープ内にあった正体不明のもの

それは焚き火台と

焚き火を囲んで使うテーブルであり

(実は知っていたが)

レイアウトをできるだけ中央に寄せて

また降ってくるかもしれない雨に備えた

あんこうは焚き火台で火をおこす

板長はまな板を出して

「あんこう、ちょっと乗ってくれる?」

「あー!?」(ちょっとキレ気味(笑))

「なんでも無い(笑)」

なんやかんやで楽しく準備していた二人に

突然思いがけない事件が発生した!

「ちょっとあんこう!大変!」

「どうしたんだ板長!?💦」

かなりうろたえて叫ぶ板長の声にびっくりして

あんこうは慌てて板長に寄り添う

深刻な面持ちの板長に

ただならね何かを感じたあんこう

「板長、いったい何があったんだ?」

「それは…」

沈痛な表情のまま、

板長はしばらく声が出なかった。

思い詰めているような板長に

声をかける勇気はかなり必要だった

相当な理由があるのだろう

しかし

このままでは問題が解決しない

あんこうは板長の肩に触れて

「板長…」

あんこうはいつにも増して慎重に

かつゆっくり話かけた

「正直、板長らしくない声色に僕も少々驚いている。しかし、このままでは先に進まないし、夜は深まり、ここでのディナーも危なくなってくるだろう。何が問題なのか?僕にはまだわからないが、今までも二人で解決してきただろう。さあ、今回も恐れず困難に向かって行こう。」

あんこうはここで板長を抱きしめた

「あんこう…」

板長はらしくなくあんこうに抱きつき

胸元に顔を埋めて震えていた

いつもらしくない弱い板長の全身を包むように

あんこうは普段とは立場を逆転して

ただ黙って板長が落ち着くのを待っていた

その時突然我に返る板長

あんこうの胸元から離れて

少し赤らめた顔を見せて

「ごめんなさいあんこう…」

取り乱した自分を必死につくろう板長

「私、その、つまりこれは誤解しないで欲しいのだけど…」

必死に落ち着こうと言葉一つ一つを

ゆっくり丁寧に

あんこうはそんな板長が可愛くなって

優しく笑みを浮かべ

「僕は大丈夫。板長は落ち着いたかい?」

「ええ、もう大丈夫。」

一度下へ視線を逸らし

再びあんこうを見つめる板長

「あの、実は私、その、あなたに言わなきゃいけない事が。」

「なんだい?いつもみたいに『捌くわよ』かな?」

「ふざけないであんこう。今回は重要で真剣なのよ。」

「ごめん、ごめん。それで、その真剣な話とは?」

「それは…」

再び視線を逸らす板長

「そろそろ本当の事を話してくれ。夜が迫っている。」

「わかったわあんこう。実は…」

板長はあんこうに向かいながら両手で(待て)

のような仕草をしながら閉じていた目を開き

じっとあんこうをみつめて語り始めた

「あんこう、実は私、夕食に使うカレー粉を忘れてきたの💦」




あれから一時間くらいだろうか?

エリア養老から離れた養老タウンまで

カレー粉を買いに行ったあんこうが戻ってきて

下準備をおえていた板長に渡すと

焚き火の上で湯気を上げる鍋の蓋を取り

沸き立つ鍋の中へカレー粉を入れると

再び蓋を閉めてしばらく煮込む
「ごめんね」

「気にするなよ。それより、あれだけ降った雨だけど、街はまったく降ってなかったようだよ。」

「え?そうなの?じゃあこの辺りだけ?」

「そうみたいだ。正確には、街へ下りて行く途中どころか、キャンプ場内道路途中から完全に乾いていたよ。」

「ねえあんこう、どーゆー事なの?タウンまでそんなに距離無いじゃない。それにキャンプ場内でもここだけなんて。私には理解出来ないわ。」

「それがこのような現象は過去にもあるんだ。2001年8月、日本の北海道美瑛町にて、わずか1m先で雨が降り、しかもその範囲はわずかだった事例があるんだ。」

「そんなの信じられない。雨と言えば空を覆いつくした雲が降らせるのが普通じゃない。」

「板長、空が晴れていても雨が降る事があるだろ。日本では『狐の嫁入り』と昔から言われているらしい。」

「それは科学的に証明されている。晴れた空からの雨は、目に見えないほどの速さで雨雲が通過しているからでしょ?でも、今回の雨はあまりにも理解不能だし、だいたい美瑛町の雨にしても誰が証明したのよ?」

鋭く問い詰める板長

その板長を暫く黙っで見つめていたあんこうは

「それは僕だよ。旅行中偶然見たのさ。」

板長は目を更に見開き

ただただあんこうに次の言葉を探していた

そんな板長にあんこうは

「さあ、カレーも出来たみたいだし、僕もはらぺこはだよ。食べさせて貰えるかな?」

皿を差し出すあんこうの姿に

板長は思わず吹き出してしまう


「そうね。食べましょうか。」

板長は鍋蓋を取りカレーを掻き回す




「いただきま~す🎵✕2」


板長特製のシーフードカレー

その味は格別に美味しく

また懐かしい味でもあった

カレーを堪能しながら

キャンプの夜を楽しむ二人

雨は再び強く降り始めたが

それも気にならないほど

二人の時間は楽しく早く過ぎていく


食事終えた後も焚き火を囲みながら

コーヒーと共に静かな時が過ぎていく

実生活を忘れ

夢や希望を語り合い

疲れや嫌な事を全て脱ぎ去るように

焚き火と雨の音が響くこの空間を

大切にしながら楽しんでいた


長い間二人は時間を忘れて話をしていた

時はもう少しで翌日を迎える

気づいた二人は慌てて片付けをする

雨はまだ激しく降っていた

とりあえず片付けを終えた二人

バンガローへ入っていく

中は薄暗い灯りが一つ

雨とエアコンの音が響いている

「さあ、そろそろ休みましょう。」

「おやすみなさい板長。」

「おやすみあんこう。」

エリア養老の夜は静かに

何事も無くふけていくのであった

(つづくよー。たぶん。)