死んだ比喩と生きた比喩 | 東京大学村上文緒愛好会

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一つ一つの言葉にこめられた作者の思いがわかったとき、古典は本当に面白いと思った。古典を楽しみたい。その思いが古い言葉の意味を求めるきっかけにもなった。

抽象的な文で比喩がどのように使われているか、さらに文例を使って考えてみよう。

その論文には内容がない。意味を取り出すことができなかった難解な文章がたくさんあった。また、中心的な理論は穴だらけである。第三章は中身を入れ替える必要があるだろう。最後の章には、論文の主題から外れたことが書いてある。したがって、本論文は修正可能な許容範囲内ではない。

この文は「理論」に関する文章てある。ここには多くの容器の比喩がある。

「論文には内容がない」
「意味を取り出す」
「穴だらけてある」
「中身を入れ替える」
「主題から外れたこと」
「修正可能な許容範囲内ではない」

理論は、容器の比喩で語られるが、もちろん、その他の比喩でも語られる。以下に例を示す。

「その基礎理論は間違っている」の「基礎」:建築の比喩
「その理論には柱になる仮説がない」の「柱」:建築の比喩
「その理論を育てる」の「育てる」:教育の比喩
「革新的な新理論が学会を襲った」の「襲った」:擬人の比喩

したがって、理論は、容器の比喩、建築の比喩、教育の比喩、擬人の比喩等で語られる。
頻繁に使われる比喩は、それが比喩であるかどうかに気づかないので、いわば死んだ比喩である。「その理論は中身がない」はその例である。あまり使われない比喩は、それが比喩であると気づくので、いわば生きた比喩である。「その理論はくさい臭いがする」はその例である。
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