いじめで不登校から合唱祭指揮者に!
1.何かにおびえている鈴木さん(仮名)
2.「中1の時にいじめられていたんです。」(母の言葉)
3.「前の担任は良い先生だったんですが・・・」
4.「学校に来ないでくれる!」
5.「絶対に守ります!」「協力して下さい!」
6.「信じてくれなかったら恨むからね!(笑)」
7.「このクラスなら大丈夫!」(学級委員に立候補)
8.「中1の時に『死にたい』と言ったあの子が・・。」
1.何かにおびえている鈴木さん(仮名)
中学2年生の担任をしたときの鈴木さん(仮名)の担任になりました。鈴木さんは中学1年生のときに、私のクラスではありませんでした。また、授業も受け持っていなかったため、「何となく見たことあるな~」という感じの子でした。
鈴木さんはおとなしい子でした。また、何かにおびえているようなところも感じました。先生たちとはそれなりに話をするのですが、友だちとはあまり話をしません。
昨年の担任も他の学校に転勤してしまっていたため、鈴木さんがどのような子か聞くことができませんでした。
その学校では4月の後半に家庭訪問がありました。鈴木さんのことが少し気になっていた私は家庭訪問でお母さんに去年の様子や家での様子を聞こうと考えました。
2.「去年いじめられていたんです。」(母の言葉)
鈴木さんの家に家庭訪問をして、お母さんといろいろと話をしていました。
話初めて少ししたとき、私は少し気になっていた質問をしました。
「去年の3学期、遅刻が8回ほどあるんですね!」
「何かあったんですか?」
すると、お母さんはこう答えました。
「前の担任の先生から何も聞いていませんか?」
何も聞いていなかった私は、正直に「はい」と答えました。するとお母さんが少し怒った口調でこう言いました。
「実は去年、いじめられていたんです。」
3.「前の担任は良い先生だったんですが・・・」
私が驚いて話を聞きたいとお願いすると、お母さんは鈴木さんのいじめについて話をしてくれました。
「実は・・・・・。」
「前の担任の悪口じゃないですよ!」
「本当に、前の担任の先生は良い先生で・・・。」
「ただ・・・・・。」
「去年、いじめられていたんです。」
「何度も先生に言ったんですけど、いじめはなくならず・・・。」
「いじめが続いたので、不登校にもなりかけたんです!」
「毎回、何とか説得していたんです!」
「いじめられるうちの子も悪いんですけど・・・・。」
4.「学校に来ないでくれる!」(いじめ)
さらに、お母さんに詳しくいじめの内容を聞くとこんなことをされていたと教えてくれました。
・クラス全員から無視された。
・グループ分けで毎回1人になる。
・ペアを作るときに、一緒にペアになった子に「キモイ」と言われた。
・「学校に来るな!」
・「死ね!」
・「ウザイ」
・「キモイ」など聞こえるように言われた。
・体育でバレーやバスケをやってチームが負けると、チームメイトから悪口を言われる。
・「お前のせいで負けた!」
・「お前がいると足手まとい!」
・「体育を見学してくれる!」
・「学校に来ないでくれる!」と言われた。
5.「絶対に守ります!」「協力して下さい!」
それを聞いて、私は怒りを覚えお母さんにこう言ってしまいました。
「あの担任、最低ですね!」
「そんないじめがあったら、僕は暴れているかもしれません!」
「もちろん、いじめのないクラス運営をします!」
「もし、いじめがあった場合絶対に鈴木さんをまもります!」
「まかせて下さい!」
「もし、いじめがあったらすぐに教えて下さい!」
「お母さん!いいクラスをつくるための協力お願いします!」
するとお母さんは泣きながらこう言ってくれました。
「先生、本当によろしくお願いいたします。」
6.「信じてくれなかったら恨むからね!(笑)」
翌日、私は鈴木さんに話を聞きました。すると、鈴木さんはこう言ってくれました。
「私も仲間と話をしたいんです!」
「でも、いじめのことを思い出してしまって!」
私は鈴木さんにこう言いました。
「思い出すのは仕方がないよね!」
「でも、今年は先生がいるからね!」
「いじめがあったら絶対に守るから!」
「先生を信じて!」
「何かあったら、すぐに教えて!」
さらに私はこう言いました。
「もし、先生に教えてくれなかったら怒るからね!(笑)」
「先生を信じてくれなかったら、恨むからね!(笑)」
「もちろん、鈴木さんがいじめをしたら絶対に許さないからね!」
そして、最後にこうお願いしました。
「エンカウンターやライフスキルなど人間関係をよくする授業をいっぱいやるからそのときは、積極的に友だち交流してね!」
「トラウマがあるかもしれないけどがんばってね!」
すると、鈴木さんはこう言ってくれました。
「先生、がんばります!」
「そして、よろしくお願いします!」
7.「このクラスなら大丈夫」(学級委員に立候補)
その後、鈴木さんはいろいろなことに積極的に参加するようになりました。
私も学級運営に力を入れ、クラスの全員が楽しく、協力するクラスをつくったつもりでいます。
いじめのつらさを知っている鈴木さんは、他のクラスの子がいじめにあっている事などの情報が入ると、すぐに私に教えてくれました。これによって、いじめから救われた子が何人もいます。
もともと真面目で、優しい鈴木さんです。鈴木さんの良い面にクラスの仲間も気づきはじめ、鈴木さんはクラスの中心的な存在になって行きました。
2年生の後期には学級委員に立候補しました。ただ、そのときは残念ながら学級委員にはなれませんでした。
学級委員決めの前日、鈴木さんは私の所にきてこう言いました。
「先生、私、学級委員に立候補する!」
そんな鈴木さんに私はこう言いました。
「お前、学級委員できるのか?」
「注意とかできるのか?」
鈴木さんはこう答えます。
「先生、このクラスなら大丈夫!」
8.「『死にたい』と言ったあの子が・・。」
中学3年でも私のクラスにきた鈴木さんは、合唱の指揮者となりました。
鈴木さんはリーダーシップを発揮し、クラスを金賞に導いてくれました。
それを見に来ていたお母さんが、合唱祭終了後、私の所にきて、泣きながらこう言ってくれました。
「先生、本当にありがとうございました!」
「あの子が指揮者をやるなんて!」
「中2で先生にあえて良かったです!」
「中1の時に『死にたい』と言ったあの子が・・。」
「先生、本当にありがとうございました!」
鈴木さんは厳しいと言われた希望校にも合格することができました。現在は、看護系の専門学校に通っているそうです。
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