たまに言うけど…。

最近走ってるんだ。


今日も走ってたんだ。

でもさ。
毎回同じところを同じように走ると飽きるからさ。

たまに全然知らない方向に走り出してみるんだよね。

それが今日だったんだよね。

でさ。

もう結構知らない方向に突き進んだおかげで、初めて見る街をなんとなくの方向感覚で走ってたんだけど…。

(まぁ、〇〇駅を目指せばそこからわかるからこっちまっすぐだろうな…。)

ふと。

視界の先に老人夫婦が見えたんだ。


おじいちゃんが車椅子のおばあちゃんを押していてね。


家の玄関へのスロープなんだけど…。


結構な角度でね。

バリアフリーといっていいのか疑いたくなるくらいの角度でね。

案の定おじいさんは全く押せてなくてね。


視界に入ってからそこに差し掛かるまでしばらくの時間があったんだけど、結局進んでなくてね。


ああ。


頑張ってね…。

と、通り過ぎたのさ。


…。


え??

助けると思ったって??

感動のストーリーが待ってると思ったって??


…。


ちっ。

ああそうさ。


俺の中のリトルフミヤが言ったのさ。


困ってる人は助けるものだってね。

(´ー` )ふ


仕方なく戻ったよ。

きっと通り過ぎたことにさえ気づいていないだろうから、今通りかかったフリをして声をかけたよ。

俺「大丈夫ですか?」

おばあちゃん「あらあら。ごめんなさいねぇ。」

おじいちゃんは無言だったけど、とりあえず大丈夫じゃないんだろうと解釈しておばあちゃんをスロープの上に…。


すると

おじいちゃん「お茶でも…。」

ああ。

そうやって見知らぬ中年男性を家に上げるのは危ないですよ…。

俺「いえ、それでは。」

ぐいっ…。

??

そのまま連れて行こうとするおじいちゃん。

俺「のー!」


止まるおじいちゃん。


(あ、英語か?英語圏のおじいちゃんなのか??)

すると諦めたような顔をするおじいちゃん。

おもむろにお尻のポケットからナニかを取り出そうと…。


俺「のー!!」

まったく…。

最近の老人はそうやってすぐにお金で解決しようとする…。

しかし動作を止めないおじいちゃん。

なぜ?!

俺「まにー!」(お金)

俺「のー!」(違う)

それでも動作を止めないおじいちゃん。


なぜ通じない?!

違うんだ!!

あー!

ちがう!!


俺「のーーーまにーーー!!!!」

(お金がありません!!)


ピタっ。

こちらを笑顔で見たのち…。

ナニかを取り出そうとするおじいちゃん。


は?!

さっきまであっていたはずなのに繋げると逆の意味になる不思議!?

これは…。

何かをされたらナニかを返さないと気が済まない人間のアレか!

なら話は簡単。
簡単なナニかをこちらから提示してしまえばいい!!

走ってきた方向の先を指差しながら…。

俺「あの!実はすごく道に迷ってて困ってて、〇〇駅ってこっちの方向であってますか?!!」

ピタっ。

(よし!!動きを止めたぞ!!)

少し考えるおじいちゃん。

…。

笑顔で頷くおじいちゃん。

ふう!

これで解決だ!!


俺「助かりました!!それでは!!」

勢いよく走り出した俺。

…。

しばらく走った俺。

知らない街だけれど見たことのある景色を走る俺。

…。


そして気づいた俺。


いや待てよ。

通り過ぎてから戻ったんだから…。


戻った時の進行方向に目的の駅あるわけないじゃん。


あれ??

おじいちゃん騙した??


なんだよ。
そんなことなら道聞くんじゃなくてお茶でももらって帰ればよかっ…。

…。

あれ??

違う道を教えるくらいだ。

本当に素直にお茶を出すつもりだったのか??


ひょっとしたらあのスロープ…。

あの角度だ。

後ろ向きで落ちたらただでは済まない…。

事故に…見せかけて…??


押せていなかった車椅子…。

人の目(俺)が無くなるのを待っていたから…。

進んで…いなかった…??


…。

は?!

尻から取り出そうとしたのはなんだったんだ??

ひょっとして…。

目撃者を消すためにハジキ的なもので弾かれるところだったのでは?!

これはいかん!!


通報だ!!

おまわりさんに相談だ!!


想像の域は出ないがこれはアレだろう
証拠は上がってるんだってやつだろう訴えたら勝てるやつだろう!!!

ふふふ。

おじいさん。

以上ですがなにか反論はできますか…??


おじいちゃん「見知らぬ中年が…。」(事実)

おじいちゃん「妻の車椅子を奪い…。」(事実)

おじいちゃん「金がない。と、金を出すように示唆しました。」(事実)


…。

は、はいそーーーー!!!(敗訴!!!)

.°(ಗдಗ。)°.



おまわりさん「この人の行ったことは事実かい?」



…。




俺「はい、そーです…」

_| ̄|○



あうぇーーーーーーい!!!!