相変わらず下ばかり向いて歩いてる僕は足元の可憐な涙を見て大樹が春を散らしている事に気付く
白く儚い花の下を犬とゆっくり歩く
犬の背に花弁が落ちる姿に荒んだ思いが救われる
落ちていた花を拾い上げて先を急ぐ犬の背中に乗せて笑う僕は浩然として見えていただろうか
此処へ来る途中に通りがかった蕎麦屋の主人が店先の日向で爪を切る姿がなんとも趣深かった
自分と彼の時間の流れの違いに嫉妬に近い憧れを抱いたばかりだった
あの日僕の心は混乱していた
目に映るものは真実に非ず
菜の花の強い香りが汚染された川の悪臭を誤魔化すのは好きではない
蕎麦屋の主人はどんな顔をしていたのだろう