子供の頃の中村1
子供を持ったことのある方ならわかるだろう。
我が子を見て
(これ位の頃の自分は、どんな子だったんだろう)
一度や二度はあるはずだ。
うちの娘は小学二年生。
その頃の自分をふと思い起こす。
舞台となるのは渋谷区猿楽町。
そこは今とはまったく違う、実に静かな街だった。
周囲には洒落た服屋もパブもなく、
お琴のお師匠さんが奏でる音色・・・
遠く耳を澄ませば、小さな機織り工場から聞える
カッタンコットンという音・・・
当の中村はといえば、仮面ライダーごっこに
邁進する有意義な日々を送っていた。
子供というのは時として、
「なんでそんなことするんだ!信じられねぇ!」
・・・ということをするもんだがね。
今でも忘れられないのがこれらだな。
①回転しないライダー竹垣に突進事件!
近くにあった焼却炉の上からジャンプして、
ライダーのように回転して着・・・地・・・・
ぜんぜん回転なんかせず、頭から竹垣に突っ込む。
②今だから言うけどアレは俺が犯人だよ事件!
サイクロンを模して自転車に発炎筒を装着!
6本同時に火をつけ町内を走り回った際、
近隣の枯れ草に引火!
消防車数台が駆けつける騒ぎとなる。
③いい出汁出たでしょ?おじさんごめんね事件!
毎日夕方になると、近所の乾物屋の前におでん屋出現!
遊びから帰る際になると、いつも素晴らしい芳香が・・・
ところがそのオヤジ、大の子供嫌い。
我々の姿を見るや「あっち行けっ!!シッ!」
これに頭きた中村は、そのオヤジに
決定的な致命傷を負わせる作戦を慣行!
近所を巡って野良犬の“糞”をかき集め、
おでんの浮かぶ船目掛けて投げ入れてやった。
・・・二度とそのオヤジが姿を現す事はなかった。
④“ドボン”の後の“キャーッ”はヤバイだろ事件!
その頃の渋谷には、まだ“三軒長屋”ってのが残ってた。
要はあれだよ、よく落語に出てくる
<クマさん><はっつぁん>が住んでるようなの。
そこはねぇ、まだトイレが汲み取り式だったんだな。
中村はそれが面白くてたまらなかった。
ある日悪友を連れ立ってそこらから大きめの石ぃ拾ってさ、
汲み取り用の蓋開けてソレ投げ込んだわけ。
その途端便所の中から「キャーッ!!」って。
「うっわやべぇ!!にっにっにげろ~っ!!」
で、その後つらつらと考えるにだな。
恐らくケツに“掛かっちゃった”んだな。
⑤怖い犬と怖いオヤジには制裁を!事件!
うちのすぐ近くに、何だか知らんが
そこそこ有名だという音楽家が住んでた。
カイゼル髭なんか生やしちゃって、
見てくれはご本家金田一シリーズに出てくる、
粉薬吐き出す警部みたいなの。
そのオヤジは夕方になると、やたらとでっけえ
セントバーナードを連れて辺りを散歩するわけさ。
その犬がまた、えらく吼えるんだ。
さすがに恐ろしくなって逃げる仕草をすると、
そのクソオヤジわざとけし掛けてくる。
ある夏の夜のこと。
近所の子供たちが一堂に会して花火をやる事になった。
中村がお気に入りだったのが、通称<ケムリだま>ってやつ。
赤や青や紫なんかに塗られた、直径4センチくらいの憎いヤツ。
当時の花火ってのは今と違って、とんでもない量の
火薬が使われていて、一度火をつけるとなかなか消えないんだ。
(あの犬とオヤジに制裁を・・・)
そう決断した中村は、この<ケムリだま>を一箱買い込んだ。
全部で24個。
家から持ち出したライターで次々に火をつけ、
そのオヤジの家の玄関ドア下の隙間から投げ込んだ。
無論24個全てだ。
その後の叱られ様があまりに無残だったため、
中村の脳内記憶媒体からは自動削除となっている。
いやあ・・・・・はは・・・。
た、楽しい少年期だったなぁ。