1. 引っ越しと奇妙なルール
フリーライターとして成功しない父親充と、母親を交通事故で亡くした娘・愛実が、敷金礼金ゼロの古いマンションに引っ越してくるところから物語が始まります。充は妻の死から立ち直れず、仕事も上手くいかず、お酒を昼間から飲む生活を送っています。それでも愛実を高校に通わせるためにパソコンで仕事をしています。
引っ越し当日、住民たちは温かく二人を迎え入れますが、愛実の名前が段ボールに書かれているのを見た途端に怯えます。しかし、愛実の名前が「愛実」であることを知ると、住民たちはほっとします。住民たちは荷物の運び込みを手伝いますが、何かを隠している様子が見受けられます。
その後、愛実はマンションの管理人である寿から、このマンションには深夜0時までに帰宅し、マンション内の岩と縄で作られた結界をくぐらなければならず、「愛」という名前を呼んではいけないという奇妙なルールがあることを聞かされます。
2. 不安と恐怖の始まり
愛実がマンションでの生活に不安を感じ、母親の写真に向かって涙を流しながら不満を述べます。その後、父親にお酒を買いに行くよう頼まれた愛実は、買い物に出かけた際に、マンションに自分と同じ年頃の若い女性を見かけますが、その女性はすぐに消えてしまいます。
愛実はその後、マンション内で幼い男の子と女の子に出会い、彼らが落としたアンティークのビスクドールを届けようとしますが、彼らはちょうど引っ越しの準備をしていました。後日、愛実は引っ越し先を調べ、その家族に会いに行きます。公園で元住人の滝沢涼子とその子ども達に出会い、マンションの恐怖について話を聞きます。
3. 滝沢一家の恐怖
涼子は、マンションの前の管理人から「前の住人が引っ越し、新しい住人が来ることで呪いから解放される」と言われたことや、彼らの長女の名前が「愛」であることが指摘されたことを話します。涼子一家も、子どもたちが体験した恐怖を愛実に伝えます。涼子夫妻は、長男が夜中に何かに引きずられるのを見て、引っ越すことを決めました。
ある日、涼子が娘の愛と長男が遊んでいると、長男が愛の首を絞める場面に遭遇します。涼子は「手が離れない!」と叫ぶ長男を助けようとしますが、どうしても離れず、最終的に涼子は包丁で長男の手を切断しようとしますが、なんとか二人の子どもは解放されます。愛は「二度と私の名前を呼ぶな」と言いながら倒れます。
引っ越しを決意した涼子は、公園のブランコに座る子どもたちに声をかけますが、子どもたちは手を繋いだまま反応しません。涼子は愛実に、「やっと普通に子どもたちの名前が呼べるようになった。この子たちはもう中学生なのよ」と言いますが、実際にはブランコに座っている子どもたちは引っ越した時と変わらず、小学校低学年生のままでした。
4. 高志との別れと恐怖の深まり
愛実が同じマンションに住む男の子、高志と親しくなります。高志との関係は愛実にとって精神的な安らぎとなり、彼に淡い恋心を抱きます。しかし、高志の父が大阪に転勤することが決まり、引っ越しの日がやってきます。愛実は高志に母からの御守りを託し、再会を誓って別れます。
引っ越しの途中、高志一家は喫茶店に立ち寄りますが、高志の母が怯え始めます。そこで、高志はセーラー服を着た少女の霊に襲われ、両親と共に不審な死を遂げてしまいます。この事件をラジオのニュースで知った愛実は号泣します。愛実の父親は幽霊マンションの噂をただの作り話だと軽視しますが、次々と住人たちが襲われていきます。
5. 恐怖の頂点と解放
元一流企業勤務の布袋夫妻は仕事が見つからず、餓死寸前の生活を送っていました。愛実は引っ越し前に、布袋夫妻がゴミ箱を漁る姿を見かけていました。結果、夫妻はお互いの腕を切り付けて傷口を食べ合うという恐ろしい方法で亡くなりました。
ホステスのアケミとその若い恋人ショウもマンションの異変に巻き込まれます。アケミが仕事から帰る際、タクシーの渋滞に巻き込まれ、逃げ出します。自転車で探しに来たショウと出会い、なんとか結界をくぐり抜けます。管理人の寿夫婦も軍隊の霊に襲われ、妻は危機一髪の状況に陥りますが、何とか助かります。
愛実の父親、充は幽霊マンションについて記事を書き、出版社に売り込もうとしますが、寿夫妻や他の生き残った住人たちに阻止され、襲われます。充と愛実は家じゅうの紙を燃やし、侵入してきた住人たちから逃げるため外に出ます。愛実は幽霊の正体を突き止めるため、先に逃げることを父に提案します。
6. 最後の対決と解放
愛実が女の子の霊を見た部屋に入ります。そこで、彼女が壁の中に閉じ込められて白骨化しているのを目撃し、胸を痛めます。愛実は無数の手に襲われ、住民たちに取り囲まれますが、「やめて・・・もう自由になりたい」と訴えると、その手は遠のいていきました。
愛実は電話で父親を呼び出し、結界の中に入れます。しかし、実際にはその結界は結界の外であり、充は何者かに襲われて命を落とします。愛実は「いい気味」と言いながら、向かいにいる同い年くらいの少女と向き合います。その少女がマンションの幽霊、愛でした。
愛実は充から近親相姦を受けており、充が酒に酔って愛実の部屋に押し入ったことが原因で、愛は霊として愛実を心配して見守っていました。愛もまた愛実と同じように虐待を受けており、暴力に耐えかねた末に命を奪われました。
愛の恨みは、滝沢夫妻の子どもたちや愛実に憑りつき、彼女たちと同じ苦しみを共有させました。最終的に、住民たちが全ていなくなった後、愛実は白骨化した愛の遺体に寄り添い、「大丈夫、みんないなくなった。これからはずっと一緒にいようね」と語りかけます。愛実と愛は、ようやく解放され、自由を手に入れることができました。