[キノコのクリームスパゲッティ

〜とある淑女の最上嗜好品〜]


店主の代名詞「哀愁のナポリタン」、苦肉の策として生まれた結果、定番の人気献立となった「おじさんのペペロンチーノ」「マーキーのレーカー」に続き、新献立の乱立期に誕生した一品。















かの流行病が世界中を席巻していた頃の噺し。

ハイカラな夜遊び業態であるはずのダァツバァといふ店が眩しい陽光が降り注ぐ日中の春夏冬を余儀なくされていた頃である。

来る日も来る日も暇を持て余す店主は電脳通信による動画を飽きもせず見続け、気付けば難解な近代玩具ルゥビックキュウブを攻略し、強烈な飽きを感じていた。

さて次は何をしやうか、店主は思案に暮れたが電脳通信動画に映る西洋料理調理の指南をする日本人の姿を観て思った。


客人が喜ぶ献立の種類は充分に足りているか、もっと増やした方がいいだらうか、いや挑戦してみやう、店主は決意した。



現在スパゲッティ・米を合わせて10種を越える献立表を形成する献立の中でも随一の仕込み時間を誇り、一部客人から絶大な支持を得る献立となった当献立の最大のこだわりは空炒り。


ブナシメジ・舞茸を主に徹底的に空炒りし、彼らが内包する水分を除くことにより別鍋で丁寧に作った出汁・旨みをしっかり吸収させる。

さらにバタァとミルクの協力を得て、粗挽き黒胡椒を纏ったキノコ達の競演をお楽しみ頂ければ至極幸いである。