夫のガンが発覚してから

亡くなるまでの4年半の間、

本当にいろいろなことがありました。


特に夫は最初の治療の

免疫チェックポイント阻害薬で

感覚神経障害の副作用がでてしまい、不自由な生活を余儀なくされました。

自分の手や足の位置を

自分の目で確認しないと

わからない状態でした。

手足は常にピリピリジンジンと

痺れていました。

動作もロボットのようでした。

治験コーディネーターさんは

「私が見てきた中で一番重篤な副作用です」と言っていました。

その時はなんで夫が…

という気持ちでいっぱいでしたが、

立ち止まるわけにはいかないので

とにかく必死で夫を支えて

前に進みました。


夫はよく人に

「二人三脚で頑張っています」

と闘病生活を話していました。

本当にその通りでした。

私は夫の手となり足となり

支えてきました。

そして、不自由な体になっても

仕事を続けてくれた夫に

感謝もしていました。


見えない先を考えたくなくて、

その日その日を

2人で必死で乗り越えていました。

夫に生きてほしい一心でした。

それだけに夫が亡くなった時は

奈落の底に突き落とされたようでした。


そして夫が亡くなってから半年後に、

夫が長年隠していた秘密が発覚し、

私は更に奈落の底に突き落とされました。

知りたくなかった夫の嘘が発覚して

9ヶ月たった今思うのは、

夫がいなくて寂しいですが、

裏切られていたことを思うと

寂しさがスーッと消えていくのです。

本当なら夫を失って

今でもメソメソしているはずですが、そこにどっぷりと浸かることはありません。

夫に騙されていたと思う気持ちが

大きくなると、

夫のいない悲しさは

吹き飛んでしまうのです。

やはり「ひどいよ」という言葉しか

出てきません。


引っ越して環境も変わったせいも

あるかもしれませんが、

私は私の人生をこれから楽しみたい

という気持ちが強くなっています。

男女問わず新しい出会いにも

ワクワクしています。

夫の裏の部分を知らない人が

今の私を見たら「冷たい奥さん」と

思うかもしれません。

そう思われても構いません。


もしかしたら夫は

自分がいなくなった後、

私が立ち直れなくなることを予測して長年ついていた嘘を

あれだけ隠していたことを

私にわかるようにしたのかなと

ふと思うことがあります。


夫の裏切りを知らなかったら

私は夫のいない世界から抜け出せず、

きっと今日も泣いていただろうし

自分だけ楽しい思いなんて出来ないと思っていたはずです。


夫が亡くなって1年4ヶ月、

たくさんのことをひとりで

乗り越えてきました。

今まで生きてきて

最も内容の濃い1年4ヶ月でした。

そして覚悟ができました。

夫に頼って生きてきた私が

いろいろな面で強くなれたことは

間違いありません。