主人公は病院のベッドで目を覚ますが、体に管が繋がれており、前にはスーツ姿の男たちがいます。混乱した彼は病院から脱走しますが、どこに行っても人々の憎悪に直面します。テレビのニュースで、自分そっくりの首相が市民から投石を受けて負傷したことを知り、助けを求めた警官にも冷たくされます。最終的に、スーツ姿の男たちに連れられて首相官邸に到着しますが、彼の正体は「史上最悪のダメ総理」と呼ばれる総理大臣・黒田啓介であることが判明します。記憶を失った彼は、国会中継の映像で暴言を吐く自分を見て愕然とし、首相の記憶喪失という大問題が、秘書官の井坂と事務秘書官の番場のぞみだけの秘密として処理されることになります。

記憶を失った黒田啓介(は、私邸に戻るも妻・聡子や息子の顔さえ思い出せず、ハウスキーパーに抱きつくなど奇妙な行動を取ります。家族からも不審がられ、元々家族との関係は悪化している状態です。また、黒田の周囲には公私共に多くの問題があることが次第に明らかになります。

黒田を補佐しつつ権力を狙う官房長官・鶴丸や、無能な閣僚たち、さらには黒田自身が首相の地位を利用して特別サービスを受け、夫人にはテレビ番組を持たせるなど、国民からの支持が低いことも納得のダメ総理ぶりです。さらに、黒田は幼なじみの建設業者から賄賂を受け取って無駄な公共事業を推進し、国会で黒田の不正を追及していた野党党首・山西とは不倫関係にあり、ガラの良くないフリーライター・古郡祐には脅されてゆすられている状態です。

途方に暮れた黒田は、小学校時代の恩師を招いて政治の勉強を始め、問題に誠実に対処しようと努力します。その結果、家族以外の周囲の黒田を見る目は少しずつ変わっていきました。

黒田啓介は、アメリカ大統領スーザン・ナリカワの来日に向けて、ゴルフや手料理を振る舞う約束をしていたが、記憶喪失で英語も全くできず、これらの約束を果たすことができません。黒田と秘書官たちは「何かあったら『me too』で!」という不安な状態で大統領を迎えます。

数々の困難を乗り越えたものの、夕食後に黒田の忖度の無い発言が原因で、大統領は席を立ち去ります。鶴丸は「アメリカを怒らせた黒田は退任だ」とほくそ笑みますが、帰国直前の共同会見で、大統領は黒田の率直な姿勢を称賛し、感動的なスピーチを行い、日米関係の新たな構築を提案します。

黒田たちはこの外交問題を乗り切り、フリーライター古郡のスキャンダル写真を使って鶴丸を辞任に追い込むことにも成功します。

黒田啓介は、全てが良い方向に進んでいると思われた矢先、首相夫人・聡子と秘書官・井坂の不倫現場がスクープされ、官邸は揺れます。聡子と井坂の関係は、古郡が撮影していた写真によって暴露されました。

黒田は井坂に「君が必要だ」と引き留める一方で、聡子は官邸を抜け出し姿を消そうとします。黒田は国会中継で聡子に呼び掛け、必死の訴えに応じた聡子は夫の元へ帰ります。日本中が見守る中、抱き合う二人。依然として支持率は低迷していますが、黒田は周囲の信頼と妻の愛情、息子からの「お父さんみたいな政治家になりたい」という言葉を得て、前向きな気持ちを取り戻します。

最後に、秘書官の番場が黒田の小学校時代の作文を読んで聞かせます。その作文には、性格を変えたいという悩みと、記憶喪失になりたいという黒田少年の思いが綴られていました。番場が記憶が戻ったのか尋ねると、黒田は「国家機密だよ」と微笑んで答えます。