今でこそ河童は空想の動物であると断じられているが、江戸の末期
まで日本人は河童の実在を信じて疑ってはいなかったのである。全
国各地で河童が捕獲され、スケッチされている。米の相場とか飢饉
の被害のように生活に直接響くような情報はともかく、一般的には
互いの情報を簡単には交換できなかった時代に、なぜか河童につい
てはほぼ均一のデータが行き渡っている。

水に暮らし、甲羅に頭の皿、そして水かきを持った手。呼び方こそ
異なっていても、話を聞けばすぐに河童のことだと分かる。非常に
不思議なことである。

誰かが広めた話であれば、呼び名は全国共通のもになるはずであろ
う。河童は地方によって様々に呼ばれていて、二百近くにもなると
言う。このことから、もしかすると河童は実在した動物の可能性が
あると考える。

第一、空想の動物だと断じて河童の地位を貶めたのは誰なのか?

よくわからないのだが、明治の中頃に化け物や幽霊はすべて迷信や
神経によの作用によると誤認だとの説が流布したことがあり、恐ら
くそのときに河童も迷信として退けられてしまったものだろう。大
した検証もなされずに河童は空想の動物の仲間に入れられてしまっ
たのだ。

きっと、自分の見たもの以外は信じない人間があっさりと決め付け
てしまったに違いない。それが現在にまで引き継がれている。

河童なんて有り得ない、と笑う人が大半だろうが、それほどに荒唐
無稽な生物だろうか、と逆に問いたい。

人間の言葉を理解したり、薬の調合に長けているなどと言った特殊
能力を除けば、存在しても特別に不思議ではない生物であろう。

甲羅を持つ水生動物は多いし、人間に似ていると言うなら類人猿が
たくさん居る。口から火を噴き出したり、怪獣のごとく巨大化する
わけでもない。世界にはもっと奇妙な動物がいくらも存在する。

河童を宇宙人だとする映画が作られて話題となった。だが、ことさ
ら宇宙人説を持ち出さなくても、そんなに珍しい生物ではなさそう
に思える。

日本だけに棲息しているのは変だ、と反論する人もいるだろう。こ
の点に関しても河童は日本の専売特許ではない。アメリカやカナダ
にはドーバー・デーモンと呼ばれる人間の子供にそっくりな両生類
の目撃例が頻発しているという報告があるし、ヨーロッパではリト
ル・グリーンマンの伝説が広がっている。リトル・グリーンマンの
名称はまさに河童そのもののイメージだ。中国では水虎として古く
から知られている。

さしたる根拠もなしに我々は河童の存在を頭から否定してはいない
だろうか?常識に惑わされてはいけない。常識とは、単に学んだこ
とでしかないからである。



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