私がメンバーになってから、ひと月も経たないうちにスピリチュアル系からFXトレードのコミュニティへと変質していったLINEグループ『暖かい家の交流』は、昨年10月の時点で「T師匠」と「Y先生」と呼ばれる2名のメンバーが売買のタイミングなどを指南し、『FUNRATS WEALTH LTD』のファンドマネージャーを名乗る「K」が投資の実務をサポートする三者連携の仕組みができあがっていました。
「K」がファンドマネージャーを務めているというFUNRATS社が、海外で登記されている外国籍のFX会社であることは確かでした。アメリカのNFA(全米先物協会)の一般金融ライセンスも取得しています。

だからといって、LINEでしか接点のない素性のしれない人物に大金を託すのが危険なことに変わりはありません。ところが、グループ内のインフルエンサーともいえる「T師匠」と「Y先生」が、
「10月の半ばから約2週間、FX投資のチャンスが訪れる!」
などと鼓吹しだすと、『暖かい家の交流』はFXの話題で盛り上がりました。当時のメンバーは、私を含めて総勢59名。そのうちの多くの人たちが、続々とT・Y・K三者連携の仕組みに従ってFX取引をはじめたのです。
私は、東京都内で会社を経営しています。そのころは、年明けに開業を予定した新規事業の立ち上げに多額の資金を投じていて、マユツバな儲け話に乗っている余裕などない時期でした。それに、そもそも私は投資や利殖には関心がなく、FXの知識もない。
だから、とりあえずグループの流れに沿って口座の開設だけをしておき、投資は見合わせるつもりでいました。
LINEのDMを通じて「K」から要求された氏名、電話番号、メールアドレスなどの個人情報とあわせて、身分証明に運転免許証の両面を撮影した画像を提出。「K」の代行によって、FX電子取引プラットフォームのMT4(Meta Trader 4)開設が完了したのは、昨年10月13日のことでした。
そして、グループの“教祖様”が予言した投資時期が来ると毎晩、多くのメンバーから「儲かりました」「ありがとうございました」など、投資の成功を報告する書き込みが相次ぎ、MT4の残高表示をスクリーンショットした画像も散見されました。
さらに日が進むと、FX取引で得た利益で外車を買うとか、ブランド物のバッグを買ったとか、グループは景気の良い話で溢れるようになったのです。
それまで半信半疑だった私も、次第にT・Y・K三者連携のFX投資が本物であるかのような錯覚にとらわれていきました。そして、予想された2週間の投資期間が終了する直前の10月27日、ついに私はFX取引に手を出してしまったのです。
売買の仕方もわからなかった私は「Y先生」から指導を受けて、日本円で100万円を「K」から指定された銀行口座に振り込みました。その口座は、
『三井住友銀行』東大阪支店に開設された個人名義の普通預金口座。
名義人は、日本人名でしたが、どこの誰ともわからない人物でした。それでも振り込んだ当日に「K」からLINEのDMで入金を確認した旨の連絡がきて、MT4口座の残高を確かめてみると、100万円に相当する米ドルで、私の送金が反映されていました。
これが、最終的に2000万円を超える被害に遭うことになった「暖かい家」という名のアリ地獄に堕ちていく、はじめの1歩だったのです。