本Logの記念すべき10冊目は、大好きな原田マハさんの《キネマの神様》をご紹介いたします。



『映画のエンドロールは最後まで見るのが、製作者に対する礼儀』
これを、わたしに教えてくれたのは、父です。

仕事が忙しくて、なかなか家にいなかった父。
厳しいことを言われた記憶もあまりないし(日々怒るのは母の役目!笑)、
わたしのやることには口出しをしないでいてくれた。
「こうしなさい」「これをやりなさい」と、言われることはほとんどなかった気がします。
でも、この映画に対する教えだけは、幼い頃に言われたにも関わらず、ずっとわたしの中に残っている。

この教えを忠実に守ってきて、よかったことが3つあります。
1つ目は、映画中に大泣きしてしまったときに、涙が引くのを焦らなくていいこと。
2つ目は、たまに、エンドロール後におまけ映像があること。
そして、3つ目は、上映が終わったあとの余韻を味わえること。

素晴らしい作品に出会えたときほど、上映後は、なかなか元の世界に帰ってこられない。
作品の世界観に引きずり込まれたまま、出てこられなくなる。
(というか、出てきたくない、という方が正しいのかも)
エンドロールが終わってしまって、一瞬場内が真っ暗になり、照明がつく瞬間、
「まだ明るくならないで!」と、念じてしまうほどに。

だからこそ、なんの趣もなくパッと照明がついてしまうと、少々興ざめする。
逆に、申し訳無さそうに、ぼやっとゆっくり明るくなる映画館には、とても好感が持てる。
(映画館によって違うのか、それともその日その時そのシアタールームを担当するスタッフによるのか、わからないけど)
同じように感じてくださる方は、きっと、この《キネマの神様》の1ページ目を読んだだけで、
この本に出会えたことを、嬉しく思うはずです。

そして、エンドロールの後、少しの放心状態になりながら、涙を隠しながら、鼻をすすりながら、
帰り支度をするあの時間がなんとも言えず、好き。
同じ作品を観た周りのお客さんとの、一体感、みたいなものも。
そのまま映画館を出て、外の世界に触れた瞬間、「ぷはあ〜〜!」とそれまで止めていた息がこぼれる感じも。
(この、なんとも言えない余韻を、本の解説で、
片桐はいりさんがなんとも素敵に書いてくださっていて、嬉しかった)

この作品は、ギャンブル好きで借金まみれの映画好きな父親と、その娘、その家族や友人たちの話なのだが、
とりあえず、映画好きな登場人物ばかり。
映画が好きだというその純粋な気持ちが、様々な奇跡を起こしていく。
(いつだったか、父が、『オタクは素晴らしい。オタクは世界を救う』と言っていたのを思い出した)
(かくいう父も、正真正銘のオタクである)

そして、
『自分が好きな人の、一番好きな映画を、一緒に観る』
それって、簡単なようで、ちょっと難しい、でもすごく素敵で幸せなことだなあと、
この作品を読んで、思うのでした。
わたしも、いつか、父の一番好きな映画を一緒に観てあげようかな。
(父の映画の趣味は、わたしと全然違うのだけど!笑)
お父さん、もしこのブログ読んでたら、一緒に観たい映画考えておいてね!

もうひとつ、本Log11冊目は、
山田洋次監督が映画化した《キネマの神様》を、原作者である原田さんが小説にしたという、新しい試みの作品。
冒頭でも紹介されているが、映画版は、原作と大きく内容が異なる、全く別の作品。
原作の登場人物たちに、新たな命が吹き込まれていた。
大好きな原作ほど、実写映画化というのは、観るのに慎重になりますが、
このディレクターズ・カットのおかげで、夏の公開がとても楽しみになりました。
夏までに、この日本がどうなっているのか、わかりませんが、どうか映画館で観られますように。
エンドロールのあとの余韻に、浸れますように。

今日も、最後まで読んでくださってありがとうございました。
長くなってしまってごめんなさい!


 
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毎月1日には、全員同じテーマで投稿していきますので、お楽しみに〜!
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