昨日は箱根の奥湯本にある日帰り温泉に行ってきました。

 朝10時過ぎに着いてひとっ風呂、美味しいお昼を食べた後は川のせせらぎを耳に昼寝。またもゆっくり温泉に浸かり、癒され整った1日となりました。

 

 実は楽しみがもう1つ。そこは夜になるとホタルが見られる場所でした。

 館内掲示には「19時30分から」とあったので、ほんのり明るい照明がついたお休み処でその時を待っていました。妻は息子と以前にここを訪れ、ホタルを見たことがあるようです。僕は3年前にいつもの公園で、光る数匹を見て以来となります。

 

 陽はとうに沈み、川面さえも見えなくなる頃から1匹、3匹、5匹と光を放ち、舞い飛ぶホタルが見られるようになりました。時刻はまさに19時半。数はさらに増えていき、目の前に幻想的な光景が広がります。

 

 間もなく妻に促されて隣の読書室へ移動しました。ここは真っ暗で誰もおらず、窓は開けたままです。

5メートルほど先の川の対岸に変わらずホタルは光り飛んでいます。やがてこちら岸にも、少ないながらもホタルがやって来ました。

 離れたホタルの光は黄色く見えますが、近いほど緑色に美しく輝き、僕たちはただ見惚れていました。するとお尻を光らせた1匹が、私たちの方に向かって飛んできます。

「おっ、お~っ」「すご~い」

 歓声を挙げながら見ていると、妻の胸に飛び込んでくるかのようにホタルは近づいてきます。妻がついつい軽く身をひねると、ホタルは部屋の中に入り込み僕たちの周りを飛んでいます。

 伸ばした僕の手を伝うようにしながら飛ぶと、また外へ出ました。その後はしばらく窓に張り付き、その間ホタルはずっと緑の光を放ち続けていました。

 まるで1つの魂のような光を……。

 

 生涯忘れられない、忘れたくない光景でした。

 この手の話があるとよく言われるのは「ご先祖様が……」。

 僕もそんなふうに思いましたけど、多くはないもののこちら岸に飛んでいたホタル。しかし僕たちに近づいてきたのはその1匹だけで、部屋の中にまで入ってきたのですから奇跡の出会いとしか思えません。

 

 どんな幸福よりも大きな感動と喜びを妻と共に、1匹のホタルからもらうことができた箱根の夜でした。

 

 ふんわり静かに・・・。