製造業の多くは、大量生産をしています。

効率よく、早く量産するのであれば、ロボットで製造する方が良いです。

しかしながら、作業が複雑であったり、多種多様な動作が必要な場合は、ロボットの開発に時間や費用がかかり過ぎて、割に合いません。

こういったロボット化できない作業のことを、“牡蠣の殻剥き”と呼んだりします。

これは、牡蠣の殻剥きが、大きさや形状によって、どこにヘラを差し込んで、どの方向にこじれば良いかというのを、ロボットではなかなか出来ないことから、来ています。

時間と費用をかければ出来ないこともないかも知れませんが、割に合わないのです。

昨今、日本のGDPが低く推移していることが問題になっていますが、実は製造業においては世界のトップレベルにあります。

自動車製造においては、人による組立作業が多く残っていますが、効率化は十分に図られているのです。

それは、ムダを徹底的に省いているからでもあります。

 

「ムダを徹底的に省いている」ことを、悪く捉えている人も多く居ます。

「早くできる分、同じ時間働いても疲れるのではないか?」と言われたりしますが、全くの逆です。

ムダが無いから疲れないし、必要な分だけつくって早く帰れるのです。

 

「日常生活の場においてもムダ取りの考えがあるから、心が休まらないのでは?」とも言われます。

全く、そうではありません。

私生活と仕事は、きちんと切り分けています。

私生活においては、むしろムダが多い方が良いと思っています。

ゆっくりと時が流れるのを楽しむのが良いと思っています。

時間の有効活用=ムダ削除 と考えるのではなく、

私生活のムダ=ゆとり と考えています。

ですから、価値のあるムダな時間なのです。 あえてムダと呼んでいますが、価値のある時点でムダではないのです。

私生活においては、このような何もしない時間が敢えて必要なのです。

 

では逆に、価値の無いムダとは何でしょうか?

私生活の場面においてもあります。

例えば、出かけて30分ほど経って、重要な忘れ物に気付いた時。

それが本当に必要な物だった時は、取りに戻らなければなりません。

折角早めに家を出ていたのに、1時間のロスになります。

この1時間は、価値の無いムダです。

 

この忘れ物をしたのは、失敗をしたということです。

「失敗をしてやり直す」

この行為は、価値の無いムダです。

 

会社でもあります。

資料の作成やり直し。

不良品ばかり製造して、その分をやり直す。

などなど。

 

この価値の無いムダは、私生活においてもムダ取り対策をしたいですね。

 

ですから、トヨタでは何もかもムダ削除の考えではないのです。

価値のある動作、行動(考動)をしよう と言っているのです。

 

過去に、車が売れなくなった時期がありました。

リーマンショックの時期など、何度もそのような時期がありました。

そんな時、横這いになっている販売数を“おどり場”と呼びました。 階段のおどり場の事です。

階段で言うと、“一息つく所”です。

そして、そのおどり場の時期、価値あるおどり場にしよう と言っていたのです。

そういった時期だからこそ、教育の時間に充ててみたり、仕事のやり方を見直したり、色々とやる事があったのです。

価値のある時間の使い方をしたのです。

 

要は、価値が有ったか? 無かったか? なのです。

時間の使い方も、価値があれば良いのです。

ボーッとする時間も、必要です。 それは、ムダではありません。

あなたにとって価値があるのか?

その基準で考えてみて下さい。