「秘密の花園」の書評、更新が遅くなってスミマセン!それでは第2部の書評を書いていきます。

 

※前回の記事はコチラ。

(1)~インドとイギリスの文化の違い~

 

 

 

 メアリがやってきた「ミセルスウェイト邸」には沢山の謎が隠されており、その中に「鍵がかかったまま、10年も閉ざされている庭」がありました。メアリが庭を散歩しているときに、偶然、「閉ざされた庭」への扉を見つけたのです。その庭の鍵は地中に埋められていました。メアリは「閉ざされた庭」のことを「秘密の花園」と呼び、ディコン(マーサの弟)と動植物の世話をするようになります。

 

 そして、「謎」はまだまだ沢山あるのでした。廊下に響く泣き声のことです。泣き声のことをメイドのマーサに尋ねても、はぐらかされてしまうだけでした。しかし、居ても立っても居られないメアリは、自分で「泣き声」の正体を探りに出かけるのでした。

 メアリがたどり着いたのはお邸の一室で、そこにはメアリと同い年の少年・コリンがいました。彼は病弱で、ほぼ寝たきりの生活を送っていました。また、コリンはミスタ・クレイヴンの息子で、メアリとはいとこ同士にあたります。(ミスタ・クレイヴンはメアリの母方の伯父なのです)

 

 「泣き声」の正体を突き止めたメアリは、マーサにコリンのことを話します。メアリからコリンのことを聞いたマーサは大変驚き、「ミセス・メドロックに怒られちまう!」と言うほどでした。コリンのことを話すのはミセルスウェイト邸ではタブーとされていたのです。

 

 その後もメアリはコリンに会いに行くことを続けますが、コリンとの交流を重ねた上で色々なことが分かってきました。

 コリンが産まれたあとに母親(ミスタ・クレイヴンの妻)が亡くなってしまい、父親から見向きもされなくなってしまったこと。父親と同様、せむし(背骨が曲がって弓なりになってしまう病気)になってしまうだろうと思われ、「長くは生きられないだろう」と聞かされて育ってきたこと。コリン自身も「ぼくはそう長くは生きられないだろう」と話すほどでした。

 

 メアリはなぜコリンが「もうすぐ自分が死ぬ」と簡単に話せるのか、不思議でなりませんでした。「秘密の花園」でディコンと動植物の世話をしていたメアリは「ディコンはいつも生き物の話をしている。死んだものや病気のものの話は絶対にしない」と言いました。

 

 そして、「ねえ、こうしよう。死ぬ話はやめよう。私、あまり好きじゃないの。生き物の話をしよう」とコリンに言います。

 畔柳和代さんの翻訳は上記のとおりですが、私は野沢佳織さんの「死ぬことよりも、生きることを考えましょうよ!」という訳が好きです。(決して畔柳さんの翻訳を否定するものではありませんよ)

 

 このセリフを読んで考えたのが、24時間テレビや闘病もののドラマなど「感動系・お涙頂戴もの」の番組の存在です。闘病の末に亡くなられた人や、障害を持つ人を否定することはしませんが、もっと「生きている人」にスポットを当てて欲しいと強く思います。

 

 私と交流しているブロガーさんで、ある病気と闘っている方がいらっしゃるのですが、「治ったらいけないの?」と問題提起していたことがあります。

 そのブロガーさんの記事によると、子宮がんで闘病していたアイドルの女性は、治療中はテレビや新聞の取材が沢山来ていたそうですが、寛解してからはパタリと途絶えてしまったそうです。「寛解して良かったね!」の一言すらなかったのかと思うと、やりきれません。

 また、アメブロの闘病ブログランキングで、「亡くなってから上位入賞」という流れにも疑問を抱いてきました。闘病していたブロガーさんや、そのご家族の方が亡くなって、お悔やみのコメントを残すためにアクセスが増え、上位入賞となるのでしょうが、どうしても腑に落ちません。考えてみれば「治りました!」という内容で上位入賞という話を聞いたことがありません。

 

 私が闘病もののブログやドキュメンタリーを見ていて「良かった」と思えるものが2つだけあります。

 1つ目は、あるブロガーさんの記事を読んで知ったことですが、若年性乳がんで闘病していた20代の女性が、結婚し、出産したこと。女性が闘病していた当時は、乳がんの患者さんが結婚して出産するというのは前例がなかったそうです。化学療法の前に卵子凍結も行ったそうですが、自然妊娠だったそうで、本当に良かったなぁと思いました。

 2つ目は、世界仰天ニュースで取り上げられていた、小児卵巣がんと闘っていた小学生の女の子の話。腫瘍が予想していたよりも遥かに大きく、当初は子宮も含めて丸ごと摘出する予定だったそうです。しかし、主治医は女の子の「将来」を考えて、子宮の全摘出は行わず、術前化学療法を行い、腫瘍を小さくしてから摘出手術を行ったそうです。女の子が治療を受けていた1990年代前半では、術前化学療法は当時最先端の治療だったそうです。

 女の子は病気が再発することなく成人し、結婚。さらに子宮と卵巣を残せたおかげで、なんと、二人の子どもを自然妊娠で授かりました。「希望」に繋がる話を聞けて本当に良かったです。

 

 もしメアリとディコン、コリンを実体化できたとしたら、今の世の中に向かって「死ぬことよりも、生きることを考えましょうよ!」と強く言って欲しいですね!新型コロナの渦中にどれだけ効くでしょうか(笑)

 

 最後の一編で完結にしますm(__)m