為替レートは、歴史的な円安(=ドル高)の水準となっています。高度成長期は1ドルが360円だったので、それと比較して「いまは円高だ」と考える人もいるでしょうが、日米の物価上昇率が違うので、日本企業が米国向けに輸出する際の難易度は、いまの方がはるかに易しいのです。

 

輸出が容易なら輸出が増え、輸出企業が持ち帰ったドルを売るので「ドル安円高」になるはずだ…と考える人もいると思いますが、最近の輸出企業は「輸出をするより、海外の売れるところで生産する」という志向が強いので、円安でも輸出があまり増えないのです。そのあたりのことについては、拙稿『円相場の歴史的な安値、日銀発表「実質実効為替レート」でも明瞭に…円安の理由と今後の展望』をご参照下さい。

 

円安で輸出企業がドルを高く売れる分は、株主への配当や銀行への借金返済に使われ、従業員の賃上げにはあまり使われないので、景気を押し上げる力は大きくありません。

 

一方で、輸入企業がドルを高く買わされた分は、消費者などに転嫁されますから、消費者の懐が寂しくなり、飲みに行く回数が減ります。読者のなかにも電気料金等が値上がりしたので飲み会参加を減らした…という人も多いでしょう。

 

差し引きすると、貿易数量面では景気に若干プラス、価格面では景気に若干マイナス、ということで、差し引きした景気への影響はプラスマイナス0程度ではないか、と筆者は考えています。