### 2人の出会いと始まり

大学の新入生である誠人と静流の出会いは、誠人が信号のない横断歩道を渡ろうとする静流を見かけたことから始まります。誠人は静流に信号のある横断歩道を使うように勧めますが、静流は「親切な人がいるかどうか確かめたい」と言い、手を挙げて渡ろうとします。誠人はこの奇妙な行動に驚きながらも、その姿を写真に収めます。

### 誠人のコンプレックスと孤独

誠人は腹部に皮膚の病気があり、「自分は薬臭い」というコンプレックスを持っていました。このため、人との交わりを避け、ひとりで学生生活を送っていました。彼は普段から塗り薬を使っており、他人と近づくことを避ける習慣がありました。

### 静流との再会

学食で食事をしているとき、静流が「ここ、空いてますか?」と声をかけます。誠人はビスケットしか食べない静流を不思議に思いながらも、再び彼女と接触します。静流は再度横断歩道を渡れなかったことを告白し、誠人は彼女を早朝の横断歩道に連れて行き、「簡単に渡れるよ」と教えます。

### 幻想的な場所の発見

その後、誠人と静流は立ち入り禁止と書かれた道の奥に入り込み、そこで幻想的な森や池を見つけます。この場所で誠人は写真を撮り、静流との距離を縮めていきます。この特別な場所での時間を共有することで、誠人と静流の関係は次第に深まっていきます。

### 富山みゆきへの思い

誠人には同学年で同じ授業を受けている富山みゆきに思いを寄せていました。みゆきはクラスの友だちといつも一緒に行動しており、誠人とは対照的です。みゆきは一人で昼食をとっている誠人に「一緒にどう?」と声をかけ、仲間たちの中に入れてくれます。誠人は次第にクラスに馴染んでいきます。

### 静流の寂しさ

誠人がみゆきと仲良くなる一方で、静流は誠人を寂しそうに見つめています。あるとき、誠人と静流が一緒にいるところを仲間たちに目撃され、誠人が静流と付き合っているのではないかと勘繰られます。しかし、静流はクラスでも変わっている生徒として噂され、その場で変人扱いされて走り去ってしまいます。誠人が追いかけると、静流は「変人扱いされたことよりも、それをかばってくれなかったことが悲しい」と話します。誠人は旅行先で買ってきた彼女の好きなビスケットを渡して慰めます。

### 写真への共通の興味

誠人の趣味である写真に興味を持っていた静流と、誠人は一緒に写真を撮影し、自宅に招いて現像作業まで教えます。静流はみゆきに直接会いに行き、彼女が身につけていたアクセサリーに興味を持ったことで、みゆきとも仲良くなります。これを見て誠人は怪訝な顔をしますが、静流は「好きな人が好きな人を好きになりたかっただけ」と告げます。

### 静流の家出と同棲生活の始まり

誠人とみゆきとの微妙な三角関係が続いていたある日、誠人は静流が家出をして学校に泊まろうとしているのを目撃します。家出をしてきた静流を見て、誠人は「うちに泊まれば?」と声をかけ、友人同士としての同棲生活が始まります。初めは遠慮していた静流も、同棲生活を通じて誠人との距離が徐々に近づいていきます。

### 写真コンクールへの挑戦とキス

あるとき、誠人と静流は写真コンクールに作品を送ることにします。テーマを探す中で、静流は誠人に「私とキスして」という願いを誕生日プレゼントとしてねだります。その姿を写真に収め、コンクールに送りたいと言う静流に、誠人は写真のためならと承諾します。二人は立ち入り禁止の森へ行き、初めてのキスをします。誠人はそれを「始まりのキス」と感じますが、静流はそれを「生涯でただ一度のキス、ただ一度の恋」として心に刻んでいました。

### 静流の突然の別れ

写真撮影が終わり、二人は別々に帰宅しますが、誠人の家に静流の姿はありません。「さよなら。今までありがとう」と書かれたメモを残し、静流は大学を辞めて誠人の前から姿を消します。静流がいなくなり、必死にその足取りを探す誠人ですが、見つけることができません。誠人は寝込んでしまい、仲間たちによって病院に運ばれます。みゆきら大学の仲間たちも静流を探しますが、足取りを掴むことはできませんでした。

### 誠人のその後と静流からの手紙

やがて仲間たちも誠人もそれぞれ大学を卒業し、誠人はカメラマンを目指して生活を送ります。ある日、誠人のもとに一通の手紙が届きます。それは静流からのもので、「ニューヨークで個展を開くことになりました」と書かれていました。

### ニューヨークでの再会

誠人は静流に会うため、すぐにニューヨークへ向かいます。しかし、迎えに来たのは静流ではなく、みゆきでした。みゆきは、半年ほど前に静流と再会し、現在一緒に住んでいると話します。そして、静流に急な仕事が入ったため、誠人とは会えなくなったと告げます。誠人は仕方なくニューヨークで写真を撮りながら、みゆきの家に戻ります。

### 静流の死と真実の発覚

みゆきの家で、誠人は静流の父からの留守番電話を聞いてしまいます。留守番電話の内容は、静流がすでに亡くなっているというものでした。誠人はみゆきに真相を問いただします。静流は生まれつきの病気を持っており、成長とともに病気も進行していました。静流はその事実を誠人に知らせず、誠人の中で生き続けたいと願っていました。静流は入院中、誠人宛にたくさんの手紙を書いていました。

### 静流の個展と手紙

誠人は静流の個展を訪れます。そこには、多くの人々の笑顔の写真とともに、成長した静流や誠人とキスをした写真が展示されていました。誠人はその光景を見て涙を流します。誠人はみゆきに、静流が書いた残りの手紙を送ってほしいと頼み、アメリカから帰国します。

### 誠人の決意

ある朝、誠人の郵便受けには静流からの手紙が届いていました。その手紙にはアメリカでの近況が綴られていました。誠人はその手紙を眺めながら、静流の嘘に付き合い続けることを決意します。