数年前そんな田舎に居るなと言われ、携帯の電波が無い山で働いていた私は東京に来た

山に居た頃は冬、電車を降りると一面の雪で、会社迄の道無き路は獣の足跡だけが付いていた
風の強い日は10分で着く所を20分も掛った時もあった

秋、会社の人の話題は近くの山の熊出没情報で、朝起きたら台所にイタチが居た、なんて話も珍しくない

事務所で仕事をしていると、窓から狸やら兎を人より頻繁に目にした

ある時山から降る落ち葉を払おうとしたら、擬態した虫で大変驚いた事もあった

私しか乗ってない電車は猿が戯れる田んぼの脇を通り、無人駅から無人駅へと走った



東京は好きだ


林を歩き乍ら、説得力無い話を犬にする


都会の田舎は誰も居ないから