鍵穴。 | ふみさんのなんだかんだ。

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毎日のなんだかんだを綴ります。
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美味しいお料理やお気に入りのお洋服などなども。
周りの人々も登場予定。
大切がたくさんつまったブログにしたいな。

あなたのかたちを私の鍵穴に嵌めてまわすと、私はどこにも行けなくなってしまいます。
骨のかたちを感じる指をやわらかく広げるとき、あなたはなんにも言わないから、私は爪を立てるのを躊躇います。
車の外はあかるいのにあなたの視線は昏い夜のように見えて、私はやさしい星屑がひからないか、その瞳をのぞきこんでしまいます。
あなたに触れられると私は身体のなかをぜんぶ取り出して、ひとつ残らずたたき壊してほしくなります。

やさしさもかなしみもいとしさもよくぼうも、体温も意味も理由も結果も、目がくらむほどのどうしようもない寂しさも、あなたに埋めてほしくてあなたでは埋められなくて誰かに埋めてほしくて誰にも埋められなくて、笑顔で手を振ってみせて、死にたいと思うこともあって、自分という人間は自分だけしかいないことに安堵して、また悲しく思って、なんでもない、私が思うのもあなたが思うのも誰かに思うのもあなたに思うのも、なんの理由もないただの名もない感情です。

愛と名づけるから期待するし、優しさだと信じるから失望するし、悲しみだと思うからいじらしいし、欲望だと理解するからやりきれないね。

早く鍵を抜いて出てってね。私の鍵穴はあなたじゃなくても嵌るから。