2月14日

 

いつもの様に私のアパートの玄関までお迎えに来てくれたTさん。

 

私はカバンの中にチョコを忍ばせ

いつもより少し気合を入れた服でお出迎え。

 

これといって行きたい場所もなかったので、

2人が好きなパンケーキを食べに行く事に。

 

Tさんは甘党だが、パンケーキ屋さんデビューは

私とお付き合いしてからで、それからずっとハマっている。

 

以前は並んでまで食事なんてするもんじゃない。

という考え方のTさんだったが、

私と付き合ってから…というか、

私と一緒の時は30分でも1時間でも我慢できるらしい。

 

 

以前も話したが、

Tさんとお付き合いするまでの私は

色白で細身で身長170センチ以上の二重の男性が好きで

だいたいそういった人とお付き合いしてきた。

 

でも、Tさんは

仕事の関係で色黒で

野球やらラグビーなんかやってたから

胸が分厚くて少しお腹の横に脂肪が付いてて

身長も164センチでたれ目一重

 

そして、私の人生で初めての眼鏡男子

 

 

だから私はよくTさんに

 

「いつになったらこの魔法が解けるの?」

 

と聞く。

嫌いになれたらどんなに楽だろうと。

私がTさんを嫌いになってTさんが傷ついても

何年かしたらきっと忘れてくれると思う。

 

 

そんな事を何度か思いながら、

気が付いたら1年半近くこの関係は続いていた。

 

 

 

「なんだかんだ、パンケーキも色んなお店行ったね。」

 

30分ほど待って、

以前足を運んだ事のあるパンケーキ屋の店内にいた。

 

いつも甘党なTさんはチョコソースがかかった物を頼む。

私はだいたいベリー系。

 

Tさんはナイフやフォークの使い方が上手で

私はTさんと付き合ってから、そういうお店に行く事が増えたので、

昔に比べたら大分うまくなったなぁ~と思う。

 

「ふーもちゃん。あーん。」

 

いつものように私の口元に

チョコと生クリームのたっぷり付いたパンケーキを運んでくる。

 

「じゃあ、私のもw」

 

40過ぎのオジサンとオバサンの食べさせあっこw

最初は恥ずかしかったけど、今では何の違和感もない。

 

Tさんは私より先にパンケーキを食べ終えていたが、

口元にチョコが付いていた。

そのうち気付くかな?と思って放っておいたが、

気付く気配が無かったので

 

「Tさん。ここ。チョコついてるよw」

 

と私はTさんの顔をジ~っと見て、

自分の顔の口元を指さして教えてあげた。

 

そうしたらTさんは笑いながら舌をペロッとして

口元のチョコを舐めた。

 

「Tさんは、そういうところあざといな~。」

 

と私がニヤニヤしてると

 

「え?俺、アザト系女子になれるかな?」

 

なんて言ってきたので、

 

「Tさんは男だからなれないよ~。」

 

と返したら、Tさんは笑ってた。

 

 

その後はパン屋さんを覗いてみたり、服を見たりなんかして

ディナーまでの時間を過ごしていた。

 

Tさんは私が好きな物に対して否定しないし、

自分の趣味を無理に押し付けてこない。

食の趣味も合う。

 

 

 

そして、いつものイタリアンのお店に到着。

私の誕生日以来。

いつも1人10000円コースだが、

この日は何か違ってた。

 

それは食事をしながら、

いつもより料理のグレードが違っている事に

途中で気が付いた。

 

「今日のはなんかすごいね。

蟹とかトリュフとかウニとか神戸牛とか。」

 

私が驚いていると、Tさんがナイフを止めて

 

「感謝を伝える日だからね。

そりゃ、毎週こんな食事は出来ないけど

これからも一緒にここに来たいし。」

 

と微笑みながら言ってくれたので、

私は少し下を向いて

 

「ありがとう。でも…

なんか、バレンタインなのに変な感じ。」

 

と照れくさい感じの態度になってしまった。

 

 

その後は食事の感想を言ったり

何気ない会話が続いた。

 

 

いつものようにコースのお肉まで食べて、

デザートと一緒に最後のコーヒーが運ばれたので、

 

 

このタイミングでチョコを渡そう!

 

 

私はカバンから

小さな手提げ袋に入っているチョコを取り出し、

 

「はい!ディナーに負けちゃうけど私の感謝の気持ち。

いつも大切にしてくれてありがとう!」

 

とTさんに手渡した。

Tさんはニコニコして

 

「ありがとう。」

 

と言ってくれた。

手提げ袋の中には手紙も入っていたが、

ギャグ要素でバレンタイン通知表なる物も入れておいた。

 

Tさんは通知表の採点を見てクスクス笑っていた。

 

「時間を守れないか~。

もっと、時間作らないとなぁ~。」

 

とTさんがしみじみと言ったので、

 

「私だって会いたい言わないけど、一緒に居たいんだからねw」

 

と、つい本音が出てしまった。

 

「通知表の評価が上がるように努力します!」

 

とTさんは私の顔をまっすぐ見て

真面目な雰囲気で言ってきたので、

私は笑ってしまった。

 

 

私が笑っていると、

 

「実は俺も渡したい物があって…。」

 

と急にぎこちない感じのTさん。

カバンからゴソゴソと何かを探しだした。

 

 

誕生日の時みたいにサプライズなのかな?

 

 

Tさんは正方形の小さな黄色の箱から

さらに中身を取り出した。

 

そこには黄色のケース。

Tさんはケースを持ち開いて私の方に向けた。

 

 

・・・そこには

四葉のクローバーをモチーフにした指輪が入っていた

 

 

私の頭は少し混乱して、

 

これはアクセサリーとしての指輪なのか

それとも、アレなのか……アレだったら受け取れない。

今の私じゃ、Tさんのお荷物になってしまう!

 

そう思って、指輪から目線を上に上げたら、

緊張して少し目がウルウルしているTさんが居た。

 

「え?これって……そういう事?(婚約指輪?)」

 

私が困った顔でTさんに聞くと、

 

「うん。

受け取ってくれませんか?」

 

いつになく真剣な顔で、静かな声で言われた。

 

「私で…いいの?」

 

「ふーもちゃんじゃなきゃダメに決まってる。」

 

 

Tさんのドキドキが私にも伝わってきて

 

「じゃあ、私の指にはめて。」

 

と言ってしまった。

 

Tさんはケースから指輪を取り出し

私の左手の薬指にはめてくれた。

 

 

去年、デート中にたまたま指輪のサイズを測った事がある。

その頃より骨粗鬆症の進行で指が細くなっていた。

 

少しゆるい指輪

それでも、すごくキラキラして

Tさんの気持ちやイメージが浮かんできた。

 

「…素敵…」

 

自然に出た言葉だった。

 

Tさんはソワソワしながら、

 

「ちょっとサイズ大きかったかあ~!

でも気に入ってくれたら嬉しいし、

受け取ってくれるって事だよね?!」

 

少し前のめりになって話しかけてきたので。

 

「……うん。後で、困っても知らないよ。」

 

と私は小さな声で返事をした。

 

「そんな事はない!!」

 

その後、私の胸はドキドキしたりジーンとしたりしていた。

というか、まだ気持ちに整理が付いてなかったと思う。

 

 

Tさんは

この指輪(エンゲージリング)を11月からデザイナーさんのところに行き

一緒に考えてデザイン画や模型などの工程を得て

1月には完成していたらしい。

 

私がよくLINEに四つ葉のクローバーを使うのだが

指輪には四つ葉とTさんのイニシャルが重なりあう感じ。

そこに幾つかのダイヤとクローバーに合わせたペリドット。

 

ペリドットの意味は

夫婦の幸福・平和・安心

 

世界にひとつ。

私だけのために作ってくれたTさんらしい指輪。

 

 

 

お店を出て食事のお礼をした後、

駐車場へ行く道のりでTさんに質問を投げかけた。

 

「ねえ?なんで私と結婚したいと思ったの?」

 

「そうだなぁ。ふーもちゃんのご飯が美味しいから。

とかじゃ怒られちゃうからアレだけど、

一緒にいると楽しいし、ふーもちゃんの部屋を出て帰る時、

すごく寂しいんだよね。」

 

私と同じなんだなと思った。

私も見送る時寂しい。

 

「それに、ふーもちゃんと出会わなかったら

今まで知らないで過ごしてて損した事がいっぱいある。

多分、勿体ない人生だったと思う。」

 

 

私は足を止めてTさんの顔をまっすぐ見た。

 

「前も言ったけど、私は病気も合併してるし、ずっと治らないかも。

金銭的にも体調的にも迷惑かけるかもしれないし、

もしかしたら、結婚後も働けないかもしれないんだよ。

……それでも後悔しない?」

 

Tさんは

 

「じゃあ、俺より先に死なないでそばに居て。」

 

と、私の両手をつかんで、優しい声で言ってくれた。

私のやせ細った手を温かいTさんの手が包んでくれる。

 

「泣いちゃうじゃん…。」

 

「泣いてるw」

 

 

 

 

 

こうして、私はTさんのプロポーズをOKしました。

 

 

 

Tさんと私を応援してくださった皆さん。

本当にありがとうございます。

細かく書けてなかったり誤字があったりしましたが、

ここまで書けたのは皆さんのおかげです。

 

                  ふーもより