今回は、質のお話しです。
私は長年、品質管理や品質保証の仕事をしておりました。
“品質”というと、一般的には物(品)の質のことですよね。
狭義では、そういうことですが、広義では仕事の質というところまで広がります。
ですから、TQM(Total Quality Management)を“業務品質”と置き換える場合もあります。
仕事のやり方にも“質”があるのです。
ですから、品質と名の付く部署だけでなく、人事、総務、経理のような管理部署においても、仕事の質を求められるのです。
私は、毎年11月の「品質月間」で多方面から講演を依頼されますが、その時にも「品質月間は、管理部署も大いに関係しているんですよ。」と話しをします。
“品(しな)”と付くことから、どうしても物をイメージされると思いますが、品=物ではないのです。
例えば、人に対してもそうです。
「あの人は、品がある。」「あの人は、とても気品がある。」など、物ではないのに品を用います。
この品は品(しな)という意味では無いことは、誰でも分かると思います。
「あの人は、上品だ。」「あの人は、下品だ。」とも言いますよね。
これは、人間の品格の話しですね。
この上品・下品という言葉は、仏教から来ています。
仏教では、九品(くほん)というのがあります。
上品、中品、下品という3段階を、それぞれを更に3つに分けてランク付けをしています。
このランクは、極楽浄土に生まれ変わる際に、生きていた時の行いによって9つのランクに分けられるという考えです。
生きている時に、非の打ちどころのない善人と、極悪非道限りを尽くした悪人とでは、浄土での扱いが違うというものです。
物の質、仕事の質、人の質と、どれも品質があります。
そして、それぞれが繋がっています。
善い人が良い仕事をすることによって、良い物が出来ます。
良い品 良い考え
品が良い人、気品のある人。
どんな人でしょうか?
おだやかで、優しさが滲み出ているような人ではないでしょうか?
外に対する器用さよりも、己の心に違う(たがう)事を恐れる。
自立と自律の両方を持っている人物だと思うのです。
近年、海外での日本人の評判は、良い事と悪い事の両面を言われています。
会社そのものは評判が良くても、中で働いている人は評判が悪かったりします。
私の古い友人であるイギリス人の商社マンが言うには、「日本人は、金の話ししかしない。」と言います。
年収、家賃など、お金の事ばかり聞くらしいのです。
しかも、公の場で聞いたりしてくるそうです。 彼が講演会などで、「何でも聞いていいですよ」なんて言うと、決まって日本人がお金の事を聞くというのです。
彼曰く、「日本人は下品」らしいです。
反論したい気持ちはあるのですが、実際にそうなんだろうと容易に想像もつきます。
私の知り合いも、非常にケチな人が多い。(個人的な意見ですよ)
お金を出すべき場面で、出さない。
会うたびに、「奢ってくれ」と言う。 会社が同じだから、給与にそんなに差が無いはずなのに。
いつも挨拶のように言う。 非常に下品である。
私は最近、中野幸次さんの“清貧の思想”という本を読みました。
この中には、日本人が本来持っていた考え・思想が書かれています。
このような本を読んで、品のある人間を目指し、品格の向上に努めようと思っています。
皆さんも機会がありましたら、読んでみてはいかがでしょうか?
モノづくりをする前に、人づくりです。