日本人の気質というものは、良いものが多いのですが、時に勘違いをして過剰になってしまうことがあります。
今回は、職場の“美徳”について書いてみたいと思います。
美徳という意味を辞書でひくと、「人として望ましいりっぱな心のあり方や行い」とあります。
“人として望ましいあり方”??? どうでしょうか? 何が望ましくて、何が立派なのか、人に依って違うと思うのです。
今流行りの“正義とは?”と同じだと思うのです。
このように、人に依って解釈が異なる言葉については、具体的な事例を持って、こういう行為が美徳で、こういう行為は美徳ではありませんと、明確にしておく必要があります。
会社や職場で、こういう行為はダメですよ、こうあるべきですよと、明確にしておかなければなりません。
それは、就業規則といった規範にするレベルではないけれども、行動指針といった、規則ではないがマナー的なものです。
例えば、残業。 「残業してはいけません」とは言えません。 でも、仕事も無いのに残業するのはどうでしょうか?
生活残業と言われるものです。 仕事は無限にあります。 でも、夜中までやる必要のある仕事でしょうか?
逆に、サービス残業はどうでしょうか? これは、いけません。 労働基準法違反です。 残業をしたら、キチンと申請をする。
これらの“生活残業”や“サービス残業”については、職場や会社で指導をしていると思います。
しかしながら、多くの会社や職場が、口ばかりの指導しかしていません。
会社や職場に流れている風(風土)が、そういった事を推奨していたりします。
上司の中には、「定時で帰宅するのはけしからん」と思っている人がわんさか居ます。
長時間働くのが“美徳”だと思っています。
しかも、それが行き過ぎると、会社に申請をしないサービス残業になります。
そういうのを“美徳”だと思っている人がたくさん居るのです。
何を美徳としているか? が、会社や職場によって違うのです。
口では、「そういう行為はダメですよ」と言いながら、上司が率先して残業をしている。
そして、残業をしている部下に、「お前、頑張ってるな」と労いの言葉をかける。
そういう光景を見ている新入社員が定時で帰宅できますか?
私は、アメリカの会社で働いていた経験がありますが、定時後に残っている社員はほぼゼロです。
残っている社員は、ダメ社員のレッテルを貼られます。 定時間内に仕事が終わらなかったダメ社員なのです。
そういった光景を見ていると、日本の会社の定時後の光景は異常だし、日本の会社だなぁと思ってしまいます。
まさに、日本人気質が出ているのです。 そういうのを、美徳と思っているのです。
サービス業の方は、特に気を付けなければなりません。
我々が理解している“サービス”とは、前述にもあるサービス残業のように、サービス=無料なのです。
要は、奉仕です。
だから、給与の発生しない仕事を延々とする傾向にあります。
ボランティアに近い。 ボランティアは、自発的なものですが、自発的にそうせよと教育されています。
それを“美徳”だと教育されています。
ちゃんとした所は、“オプション”と呼んで、キチンとお金を頂きます。
そういう行為も日本人は嫌う傾向があります。 ちょっとした事をするのにお金を頂くのは、守銭奴と思われる。
お客様は喜びます。 当たり前ですが。
でも、従業員は? ふと自身の生活を振り返ると、毎日帰るのは午前様。クタクタだ。給与は増えない。将来、このままで良いのだろうか?
辞めてしまいます。
サービス業界全体がそうだと言うことではありません。 気を付けなければならないという事です。
よくトヨタのことを悪く言われる方が居て、「トヨタはムダを徹底的に省いて従業員を働かせているから、従業員はコキ使われている」と聞いたことがあります。
まったく逆です。
ムダな事をさせない訓練をして、定時で帰らせるのです。 ムダが一切無いから、作業もゆっくりです。 急ぐ必要が無いのです。 急いでも、ムダな在庫が増えるのですから。
そういう、ムダを省く、定時で帰るというのを当たり前のように繰り返し、そういう行為が“美徳”だと教育をしています。
ムダが無いから利益も出やすい。
何が美徳なのか? 本当の美徳とは?
お客様も従業員も、ハッピーになるのが美徳ではないでしょうか?