19歳でおじさんと出会って、

20歳でおじさんと別れて、

29歳でまた、おじさんに出会った。

 

29歳で出逢い直した時には、

おじさんの知らない、

オトナになった私がいて、

 

おじさんは、

20歳の私にはオトナな人だったけど、

29歳の私にはステキな人になっていた。

 

胸に刺さった刀を抜いたら、

「ステキな人になるんだ」

って、そう言ってたよね。

 

うん。
記憶は失くしていたけれど、

これだけは解る。

 

10年後のおじさんは、
刀が抜けたおじさんは、

確かにステキになってた。


10年前の記憶のない私にとって、

二度目の初恋だった。

 

10年後の私は、

おじさんにとっては、

何も変わっていなかったかもしれないけれど、

 

多分

ちょっとは・・・

 

ちょっとは・・・

 

オトナな女性になっていたんじゃないかなって思う。

 

失った記憶を取り戻したケベックの街で、

あの想い出に溢れるクリスマスショップで、

炎を吹き消すことを思いだした私だけれど、

それは同時に心も呼吸を思い出したんだよ。


息をするように貴方が好き。

貴方がいるから、呼吸していられた。

 

儀式にも思えるその行為は、

いつの間にか、

身を守るものでは無く、

 

「あなたに逢いたい」

 

ただひたすらに、伝えるためとなっていて、

 

マッチにライター、そしてキャンドルと、

いつもバッグにいっぱい詰め込んで出掛けていた私なのに。

 

あの日、迫りくる無人のトラックと対峙した時・・・。

 

私は手元に何も持っていなかった。


大急ぎで帰宅したくて、

いつもなら助手席に置くバッグは後ろの席、

スマホは通話中。

 

(もう、間に合わない)

 

そして、

私が願ったのは、

電話を切ってろうそくを呼び出す事ではなく、

 

最後の1秒まで、

おじさんの声を聞き続けることだった。

 

「愛してる」

 

おじさんの泣き顔が目に浮かんだ・・・。





***

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