過去数年、利益が増加傾向の会社オーナー(要するに、まあ儲かっている)は、

ご自身の会社の貸借対照表(BS)を見てみると、繰越利益剰余金という項目が

貸借対照表のうちの、純資産の部の中の「株主資本」にあるのがわかります。

株主資本の中には「資本金」「資本剰余金」「利益剰余金」「自己株式」という

区分があり、このうち繰越利益剰余金が含まれるのは「利益剰余金」です。

 

さて、以前勤務していた会社の役員でも「繰越利益剰余金」について全く理解が

できていなくて、呆れた「事件」がありましたので、お知らせしておきます。

儲かっている会社オーナーの中には、必死に節税、節税と走り回る方も多く

我々、税理士もその企業の個別の状況に応じた節税に関する知恵を絞り、

税負担の軽減のための最適な提案を行うことが要求されています。

 

ですが、役員報酬を増加させたり、資産を購入したり、やたら生命保険に加入

したりすることは、個人的にはお勧めしないというのが私の持論です。

役員報酬で受け取れば、結局、累進課税の所得税の税率が高くなり、さらには

社会保険料の負担もかなりのものになってしまいます。これはとても怖い。

 

資産の購入も減価償却できるから(経費かできて資産に残るから)積極的に行う?

私はそうは思いません。最低限必要なもの以外、資産を購入すればキャッシュが

少なくなります。最も重要なのは手元のキャッシュであるというのが私の考え。

 

生命保険で損金にして保険料を支払う?

いやいや、私は長く保険会社に勤務しており生命保険の商品構造を嫌というほど

理解しています。生命保険の手数料率の高さは、驚くべきほど高いものです。

そして保険業界の利益構造、儲かり方は半端ない、社員の給与水準バカ高い。

 

法人で儲けた利益は法人で課税を受け、一定程度は内部留保という形で会社に残す。

ある程度は繰越利益剰余金として蓄積することを検討することが必要と考えています。

 

そこで、この繰越利益剰余金ですが、これは内部留保といっても預金であったり、

固定資産であったり、留保される資産の種類はいろいろです。

そして、これは自由に使うことはできず、個人へ資産移転する場合には配当として

課税されることになります。ですから、BSに繰越利益剰余金があるからといって、

その金額を預金から直接引き出して使うことなんてできないのです。

 

ここで過去の呆れた事件についてですが、その子会社のBSには親会社からの仕事で

長年、蓄積した利益を繰越利益剰余金として多額にかかえていたのですが、それを

見たある役員が「こんなに金があるのだから従業員にボーナスで支払おう」と言い

出しました。

 

この発言はまったく訳わからない話で会社役員の知性として恥ずかしい話なので、

経理部長として説明をしたのですが、逆ギレされ迷惑を被った次第です。

(利益剰余金を減少させるためPLで赤字にすることも子会社では実態として困難)

 

さて、オーナー企業の社長の方々、法人税、所得税、相続税、そして役員報酬や

事前確定届け出給与(役員賞与)、退職金、各種の節税策、これからを総合的に

勘案して、企業の決算対策は将来を見据えバランスを考え検討する必要があります。

 

すぐ節税、節税と安易に手を出すことは短絡的です。(必ずやるべき節税もあります)

その前に、企業にとっての財務戦略とは何か?を真剣に考えておくべきです。

そして、相談する相手は、信頼のできる本物の「税理士」か確認してみましょう。