ハラスメントやメンタルヘルス対策で、研修をしなさいと言われます。すると、「研修に割く時間がない」とか「お金がない」とか言われます。たしかに、研修をするとなると、研修の時間をとったり、講師を呼んだりと、けっこうな負担になりますよね。それで、研修をするのを先延ばしにしてしまう、なんてことが起こってしまいます。

 

どうすればいいのでしょうか。ここで、研修を教育活動と考えた場合、教育学ではこの教育活動をどう考えているかが、ヒントになります。

教育学では、教育活動を、大きく2つに分けます。ひとつは、「積極的教育活動」、もうひとつは「消極的教育活動」です。

 

たとえば、授業や補習、説諭など、先生がついて、意図して勉強など物事をわからせる教育活動。たぶん、一般の方々が教育についてイメージされているものは、これなんじゃないかと思います。これを、積極的教育活動といいます。でも、学校って、授業や補習だけがあるわけではないですよね。たとえば、先生の、授業中の雑談をなぜか覚えていたり、図書室でたまたま見つけた本が一生の友になったり、掲示されていたポスターを見て興味をもって、それが生涯の趣味になったりしたことはありませんか?そういった、これといった意図がないもの、つまり環境からも、人は多くの影響を受ける(学ぶ)ものです。これを、消極的教育活動といいます。

 

人間は、本質的に、環境から学ぶのが得意な生き物です。人の進化の過程で、まわりにあるものを観察したり、人とおしゃべりしたりして、人は知識を得てきました。実は、人は、この消極的教育活動からの方が、多くを学ぶといわれています。

 

時間を割いて講師を呼んで、といった積極的な研修も、もちろん必要なんですが、それだけが研修じゃない。たとえば、ハラスメントやメンタルヘルスについてのポスターを貼るとか、図書やパンフレットをそろえるとか、日ごろの雑談やミーティングなどで話題にするとかいったことも、立派に研修のうちに入ります。

 

時間やお金がなくても、ポスターや本は用意できるでしょうし、日々の話題にあげることもできるでしょう。まずは、そういったところから始めてみませんか。

 

※ハラスメントやメンタルヘルス対策や研修については、社会保険労務士であり公認心理師がご相談を承ります。お気軽にお声がけください。