今年最強と言われた台風30号が、フィリピンのレイテ島を直撃し、多くの犠牲者が出たことは記憶に新しい。日本国内でも、台風26号による豪雨が伊豆大島を襲い、全国でもいままでにない、竜巻の発生を経験した。

 「過去に経験したことのない」激しい気象現象が起こる原因は、幾つか挙げられているが、やはり地球温暖化が主な犯人として、槍玉に挙げられる。地球温暖化をもたらす温室効果ガスの発生を、地球的規模で減らす努力が急務である。

 気候変動枠組み条約の締約国会議、いわゆるCOP19が、ポーランドのワルシャワで11月23日まで開かれた。ここでは先進国と途上国の主張の隔たりが大きく、一時は会議が決裂する危機もあったが、ようやく歩み寄って、2020年以降の各国の排出ガス削減目標を、自主的に2015年までに提示することが決定した。

 日本は以前のこの会議に「1990年レベルに対して2020年には25%削減する」と表明して、世界を驚かせたことがある。言うまでもなく鳩山政権時代である。しかしこれは国内のコンセンサスも得られないまま、見切り発車したものだ。その後発生した東日本大震災と原発事故の影響で、この数字を撤回した経緯がある。

 この度のCOP19で日本政府は、「2020年の排出ガスは、2005年レベルの3.8%減」を提示して体裁を保とうとした。ところがこの数字は、以前の「1990年レベルの25%減」に比べて、3.1%増になってしまう。日本ではぎりぎり努力した数字だが、対外的には以前の数字と比較され、「一歩後退」と評価されてしまった。数字のマジックという側面もあるが、前政権の負の遺産がここにもあったと言える。

 原発再稼働の是非や評価が見通せない現状で、将来の排出量の約束をすることは大変酷なことだが、再生可能エネルギーの思いきった推進策を打ち出すなどして、3.8%という数字に拘らず、途上国を含めた世界からの信用回復に全力を尽くさなければならない。