中学生の頃、軽いアトピー性皮膚炎だった私にとって、

医者から処方されるステロイドはすごく身近な存在であり、

『最強の美容薬』でした。

肌に何か異常がでればすぐに皮膚科でステロイドをもらい、

ツルツルの肌に大満足。

さらに乾燥肌・敏感肌の私はニキビとは無縁でしたが、

いつもたっぷりの保湿やリップクリームが欠かせませんでした。

色白でトラブルのない透き通った肌は、みんなからいつも羨ましがられていて、

私の自慢の肌でした。




そんな私が自分の肌をコントロールできなくなったのは、

20歳を過ぎた頃。

今考えるとそれまでの生活習慣はとてもひどいものでした・・・



私は20歳で社会に出てから、3年間で2つの職業を体験しました。

美容師の頃は朝から晩までひたすら働き、

10分しか休憩がもらえないことも多々ありました。

ご飯をまる飲みし、また笑顔で店頭へ出動!!

お客様とは、おばちゃんの井戸端会議のような話を長々としゃべり続け盛り上げる。

店のやり方が気に食わず、反抗したいが修行の身・・・

友達と遊んでストレス発散してから夜中に帰り、お菓子を食べてから就寝。

心身共に疲れがたまっていき、気がつけば手荒れがどんどん悪化。

指先からひじまで、ビッシリ膿がたまってしまいました。

あまりのかゆさにお客様のお話も上の空。

友達と遊んでいても手に全神経が集中してしまい、心から楽しめません。

何か触れるだけでも膿がつぶれ体液があふれ出し、

夜は泣きながらベッドで手をかきむしりました。


『お客様ばかりキレイにして、私はどんどん汚くなっていく・・・』

『このまま美容師を続けたら、化学薬品に汚染される・・・』


怖くなった私は、美容師を辞めてしまいました。





1ヶ月ほどニートになり手荒れもだいぶよくなった頃に、

地元でもオシャレで有名な服屋で働き始めました。

毎日がばら色でした。

自分にお金をかけ、仕事をしながらショッピングができ、

お店のオシャレな雰囲気に酔いしれる。

ショップスタッフになった私は

美容師の頃自分にあまり時間をかけることができなかったことへのギャップから、

服を買いまくり自分を飾ることに必死でした。


『オシャレ命!!』


給料日前にはお財布はすっからかんでした。

接客業が好きと言っても、

ショップスタッフはお客様からあまり必要とされてないこともたくさんあります。

もちろん私のことを必要としてくれるかたも沢山いましたし、

帰り際に『ありがとう。またお願いね。』

とお言葉を頂くときは、嬉しくてたまりませんでした。

ですが、にらまれシカトされることも少なくありません・・・

人と接する小さなストレスがどんどん溜まっていき、

1日で1~2袋のお菓子をペロリと食べていました。

夜の11時まで働き、

それから友達や彼氏と外食をしたり朝方まで遊ぶのが当たり前。

体からの小さなSOSにさえ気付かず、

そんな生活を3ヶ月間毎日続けていました。




最初に症状が出始めたのは唇でした。

口角が切れるくらいで、

季節の変わり目だからかなーと思い、

リップクリームを1日に何回もぐるぐる塗り直していました。

徐々に唇が炎症していきかゆくてたまらなく、

体液も出始めていました。

ショックをうけた私は急いで皮膚科へ行き、

昔みたいにステロイドを塗り始めたところ、

3日で症状はキレイに治まりました。

しかし、ステロイドをやめた次の日には、

また炎症とかゆさが再発する。

夜はかゆくて中々眠ることができず、

朝起きると、唇や首には掻きむしってできた傷と、

血や体液がにじみ出ていました。

そして、いつしかステロイドをいつも持ち歩くようになっていき、

3時間に1回はステロイドを塗り直していました。

徐々にステロイドが効かなくなり、

病院を変えてはまたステロイドを処方され・・・

の繰り返し。


本でステロイドの怖さを何となく認識し始めていた私は、

お医者さんにステロイドを使わない治療をお願いしていましたが、

いつも言いくるめられていました。


『私はあなたの辛さを理解しているからこそステロイドを処方しているのですよ』

『治らなくてもいいなら、ステロイドじゃない薬を処方しますが、どちらがいいですか?』

『ステロイドでいっきに治してしまえばあとは大丈夫ですよ。
もしまた症状がでたら診せに来てください』


どこの病院に行ってもステロイドじゃなきゃ治らないと言われ、

病院を何回も変え、その度にステロイドを処方され、

仕方なく塗り続ける日々。


『そんなにステロイドが嫌なら、ステロイドの何が駄目なのか全部言ってみてください。』


とまで言われたこともあります。

何も言えない自分がすごく悔しかったのを覚えています。






思い返してみれば、私の問題は肌だけではありませんでした。

アトピーの肌を隠す為にステロイドを塗っていたように、

私は自分の心にも蓋をし続けていました。




両親からの愛情を超えた過剰な干渉。

兄との不仲。

私は家族の事があまり好きではありませんでした。

高校生の頃は何をやっても全く続かず、

中途半端なダメ人間でした。

辛いことがあれば、母が逃げ道を作ってくれるのです。

生きることに喜びを感じることができず、

心がモヤモヤしてどうしようもなく、

母の腕の中で号泣しながら叫び続けることもありました。

友達の輪の中にはいましたが、

そんな自分を隠すのに必死であまり心を開くことができませんでした。

自分が大嫌いなのに、人から愛されたくてたまらない。

家でも、学校でも自分の心の居場所が見つからず、

自分を必要とし、愛してくれる人をいつも求め、

満たされない思いでいっぱいでした。

彼氏の前でも、嫌われるのが怖くて

いつも出来る完璧な彼女を演じてしまい、

好きになってと求めてばかり。

お互い疲れて、さようなら。


自分と向き合うことからいつも逃げ続け、

自分という人間がこの世で1番分からないものになっていました。

本当の自分を見つめるのが怖くて、1人になるのが嫌。


仕事が終わればいつも誰かと遊び、

スケジュール帳は常に埋まっていないと不安でした。

今思うと、そんな自分に疲れはてた頃に

必ずアトピーになっていたような気がします。

そしていつもアトピーを理由に仕事をやめてしまう。

私にとってアトピーはいつも心と身体からのSOSのサインでした。

23歳にしてやっと気づけた私は


『もう自分のことから逃げたくない。変わるなら今しかない。』


そう心に決めることができました。





まず、私の越えなければいけない山はアトピーの完治でした。

ステロイドを処方されることから、

病院に行くのが怖くなっていた私は、


『薬には頼らずに、自分の力でアトピーを完治させる!!!』


そう決めた頃、ふと思い出したのが兄でした。

兄は幼い頃から私なんか比にならないぐらい重症のアトピーでした。

そんな兄は今ではツルツル肌と健康体で、

ステロイド・保湿・漢方薬とは一切無縁の生活を

楽しく過ごしているのです。

そんな兄にアトピーの治し方のアドバイスを受け、

本でもたくさん調べ、

自分なりにアトピーを治すある法則があることに気づきました。




もちろんそれを知るまでには、アトピーについてのたくさんの情報に、

何が正しいのかわからなくなり、試行錯誤の連続でした。

炎症がひどくなり、猛烈なかゆみに襲われ、

寝ることにさえ集中できない日々。

寝ている間にできた傷を見たくなくて、

鏡を見るのがとても怖かった。

初対面の人にはなおさら会いたくなくて、

友達を紹介されてもぎこちない笑顔で下を向いているのが精一杯でした。


『どうせ私の肌見てキタナッて思ってるんでしょ・・・本当は仲良くなりたいのに・・・』


ステロイド無しでボロボロになっていく自分を見られるのが嫌で、

人に会うのが怖くなり、仕事に行く前はよく泣いていました。

ストレスから友達や彼氏、家族にも冷たく当たってしまい、

『こんなの本当の自分じゃない。みんなゴメン・・・』

落ち込み、自分の治療方法に自信がなくなり、

何度もステロイドに手を伸ばしかけました。


『ステロイドさえあれば肌がキレイになって、みんなにも優しくできる』

『ずっとこんなボロボロな肌だと、彼氏にもフラれちゃう。ステロイドさえあればキレイな彼女でいられるのに。』

『本当に今のやり方で完治するの?一生続いたらどうしよう・・・』


そんな誘惑にも何度も耐え、家にあるステロイドは全部捨てました。


“自分と約束したから。変わりたかったから。”






アトピーになり、自分の弱さをとことん知ったからこそ、

変わろうと決心することができました。

今ではアトピーも完治し、赤ちゃんのようなつるつるの肌を手に入れ、

どこに行くにもステロイドや保湿剤、リップクリームが手放せなかった私が、

今では手ぶらで友達の家にお泊りへ行けちゃいます。

すぐに不調になる弱っちい体から大変身した、今の健康な体なら

美容師もへっちゃらでしょう。

ショップスタッフも笑顔で自信のある接客ができるでしょう。

もう一度チャレンジしてみてもいいかな・・・とも思いますが、

私はあえて戻りません。


“アトピーの人たちに勇気を与えられる存在になりたい”


それが私の目標になったからです。



自分のやりたいことを見つけ、楽しく一生懸命生きる毎日。

ちゃんと自分を見つめていく。

アトピーになったからこそ、自分を好きになれた。

それでこそ、その人の魅力に繋がると思う。

女の魅力は自分自身を隠して飾り付け、その場しのぎのように作りあげるものじゃない。

自分自身を活かしてこそ本当の魅力になる。

いつまでもキレイな女性であり続けたい。



今の自分の姿をみてもらうことで、

アトピーの女性に自分を変える勇気になってもらえたら嬉しいと思います。

健康的な体を手に入れることがどれだけ幸せか。

自分を偽ることなくさらけ出すことの気持ちよさ。

そんな人生の楽しさ。

私はアトピーを通して沢山のことを克服することができました。

今なら言い切れます。


『私の人生アトピーのおかげで最高に幸せだ』と。