11月になり、ハロウィンはもう終わってしまいましたが、韓国の梨泰院(イテウォン)で起きた雑踏事故から1年が経ちました。その当時、韓国ではコロナによる規制が3年ぶりに解除され、ハロウィンを楽しむ若者が大勢集まっていたそうです。また、イテウォンは韓国の人気ドラマの舞台にもなったことから、「聖地巡礼」目的で訪れる人も多かったのでしょう。

 事故当時、イテウォンには10万人近い人が訪れ、その中で群衆雪崩が発生。160人近くが犠牲となってしまいました。


 この事故を受けて、ハロウィンの時期に多くの人が集まる渋谷では「ハロウィン目的で渋谷に来ないで」と大々的にメッセージを出すほどでした。イテウォンの事故以前にもトラック横転などの問題行為が多発していたため、当然の結果です。

 「群衆雪崩」「雑踏事故」というと、大規模なイベントや人が沢山集まる観光地で起こるものというイメージがあるかもしれませんが、そのリスクは身近なところに潜んでいるものなのだと思いました。私が一番に思い浮かべるリスクは「災害時」です。



 イテウォンで起きた群衆雪崩のことを聞いて、真っ先に思い浮かべたのは「石巻市立大川小学校」の事案でした。東日本大震災の津波で大きな被害を受け、学校管理下にありながらも、全校児童108人中70人が犠牲になり、児童4人が今も行方不明になっています。教職員も11人中10人が犠牲となりました。学校側の避難誘導と事後対応を巡って、亡くなった児童のご遺族が裁判を起こしたのは皆さんもご存知かと思います。


 裁判で争点になったのは、「学校近くの裏山に子ども達を避難させていれば、子ども達は死なずに済んだ」ということでした。しかし、学校近くの裏山への避難を即断できなかったのは、降雪で足場が悪くなっていることと、余震が頻発していたためでした。そんな状況で100人以上の児童と教職員、地域住民が一斉に避難するというのも「リスク」があります。その中で誰かひとりが転んでしまい、将棋倒しになってしまったら二次被害・三時被害の可能性もあります。イテウォンの事故と比べるにはあまりにも規模が違い過ぎるものですが、「将棋倒し」という言葉を聞いて、イテウォンでの事故を思い出さずにはいられませんでした。


 あとは都心部での帰宅困難者の一斉移動でしょうか。東日本大震災では都心部で多くの帰宅困難者が発生し、人であふれかえる駅や道路がニュースで報道されていました。実は2019年12月にNHKのニュースサイトで特集されており、イテウォンの事故が起きるずっと前から懸念されていたのです。

https://www3.nhk.or.jp/news/special/saigai/select-news/20191202_02.html 



 災害時なんてみんな気が動転していますし、どんな行動を取ったら良いのかはその時にならないと分かりません。何もかもを破壊してしまう自然災害から助かる手段は「逃げる」ことしかありませんが、逃げる「タイミング」や「場所」によっては別のリスクもあるのだと感じました。

 もう一度言いますが、「群衆雪崩」や「雑踏事故」は、大規模イベントや人が沢山集まる観光地だけで起こるものではありません。身近なところにそのリスクが潜んでいることを常に考えていく必要があります。