中国の10年間の変化

この作品の特徴は、政治的な視点を排除し、ただ風景や人々を旅人の視点で見つめることにあります。

上海の街はビルがどんどん増えているにも関わらず、「以前より小さく見える」という感覚があります。

これは、子供の頃に大仏の巨大さに驚いた経験と似ています。

三峡ダムの壮大さは10年前と同じですが、優雅なフェリーの行き来が経済の発展を感じさせます。

監督は10年前に乗った貨物船の船長と感動的な再会を果たしますが、船長の誘いを断り、代わりにフェリーで移動します。

これは作品の旅情を象徴するエピソードです。

 

少数民族の影

河川の合流地点で、切り立った崖や険しい坂道が多い重慶市では、荷物を運ぶ伝統的な職業であるバンバン(棒棒)の70歳を過ぎたベテランに密着しました。

彼らは経済の成長とは縁遠い人々や差別を映しています。

「古い」と見なされてきた少数民族であるモソ族の母系社会は、女性の進出の先駆けとして評価される皮肉や、ロコ湖が映し出す息をのむような美しさ…。

その奥深くに行くほど、多様な光景が「大国主義」とは異なる中国の大きさを印象づけます。

クライマックスは、チベット族の女性ツームーとの再会です。

何もない草原で羊との記念写真を撮り、わずかなお金を稼いでいた彼女が「ペンション・オーナー」の夢を実現しています。

目的を達成するまでには苦労もあったでしょうが、彼女の純真さは失われていません。

監督のことを「よく覚えている」と言いながら、ドンドン(阿部力)のことばかり話す姿に、監督の表情がやや曇ります。

 

竹内涼監督の中国への馴れ初め

監督竹内亮は現在南京に在住しています。

彼の出身は1978年、千葉県我孫子市ですが、学生時代は映画に夢中で、特に『猿の惑星』に熱中していました。

映画監督を目指し、東京視覚芸術学院で映画芸術を学び、その後は助監督として活躍し、多くの海外ドキュメンタリー映画を手がけました。

彼の最初の作品は『麻雀の起源』でした。

麻雀が中国から起源を持つことは一般的に知られていますが、具体的な背景に詳しい人は少ないでしょう。

この作品では、麻雀の起源地である中国の宁波を中心に、麻雀に関する様々な知識を提供しています。

この作品が竹内亮監督と中国との縁を深めるきっかけとなりました。

2005年に、『中国人観光客』(テレビ東京)の撮影中に、妻である趙氏と出会いました。

趙氏は翻訳担当としてご参加しており、竹内氏が趙氏に一目惚れし、猛アピールが始まりましたが、趙氏の両親は猛反対されます。

しかし、竹内氏は粘り強く努め、「三顧の礼」を尽くし、最終的には生涯の伴侶として結ばれることとなりました。

中国に初めて訪れた際、竹内氏は日本とはまったく異なる風習等に直面します。

初日、小売店に買い物をした際、店主の男性からおつりをお金を投げつけるようにして渡されて驚きました。

翌日再びその店を訪れると、店主は気分が良かったのか、竹内氏の腕を引っ張り、会話が始まりました。

お二人とも片言の英語ででしたが、最終的には会話を楽しむことができたと振り返っております。

日本では一般的に微笑みを交えたサービスが主流ですが、中国とは異なります。

このような態度の変化に最初は戸惑ってしまうことでしょうが、これが中国流であり、中国ならではの人情味のある温かさと感じとりました。

また、竹内氏は、化粧をしていない女性が多いことにも驚かれたといいます。

その一方で、何の飾り気もなく、自分の感情そのままに振る舞う中国人の姿に感動されたのでしょう。