打ち上げ花火?線香花火?

クチコミ 夏満喫企画
子供の頃、友達の家の納屋を半焼させてからというもの、
打ち上げ花火は半ばトラウマ。
その点、線香花火はいいね。
実にいい。
ふるふると震える火球をじっと見つめ、
チッチッと鉄粉が煮え出すのを待つ。
よく聞く話だが、
昔のコレは本当によく燃えたものだ。
出来上がった火球も、
おおよそ今の倍近くあったように思う。
中村が8歳のころ住んでいたマンションの上階に、
まあちゃんという小さな女の子がいた。
いつも母からは、
“まあちゃんは絶対に怪我させちゃいけないよ”と言われていた。
その訳を聞くと、
まあちゃんは“血が止まらない病気”だから…
大人になって、それが白血病だと知った。
「まあちゃんはねぇ、線香花火が好きなの」
他にも手持ち花火があるのに、
いつもそういって線香花火ばかりやっていた。
中村が沖縄に引っ越すとき、
自分が大事にしていた熊の縫いぐるみを差しだし、
「これ、まあちゃんの代わりね」
そう言って目に涙を一杯溜めていた。
つい一昨年のこと、
中村はそのマンションを訪ねてみた。
最上階の大家さんを訪ね、
彼女の事を聞いてみると、
なんと中村の事も含め、
しっかりて覚えていてくれたんだ。
「確かに5階にそんな家族がいましたねぇ。
でも、あの子はあなたが引っ越した翌年に
亡くなったのよ。」
言葉が出なかった。
「まあちゃんは、線香花火が好きなの」
今も心から消えることはない。