映画「ある男」のネタバレを含んだあらすじを紹介します。
友達になってくれないか
離婚して宮崎県の実家の文房具店に戻ってきた武本里枝。
ある日、見知らぬ男性がスケッチブックを買いにやってきました。
その男性は谷口大祐と名乗り、林業の会社に勤めているという。
以来、大祐は度々画材を買いに店を訪れるようになり、ある時は自身のスケッチブックに描いた絵を里枝に見せました。
彼は「友達になってくれないか」と提案し、里枝は買い物はしなくていいからいつでも絵を見に来て欲しいと答えました。
やがてふたりは親密になり、里枝と彼女の息子である悠人と3人でうなぎ屋に出かけました。
そこで里枝は、自身の過去や離婚の原因である弟の病死について話します。
大祐は里枝の手を取り、涙ながらに彼女の弟の名前を尋ねます。
「りょうくん」と口にした大祐の言葉に、里枝は感激しました。
仕事中の事故で
大祐との関係が進展し、里枝と大祐は結婚し、新たな家族ができました。
悠人の妹も生まれ、中学生の悠人は大祐を慕い、よく大祐の職場で過ごしています。
しかし、ある日、仕事中の事故で大祐が亡くなってしまいます。
一周忌の法要に、大祐の兄である恭一がやってきます。
里枝に連絡を入れることが適切かどうか迷った恭一は、仲が悪かったことを匂わせます。
しかし、仏壇で遺影を見た恭一は、その人物が大祐ではないと主張し、里枝と彼は言い争います。
弁護士の城戸
宮崎に到着した弁護士の城戸は、武本里枝に死亡届を取り消すよう指示し、DNA鑑定に必要な爪やヒゲなどの証拠を持ち帰ります。
城戸は横浜のマンションで妻の香織と息子の颯太と一緒に生活しています。
両親は在日三世であり、城戸を気にかけ、気にしないように振る舞っています。
香織は父の援助で一戸建てに引っ越すことを楽しみにしていますが、城戸はそうした計画に乗り気ではありません。
苗字
城戸は大祐の実家である群馬の温泉旅館を訪れます。
恭一は、大祐が宮崎に行く前は大阪に住んでいたことを知っており、本物の大祐が偽物に殺された可能性を疑っています。
次に城戸は大祐の元恋人である後藤美涼を訪ねます。
彼女は最後に会ったのは大祐の父親の葬儀だったと言い、今でも彼を愛していることを涙ながらに語ります。
城戸は里枝に、大祐が本物ではないことが証明されたと報告します。
しかし、里枝の息子である悠人から、なぜお墓をつくらないのかと問い詰められ、里枝は事実を打ち明けます。
しかし、苗字の変更に神経質な悠人は不機嫌になります。
「曾根崎義彦」
城戸は同僚の中北から戸籍交換のことを聞き、その仲介人である小見浦憲男が服役している大阪刑務所を訪ねます。
しかし、小見浦はすぐに城戸が在日であることを指摘し、関係のない話に終始し、面会を打ち切ってしまいます。
後日、小見浦から届いた絵ハガキには、城戸をバカにする言葉と「谷口大祐」「曾根崎義彦」というふたつの名前が記されています。
城戸たちは死刑囚の描いた絵画の展示会を開催しています。
そこで行われる死刑反対に関する講演会に、城戸のことが気になりインスタグラムをチェックしていた美涼が来ています。
彼女は城戸に、大祐の偽アカウントをつくっておびき出すことを提案します。
作品をみていた城戸は、宮崎で見た里枝の夫の描いた絵と似た絵を見つけます。
その絵は小林謙吉という人物が描いたもので、プログラムに掲載されたその顔は里枝の夫と瓜二つです。
そして謙吉には息子がいて、名前は原誠だということが判明します。
再び小見浦を訪ねた城戸は、「曾根崎義彦」についての情報を求めますが、はぐらかされてしまいます。
<回想>
小林誠少年は、近所の友だちの家を訪れます。
しかし、その家からは自分の父親が血だらけで包丁を持って出てきました。家の中では友だちとその両親が無残な姿で転がっていました。
原誠が所属していたボクシングジムを訪れた城戸は、誠が新人王を目前にしてやめてしまったことを知ります。
トレーナーの柳沢によれば、そのころ誠が路上に転がり泣いたことがあったそうで、その後ビルから転落してケガをしたといいます。
誠に期待していた会長の小菅はそれ以降鬱になってしまったそうで、いまも具合が悪そうです。
城戸が自殺だったのかと聞かれたとき、柳沢はほっとしたような表情を浮かべました。
城戸は妻の香織に、仕事にのめり込みすぎじゃないかと指摘されます。
出張が多いので、香織は浮気を疑っているようです。
城戸の事務所では一連の調査報告が行われ、里枝と恭一が顔を合わせます。
弟や里枝を侮辱した恭一に対して、めずらしく城戸が怒りをあらわにします。
この町で出会い、愛し合い
宮崎に帰った里枝は、苗字はもとに戻さなければならないと悠人に説明します。
悠人は、「寂しいね」と言って泣き、義理の父が大好きだった息子を里枝はやさしく抱きしめました。
城戸はSonezakiYoshihikoからの警告メッセージを受け、美涼とともに会いに行くことに決めます。
待ち合わせは名古屋の喫茶店。
店内で美涼が本物の谷口大祐と見つめ合う姿を見届けた城戸は、立ち去ります。
その後、城戸は宮崎へ行き、誠が亡くなった場所を訪れます。
里枝に報告し、「ここで過ごした3年数ヶ月が彼にとっての人生のすべて。初めて幸せだったと思います」と伝えます。
里枝は真実を知る必要はなかったと答え、「この町で出会い、愛し合い、いっしょに暮らし、子どもが生まれた。それは事実だから…」と語ります。
里枝が悠人に報告書を渡すと、悠人は自分が父親にしてほしかったことをぼくにしてた、だからあんなにやさしかったんだと答えます。
は「それだけじゃない。やっぱり悠人のこと、好きだったと思うよ」と告げます。
そして悠人はいずれ自分から妹に伝えると約束し、里枝は息子の成長を喜びます。
帰り道、城戸は誠の姿を見たような気がし、彼は山に向かって消えました。
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