第24回 iPS予算削減に向けた和泉補佐官の強力な根回し

 

iPS予算削減の企みが進行していた昨年の11月18日、和泉補佐官が健康・医療戦略担当の竹本大臣に説明した際のメモが存在する。

 

――ここから――

・自分(補佐官)と大坪次長で京都まで話し合いに行き、その場で合意した中身なのに後からひっくり返して不平・不満を言っている。そのときは、ストック事業は今後寄付金でまかなうとも言っていた。京大に入る間接経費が減るので、中から突き上げられたのだろう

・端的に言えば、京大に入る額は変えない。ストック事業分8.9憶円の減額分については、経産省からAMEDを通じて6億円(京大に)入れ、実用化に向けた技術開発などをしてもらう。これで総額は変更ない。

・いずれにしても自分(補佐官)としては納得していないが、山中先生がいろんなところで吹聴しており、これを収めなければならないので、「大人の対応」をすることとする。当初はもっと素直な人と思っていたが見込み違いだった。

・同級生ということもあり、山中先生は世耕先生(注:元経産大臣)にも話しているようだが、世耕先生にはこの「落としどころ」を事前に説明して了解してもらっている。世耕先生からも「これで手打ちにしろ」と近々連絡が入るはずだ。

・また、(山中先生は)明日は萩生田大臣にも会うと聞いているが、今日、自分(補佐官)が直接大臣に説明し、了解を得ている。明日はこの「落としどころ」を山中さんに突き付けるはず。

・山中先生は、いろんなところで、特定の官僚によって、という話をしているが、あくまでも合意した話だし、非常に当惑している。

――ここまで――

 

11月18日が重要なタイミングであることは「第2回 同伴と異例の抜擢人事」でも詳しく書いたとおりである。

11月11日、山中教授が日本記者クラブで記者会見し、一方的な予算削減はおかしいと声を上げた。日経新聞が同日付でこれを報じたほか、後追い記事が続々と出た。

日経新聞 iPS備蓄事業、予算減額案 山中伸弥氏「非常に厳しい」(11月17日付)

朝日新聞 京大iPS細胞備蓄事業、国支援打ち切りか 年10億円(11月19日付)

 

こうした裏で、8月9日の「恫喝」に端を発したiPS予算削減の企みは、用意周到に外堀が埋められ、和泉補佐官の強力な根回しでほぼ仕上げを迎えようとしていたのだ。

 

山中先生の「不透明な意思決定プロセス」に異議あり、と上げた声を抑え込もうとした、この企みは、「もう少し勉強したい」と了解しなかった竹本大臣の判断で完結することはなかった。

翌11月19日の閣議後会見で竹本大臣は「一旦約束したことは守るというのが政府の方針だ」と述べたのだ。さらに11月27日の衆議院科学技術イノベーション推進特別委員会でも同様の答弁をした。和泉補佐官が主導した企みは潰えた。

 

「不透明な意思決定プロセス」は明らかになった。正すことはできるか。

 

 

 

日本の医療研究開発が歪められている。