投資のプロ、ファンドマネジャーの目利きを勉強する方法とは?

日本株が注目を集めている理由が分かったところで、いよいよ本題に入りたいと思います。ここからは、日本株の中でより将来性のある銘柄を見つけ出すために、日本株ファンドをどのように活用すればよいかを解説します。
 
ボトムアップアプローチのアクティブファンドに着目しよう
 
投資信託は基本的な運用方針によって、大きくアクティブファンドとパッシブファンド(インデックスファンド)に分けられます。日経平均株価などの株価指数やNOMURA-BPIなどの債券指数といった指数をベンチマークとし、それを上回ることを目指すファンドがアクティブファンド、ベンチマークに連動することを目指すファンドがパッシブファンドと、一般的に定義されています。

アクティブファンドは、市場が見逃している投資機会を発掘することで、ベンチマークを上回る収益獲得を目指します。その代表的な手法・アプローチとしてトップダウンアプローチとボトムアップアプローチが挙げられます。

トップダウンアプローチは、景気変動や財政・金融政策、GDPや家計の動向などマクロ的な投資環境の分析・予測に基づいて、まず国・地域やセクターなどの資産配分を決定し、次に、各々の国・地域やセクター内での個別銘柄を決定する運用手法です。

一方、ボトムアップアプローチは、個別企業の将来の成長性や財務内容などファンダメンタルズを調査・分析することにより銘柄の割高・割安などの投資価値を判断して銘柄を決定する運用手法です。
 
 
実際には、トップダウンアプローチまたはボトムアップアプローチのどちらかが採用されるというよりは、投資対象資産やベンチマークに対する超過収益獲得の着眼点などに応じて、どちらかを重視しつつもう一方の要素も組み合わせているケースが多いようです。

日本株投資の目利きを勉強するという観点からは、ボトムアップアプローチを重視するアクティブファンドの方が、個別銘柄の選定理由をより深く追究していると考えられます。
 
実際の保有銘柄を確認しよう
 
着目するファンドが決まったら、そのファンドの保有銘柄を確認してみましょう。保有銘柄は運用会社のHPに掲載されている運用報告書(全体版)で全銘柄が確認できるほか、多くの場合月次レポートにも主要銘柄が記載されています。

今回は、当社が設定・運用を行うファンド「MHAM新興成長株オープン(愛称:J-フロンティア)」を例に確認してみましょう。
 


運用報告書(全体版)では保有全銘柄が確認できます。また、「評価額」の欄から組入比率の大きい銘柄、「株数」の欄から当期に新規で組み入れた銘柄や買い増した銘柄なども分かります。



月次レポートでは一部の銘柄のみが掲載されている一方、毎月作成されるため、運用報告書と比較して情報が新しいことが特徴です。また、ファンドによっては上記のように銘柄の概要が掲載されていることもあります。
 
投資理由を考えてみよう
 
前述したとおり、アクティブファンドは市場が見逃している投資機会を発掘することで、ベンチマークを上回る収益獲得を目指します。このため、保有銘柄全てについて、ファンドマネジャーがベンチマークを上回る収益獲得が期待できると判断する理由が必ず存在すると言えます。

例えば、J-フロンティアの月次レポートによると2023年7月末時点の組入比率1位の銘柄はジャパンマテリアルという半導体・液晶関連工場向けのインフラ事業を展開する企業です。概要欄には同社の特徴や強みの他、投資理由についても触れられています。

この情報をもとに、半導体・液晶関連市場の成長性や業界内における同社の優位性を自分なりに調べることで、ファンドマネジャーの視点に近付けるようになるでしょう。

このように、ファンドの保有銘柄の特徴を知り、これらの投資理由を考えることで、ファンドマネジャーがどのような業界に将来性を感じ、その中でどのような企業に優位性を見出しているのかというプロの目利きの一側面を勉強することが可能です。

なお、月次レポートに銘柄概要が掲載されていない場合は自分で調べる必要があります。直接企業のホームページからリサーチするのが確実ですが、簡単な概要であれば、「Yahoo!ファイナンス」や「株探」、「みんかぶ」といった一般的な株式情報サイトや、「REUTERS」や「Bloomberg」、「QUICK Money World」といった金融情報ベンダーのサイトからも確認できます。

保有銘柄の確認は自分に合ったファンド選びにもつながる

ファンドマネジャーが選んだ銘柄が実際に必ず上昇するとは限りません。また、アクティブファンドはファンドそれぞれの運用哲学やファンドマネジャーのスキル・経験の下で銘柄が選別されており、保有銘柄もそれぞれ異なります。ここにアクティブファンドの運用成績に優劣が生まれる大きな要因があります。

運用成績が良いファンドを探すことは、大きく上昇する銘柄を探すことと同じくらい難しいことです。しかし、ファンドの特色を比較することに加え、保有銘柄を確認し、納得感のある銘柄に投資しているかどうかまで調べることで、少なくとも、より自分の考えに合ったファンドを選別することができるようになるでしょう。

保有銘柄の確認は、プロの目利きを勉強するだけでなく、自分に合ったファンド選びをする上での一つの判断材料として役立ちます。

実際にファンドを購入して学ぼう

これまでご紹介した方法は、実際にファンドを購入しなくても行うことが可能です。しかし、実際にファンドを購入し、ファンドを通じてその銘柄に投資することで、より自分事として銘柄について勉強することができるのではないでしょうか。自分事として勉強することは知識の吸収やスキルの獲得の速さを大きく高めることにつながると考えられます。

そして何より、ファンドを通じて株式投資をスタートすることができます。株式投資においては、企業の事業継続性や財務健全性などのリスク要因の分析も非常に重要ですが、これについてもファンドマネジャーは十分に考慮した上で銘柄を選択しています。ファンドを購入することでこうした株式投資に必要な分析をある程度ファンドマネジャーに任せて投資を開始できる。これが、10から株式投資を始めるための最も大切なポイントになるといえるでしょう。