教えることに生きがいを見出している人は出世できない。
一昔前、塾・予備校にはカリスマという人たちが存在した。
「講師」と言えば聞こえがいいが、非正規雇用である。
不況の煽りを受けていつ首を切られてもおかしくないのである。
時代は変わったのだ。
授業はサービス、社員は営業マンなのだ。
社会人になったからには、プライベートを充実させたいと思う。
しかし、平日に1日休みがあるだけで、土日は仕事である。
大学の仲間ともすっかり疎遠だ。
しかも、昼からの出勤とはいえ、帰りは終電。
校舎でコミュニケーションをとる以外に、人と接する機会が極端に少ない。
業界で社員の離職率が高いのもわかる気がする…。
出勤して生徒が来る前の清掃をしていると、突然、大石先生が倒れた。
本人は大丈夫と言っているが、あきらかに顔色が悪い。額に汗も滲んでいる。
「救急車を呼び・・・ま・・・しょう!」
出来るだけ落ち着いて口に出したつもりが、不安が声に出てしまった。
「本当に大丈夫です・・・良くあることです・・・」
大石先生は立ち上がり、自分の席に座った。
「病気なんですか?」
「子どもの頃から胃を悪くしていまして・・・。少し休めば大丈夫です。ご心配をおかけしました。」
「本当に大丈夫なんですか?校舎のことは任せてくれれば大丈夫なんで休んでください。」
「そうですね・・・。じゃあ、本当に苦しくなったらお願いします。」
授業中も大石先生が心配で、授業をしている声を何度も確認した。
子どもの前では体調が悪いことなど微塵にも見せない。
本当のプロの姿だ。
授業が終わり、講師の人たちが帰り、大石先生と2人になった。