みなさん、台風19号の備えは万全ですか??

 

先日千葉や東京の島嶼部に甚大な被害をもたらした台風15号では、停電が大きな問題になりました。

倒木などで電柱がなぎ倒されたり、電線が切れたこと、その復旧に時間がかかったことで、停電は長期間におよびました。

一方で、無電柱化されていた住宅地で、停電の被害が全くなかったことで、にわかに「無電柱化」に注目が集まっています。

 

10/8(火)、都民ファーストの会東京都議団の勉強会に、無電柱化の第一人者である、松原隆一郎放送大学教授・東京大学名誉教授をお招きしました。


←松原教授(前列左より3人目)と都民ファーストの会の都議

こんなに電柱が立っているのは、世界でも日本だけ!!

まず驚いたのが、ロンドン、パリ、ベルリン、など欧州主要都市は戦前より電柱は地中化が標準であること。

アジアの都市でも、90年代に急激に地中化したシンガポールをはじめ、遅れていた都市でも 台北95% ソウル49% マニラ 40%と進みつつある中、

日本だけが東京23区で8%、大阪市で2%とほとんど進んでいないということでした。

 

どう見ても、これはちょっと異質。

なぜ進まないのか??を考察してみます。

 

まず、一言で「電柱」と言っても、電力を送電するものと、NTTなどが設置する「通信」のためのもの2種類に大別されます。

台風15号時の千葉の停電被害では、電柱の所有権がそれぞれの設置者(電力会社や通信会社)にあり、たとえ復旧のためと言っても自衛隊などが勝手に処理できなかったために停電が長く続いてしまいました。

 

無電柱化が進まないのには、主に4つの理由があります。

1つめは、費用の問題

電柱を立てて電線を引くのに 1Kmあたり1500万円

一方で地下に埋めるのには1Kmあたり 1.65億円と言われています。 

その差約10倍!!

(ただ、後で述べますが、技術開発で地中化のコストは随分削減されてきています。)

 

2つめは、仕組みの問題

電力会社の発送電独占。

 東京電力などの電力会社が「送電」のための 電線の敷設も行なっている ため、「電柱を立てる子会社」を所有。

地中化する方向に舵が切られないとのこと。電力自由化で議論している「発送電分離(発電と送電をする会社を分ける)」が行われれば、ここのハードルが1つ取り払われる可能性が出てきます。

 

3つめは、権限の問題

今は、地下に埋める場合「電線共同溝方式」と言う方法論が取られることが多くその場合、関係者の利害調整・意見調整をしないと埋めることができません。

この面倒な作業を、電力会社がお金も余分にかかるのに、積極的に実施することはありませんよね。

一方で、電柱の建設にあたり、事業者は許可を受けなければなりませんが、基準に適合したら道路管理者(行政)は許可しなければならないので基本「自由に建て放題」。要件を満たせばいくらでも電柱を立てることができるのです。

そのためか?かどうか、日本では毎年7万本も新設 😥されています。

 

4つめは、社会的理解の問題

技術革新で費用が2割程安くなってきているとはいえ、地中化するには費用がかかります。この費用をどう捻出するか?

一つは「迷惑料」として電柱の敷設をする者に「税金」として課す案。(環境破壊や薬害、アスベスト禍など社会に迷惑をかけた主体に税を課す”ピグー税”の考え方です。)

「電気代」として私たち一人一人に負担となることも可能性としてあります。

新たな税金を課すにも、一人一人が電気代で負担するにも、社会としての「理解」が進まななければなりません。

 

無電柱化のメリットはかなり大きい!

 

無電柱化のメリットとしては、以下の3点が上げられます。

 

メリット① 台風などの災害時に倒れたり切れたりしないので、停電被害を抑制できる。

メリット② 倒れたりすることがないので、消防車や自衛隊車などの緊急車両を遮ることがなく、災害復旧に役立つ。

メリット③ 景観がよくなるので、観光振興に役立つ。

 

無電柱化を国会議員時代から重点政策としている小池都知事は、阪神淡路大震災で、倒壊した家屋の下敷きになった人を救いたくても、倒れた電柱が邪魔になっていた様子や、消防車の消化活動の妨げになっていたのを見て、「無電柱化を進めならければ!」と決意したそうです。

 

 ❇︎ 出典:NPO法人電線のない街づくりネットワークHP

 

無電柱化は、災害時の備えとしての意味に加え、訪日観光客などで湧く日本のブランド力UPにも役立ちます。

電線・電柱のない綺麗な空のある街並みは多くの来訪者を喜ばす事でしょう。

 

無電柱化のコストは2割減!!

 

先日のテレビ東京ワールドビジネスサテライトでも放送されていましたが、無電柱化=電線類を地下に埋設する技術は、配線をまとめるボックスが小型化し、より浅い所に埋める技術が確立したため、以前に比べて約2割も安くなっているそうです。

 

東京23区の無電柱化率8%は、ほとんど「都道」です。東京都が無電柱化を積極的に進めているからですが、都内の道はほとんどが区道や市道であり、区役所・市役所の強い意志とタイミングも必要となります。

 

なかなか道は険しいと思いますが、過去に経験のない台風の到来を待ちながら、どうすれば”無電柱化”が進むのか?つらつらと考えています。

 

PS:NPO法人電線のない街づくりネットワーク の記事「無電柱化とは」がより詳細を知るのに参考になりますので、リンクを貼っておきます。

https://nponpc.net/whatisnonpole/