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先日の、「ギター演奏で綴る『ポピュラー音楽の歴史と憲法』」という講義の講師である、志田陽子先生の著書、『表現者のための憲法入門』が届き、やっと読むことができました

大人気で重版がかかっており、時間がかかりました。

憲法は、立憲民主主義国家である日本の主権者である私たち国民にとって、大いに関係のあることではありながらも、気軽に語るにはわからないことが多いとか、専門性が高いというハードルを感じるとかいった感想をお持ちの方が多いのではと思います。

私も、大学時代少し学びましたが、憲法に限らず法律は、条文があるところまではいいのですが、その解釈が場合分けでずらーっとある(しかもそれには絶対的な正解は無く、立場によって議論されている。そして、時代や判例の積み重ねで変わりうる。)というところに頭がくらくらしてしまった記憶があります。笑。

しかし、この本は、「表現者」の視点から憲法全体を見る、という視点がとられており、当事者意識を持って、憲法をより身近に感じることが出来ました。

また、表現者が集まって作った「アートランド」という架空の国の例えが随所にみられることも、とても理解を助けてくれました。「100人の村」とはまた種類が違いますけれども、そのような思いきった縮図で描くことによって、世界情勢が対面している本質的な問いが、端的に表現されていました。特にp. 186-7はあるあるすぎる

トピックから、表現の自由v.s. 規制の問題や、多様性の尊重 v.s. 教育の機会均等や、暴走し始めた「カリスマ君」の統治から、天才ではない《普通の人々》による民主主義への切り替えの比喩等、身近に引き寄せて考えると思い当たる節がたくさんあると興奮を覚えました

例えば、表現の自由v.s. 規制の問題でしたら、「盗んだバイクで走り出す」歌詞は「犯罪を助長する」からダメ? は笑えます。著名な物語や歌詞から、「悪役」の言動をすべてポリティカルコレクト(差別や偏見が含まれない言葉)にしてみたいですね。笑。 もしくは、全て画面下に「※これはキャラクター個人の感想であり、作者の政治的立場を反映するものではありません。」って表示し続けるとか。笑。

多様性の尊重v.s.教育の機会均等ですが、確かに、義務教育の現場では、「こうあるべき」という模範が決まっていて、先生の個性はすべて「大人/教育者」という仮面のもとにあった気がします。強制されるべきではないという信念をもって国家を歌わないっていう先生もいなかったし、性的マイノリティーを公言している先生もいませんでした。でも、社会に出たら、どちらも存在するわけで。多様性を尊重する、という裏に、画一的で、マイノリティーの存在を教えない、という問題も潜んでいるのかなと思います。

暴走した「カリスマ君」がいなくなった話は、今、まさにタイムリーですよね。笑。私は、「天才」だったら、《普通の人々》にはできない専門性や頭のキレを持って、ちゃんと仕事をしているのなら、しょうがないのかなぁと諦めていた部分もありましたが、やはり人格も大切ですよね。《普通の人々》だからこそ起こりうるデメリットを上回る、真の公益性のある政治が期待されます。。。

最後に、この本では、今、憲法のフィールドで一番大きな話題である「集団的自衛権」についての解説がなされている点も、読むべき理由だと思います。

集団的自衛権と、「震災の時に自衛隊いてくれてありがとう」という問題は、安易に混同されるべきではない、という指摘がなされていましたが、本当におっしゃる通りだと思います。

自衛官募集のコマーシャルにタレントを起用し、ポップに仕立て上げられた動画をみた若者たちから、その先にどんな覚悟が必要でどんな危険性がある選択なのかを熟考する機会を奪っているのではないでしょうか。感情に訴えかけて、恣意的に誘導する。プロパガンダに通じる怖さがあります。

18歳から投票できるようになって、安易な「いいね!」の感覚で投票しないでほしいと危惧しているのは私だけではないはず。。。政治は人気投票のようであってそうではありません

あ、お説教みたいになってしまいましたね(笑)

とにかく、自由と公共の福祉の中庸って、考えれば考えるほど深いです。

p.155の電動のこぎりの対案、私の法律のセンスがないのか(笑)難しくてわかりません笑 どなたか一緒に考えてください

学校を卒業してから、いちばん、憲法についてじっくり考えた有益な時間でした。



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