背骨つなぐ靭帯『骨化』が原因?

 

背骨をつなぐ靭帯が骨のように硬くなると、中枢神経の脊髄を圧迫する。

手足などにしびれが出て、やがて歩きにくくなる。

プロ野球・楽天の星野仙一監督が平成26年5月に診断された「黄色靭帯骨化症」もその一種だ。

手術である程度の改善が見込めるが、異変を感じたら早めに対処したい。

 

 脊髄は脳と体の各部分との間の情報の伝達経路で、神経の束でできている。

背骨の真ん中にある空間に保護されるようにして存在している。

縦に並ぶ骨は靭帯で補強されており、背骨の前側の錐体と呼ぶ部分には「後縦靭帯」が、後ろ側の椎弓には「黄色靭帯」が存在し、適度な骨の動きと安定性をもたらしている。

しかし何らかの原因で、これらの靭帯が分厚くなり骨のように硬くなってしまうことがある。

骨化という現象で、脊髄が圧迫される。

 

 発症の仕組み不明

 

 東京都内に住む50代女性のAさんは突然、足がしびれて歩きづらくなった。

近くの整形外科を受診してレントゲン撮影し、背骨と背骨の間が狭くなる「脊椎管狭窄症」との診断を受けた。

しばらく治療を続けたが、症状が悪化したため、東京医科歯科大学を紹介された。

コンピューター断層撮影装置(CT)で検査すると、黄色靭帯が骨化していた。

 

 Aさんを診察した同大整形外科の大川淳教授は「靭帯の骨化はレントゲン写真を見ただけでは見つけにくい」と話す。

足のしびれや歩きにくいといった症状は脊柱管狭窄症に似ており、専門の医師でないと見分けがつきにくいという。

大学病院などでCTやMRIを使い、靭帯が骨化し脊髄を圧迫する様子を捉えられれば、診断がつきやすい。

後縦靭帯と黄色靭帯に起こる骨化症は、ともに国の難病に指定されている。

手術費用などで支援を受けた患者は2021年度で、後縦靭帯が約3万人、黄色靭帯が約2千人だった。

 

 靭帯骨化症ではしびれやつっぱり感、痛みが出て、歩行困難などにつながる。

例えば首に近い場所で起こると、腕のしびれが現れ、箸がうまく使えなくなったり、ボタン掛けができなくなったりする。

背中や腰で起こると、下半身に症状が広がるケースが多い。進行すると力が入らなくなって歩けなくなるほか、頻尿などの排尿障害などが起こる場合もある。

このほか、まれに食道を圧迫して、飲み込みにくさなどを感じる「前縦靭帯骨化症」もある。

 

 これらの病気の発症の仕組みはよくわかっていない。

厚生労働省の研究班が、別の検査で撮った300人分のCT画像を調べたところ、3割以上から黄色靭帯の骨化が見つかった。

ただ、骨化が見つかった人が必ずしびれなどの症状を訴えるわけではないという。

 

 家族内の発症が多いため遺伝子の関連が疑われている。

研究班は患者1000人のゲノム(全遺伝情報)を解析し、首にできる後縦靭帯骨化症の原因となる遺伝子候補を6個見つけた。

今後、発症との関係を本格的に調べる。

 

 また、患部での力のかかり具合やホルモンなどが関連しているとの見方もある。

プロ野球では星野監督以外でも20〜30代の選手が発症しており「体を酷使することが発症に関わっている可能性もある」と慶応義塾大学の松本守雄准教授は話す。

糖尿病との関連も指摘されている。

 

 激しい動きはNG

骨化は数年〜10年ほどかけてゆっくり進む。

神経は圧迫されるが、環境変化に順応しようとするため、しばらくは症状が出てこない。

大川教授は「神経がぎりぎりまで順応した後、限界を超えて症状が出始め、一気に悪くなる」と指摘する。

しびれが出るのは50代以上が多く、症状を訴えてから1〜2年で歩けなくなるまでに進行する人も多い。

病気が判明したら激しい動きなどはしないで静かに過ごすのが基本だ。

転倒したり尻もちをついたりした際、骨化した靭帯によって脊髄が傷つき、症状が一気に悪化することもあるからだ。

この場合、『治療しても回復しにくい』」という。(松本准教授)

 

 発症を予防する手立てや進行を遅らせる薬などは今のところない。

このため治療は骨化した靭帯を手術で削り、神経の通り道を広げる入院期間は通常、半月〜1ヶ月ほどだ。神経は回復しにくいため、症状が軽いうちに手術をするのが望ましい。

進行した後では手術の効果も限られ、つえをつかなくても歩ける程度まで回復するものの、しびれが残る例が多いという。

 

 執刀するのは整形外科や脳外科の医師だ。

受診する病院を選ぶ際は日本脊椎脊髄病学会のホームページなどが参考になる。

 

 手術をする場合でも、歩行に支障を来さないよう、無理のない範囲で体を動かすことが大切だ。

ほとんど動かさずにいると、足の筋肉などが衰え、リハビリに時間がかかる。

トレーニング法は日常生活で転倒しやすくなるロコもティブシンドローム(運動器症候群)を予防するための「ロコトレ」などが参考になる。

 

 日本整形外科学会などが公開している。

ただし、片足立ちなど不安定な姿勢をとるトレーニングは避けた方がよいという。

 

 

岩井淳哉