「こんにちはー!」

ドアベルが鳴るのと同時に
明るい男の人の声が聞こえてくる


サブローさんだ!


お昼ご飯の片付けをしていた
第1司書kaoruは
泡だらけの手を慌てて水で洗うと

パタパタとエントランスの方へかけていく。


黒猫ジジとベージュ猫ムーンは
kaoruより一足先にエントランスへ飛んでいった。


二匹と1人が
こんなに急いでかけていくのは
わけがある


昨晩突然つかなくなった灯を
サブローさんに見てもらいたいためだ。


サブローさんは、ここフランキンセンス図書館のサポートスタッフ


普段は人間界とファンタジー界の境目
ギリギリ人間界の敷地で
日用品屋さん「双葉屋」をしている

たわしから文房具
アイスから昆布まで
小さなお店に必要なものがなんでもある

不思議なお店なのだ。



サブローさんのおじいさんから続く
何でも屋さんの 双葉屋さん

フランキンセンス図書館とも長いお付き合いで
サブローさんの代になっても
必要な品物を届けてくれたり
ちょっとした修繕もしてくれたりする。


サブローさんは、電気屋さんでお仕事をしていたことがあるらしく
電気系統は得意!


kaoruがエントランスに着くと
サブローさんは、野球帽を取って

いやいや、今日も暑いね!
みんな元気にしてる!!

と、カラッと明るい声で
kaoruたちに話しかける。



元気!元気!

と、答えたkaoruは、


サブローさん、今日はお願いがあるの!


と、早速、館内の灯の調子が悪いことを伝え
た。


サブローさんは、

そんなの朝飯前だい!って

ニコッと笑うと


持ってきた荷物を、kaoruに渡し


その具合が悪い灯はどこなんだい?と

どんどん館内の奥に進んでいくのであった。




サブローさんは、根っから明るい

サブローさんがくよくよしてるのを
kaoruはほとんど見たことがない


いつも、お日さまのように
明るくて、元気で、力持ちで
カラッとしている



苦手なことは、

泣く女の人 らしく


ついこの間来た時は、たまたまエントランスに
初めての利用者さんがいて
涙目だったもんで、


挨拶そこそこに


じゃあ!また!と、

荷物だけ置いて帰ってしまった。



サブローさんって、男の子が
すくすく大人になった!


という感じの人だなー


なんで、こんなにわかりやすくて
真っ直ぐなんだろう??


人間界にこういう人いるの面白いなー


と、kaoruは
サブローさんに会うたび思うのだ。



10分もしないうちに
調子の悪かった灯は、サブローさんの手により復活し

ピカっと、明るく光を灯すようになった。



この建物は年季が入ってるから
夜に灯が1つつかなくなると
随分怖い、


サブローさんが来てくれてよかったー
今日は、夜が怖くない


サブローさんに、お礼を伝え
よかったら、お茶でもどうですか?と
尋ねると

「もちろん!ここのお茶は美味しいからね!
いただいてく!喉乾いてるし!」


と。やっぱりカラッと明るい返事が返ってきた。



サブローさん、歳は、kaoruより
ちょっとお兄さん

たぶん、見た目の年齢は
うららさんと同年代

野球帽が似合う力持ちのお兄さん
爽やかだし、明るいから
モテないわけではないと思うのだが

なにせ素直すぎるのか
少年心が強すぎるのか

サブローさんに浮いた話はない

なにせ聞いたことがない


サブローさんにその気がないのか?というと
そんなことは、ない!


kaoruに会うたびに

「最近の利用者さんどう?
俺のこと好きそうな人いるかな?」

と、聞いてくる。


残念ながら、うちの利用者さんで
今のところ、サブローさんに恋心を抱いてる人はいない


「サブローさん男前なのにね、

なんで、なんだろうね?」


ここにkaoruが来てから
いつもサブローさんとはそんな話をしてる。


で、も、
kaoruは実は知っているのだ!


サブローさんは、とっても好きな人がいることを。


なんとか、サブローさんの恋路を応援したいと思うのだが
相手に、てんでその気がないようで
kaoruも、これまたどうしたものか?と
考えている。



「サブローさん、今日もお荷物ありがとう!

灯も直してくれてありがとう!」


お礼を伝えると、サブローさんは


「うんうん。
なおってよかった!
これで、夜も安心だな!

またなんかあったら、いつでも声かけてよ。

と、ニコニコ笑顔で答えると


やっぱり、ここのお茶はうまいなー」


と、麦茶をごくり ごくりと
飲み干していく。



コップを、机にトンと置くと



「さて、帰るとするか


kaoruちゃん、ジジ、ムーン
またね

トトさんにもよろしく!

うららさんにもね。



じゃあ、お邪魔しました!!」



と、挨拶して

パタパタと帰り支度を始めた。



「うんうん、
サブローさん、ありがとうございました!

おじちゃんにもよろしくね!


サブローさんとこの、梅干し美味しく食べてるよ。

うららさんにも、サブローさんが来たこと伝えるね」


と、サブローさんに伝える。

サブローさんは、うん!と大きく頷くと
野球帽をかぶり直し、
愛車に乗って帰って行った。





サブローさんの車が見えなくなると

二匹とkaoruは、
館内に戻り、、


ね、今日も、うららさんのこと気にしてたね


サブローさん、うららさんのこと好きだよね


にゃー、にゃー


kaoruがそう、ジジに聞くと

ジジもそうだ、そうだと、相槌を打ってくる。




そう、何でも屋さんのサブローさんは
うららさんに片思い中


kaoruやジジ、ムーンは
この2人がどうなるのか
密かに観察しているのだった。



さぁ、サブローさんが持ってきてくれたお荷物の荷ほどきしよう!

ジジも、ムーンも手伝ってね!


kaoruはそういうと
颯爽と荷ほどきを始めるのだった。


続く



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