日々、様々な問題が発生し、我々はその解決に多くの時間を費やしています。

目の前で発生する問題もあれば、将来を予見して今から何をすべきか考えなければならない問題もあります。

社会や会社においては、それらの問題解決をしている時間がほとんどで、「問題が無い」と思っていたら世の中から置いてけぼりをされて消失してしまう職業もあります。 よって、「問題が無い」と思ってはならず、常に問題を探している状態を維持しないとならないのです。

問題が無い方がいいに決まっているのに、問題が無い状態をつくってはならないという、非常に矛盾した状況で日々暮らしているのです。

 

ということで、我々は日々「問題解決力」を磨き、短時間で解決し、問題が発生しないような対策をするのです。

問題解決力をどうやって向上させるかというと、これは手法があって、手順を踏めば解決できます。

トヨタで言えば“Toyota Way”という問題解決手法があり、これを全世界のトヨタで共通して教えています。

これまで何度かその内容について触れて来ましたので、ご興味のある方はブログを読み返して頂ければ出て来ると思います。

この「問題解決手法」を何度も使って身につければ、問題解決のスピードも上がりますし、従業員全員が身に付ければ、これ程強力な武器はありません。 問題を見つけて、迅速に解決する能力を全員が身に付けているのですから。 どんどん問題が解決していきます。

 

とはいえ、手法だけ学べば解決するという方程式が、実は成り立っていないのです。

多くの場合が、この方程式に当て嵌めれば良いのですが、解決しない事も多々あるのです。

 

ここで一つの品質問題について事例を出します。

とあるゴム成型工場での、不良品対策についての話しです。

そのゴム成型工場では、お昼休みもマシーンを動かし、製品を製造していました。

そのマシーンには人が付いていなければならず、成型後のゴムを型から外して、さらに切り分ける作業をしていました。

その際に、成型マシーンが上手く作動せずに、不良品が沢山つくられました。

普段ならば、不良品がつくられた時に作業者は気付きマシーンを止めますが、この時は作業者が居らず、どんどん不良品が出来上がったのです。

作業者が戻った時には、不良の山になっていました。 そこから、マシーンを正常に戻し、不良の山から良品と不良品を選別したのですが、誤って不良品を良品の箱に入れてしまったのです。

 

その対策内容の確認のために出張したのですが、ゴム成型工場の工場長の言う対策は、以下のようなものでした。

・ 作業者を再訓練し、良品と不良品をキチンと見分けられるようにした。

その場限りの対策でした。 それでは駄目だということで、根掘り葉掘りナゼナゼを繰り返して質問をしました。

ナゼ?作業者は居なかったのか? → 昼休みなので、食事をしていた。

いつも、昼休みは片手間に作業をしているのか? →当番を決めて、昼食を取りながら合間にマシーンを見に行かせていた。

そういった片手間な作業をしていては、また同じ問題が再発するのでは? →では、昼休みはマシーンを停止します。

マシーンを停止すると、再起動時のゴム溶解時間や清掃が必要になり、1時間程度のロスをするのでは? → 生産個数は現在もギリギリなので、土曜日出勤をして挽回します。

土曜日出勤を、日常化するのですか? →はい、そうします。

マシーンを増やして、休日出勤を止めることは考えないのですか? →作業場はこれ以上物が置けないので、マシーンを増やすことができません。

休日出勤を繰り返していたら、また昼休み稼働にしようと、元に戻すことになりませんか? →絶対に、そうしません。約束します。

 

なかなか、思った方向に解決の思考が動いていきません。

結局、こちらの提案する方法で対策をして頂くことにしました。

対策は、12時から1時のお昼休みもマシーンは稼働し、それに従事する人は出勤時間を1時間ずらし、その時間も作業をします。 食事休憩は、他の人達よりも1時間遅くしてもらいました。 要は、シフト制にしたのです。 これにより片手間作業を無くし、マシーンも止めずに、休日出勤もしなくて良くなりました。

 

この事例を出したのは、「工場長は、なぜ初めからこの発想をしなかったのか? どういう教育をすれば、この発想が出るようになるか?」を考えて頂きたいのです。

センスでしょうか? 何が足りないのでしょうか?

センスというのは、知識や経験から養われる後天的なものと私は思っています。

では、知識や経験が足りなかったのでしょうか? 足りていたら、発想は出てくるのでしょうか?

私は、そうでは無いように思います。

 

食事をしながらも働かさせる従業員の心、休日出勤が日常化してしまう従業員の心を、まったく考えていないのが問題なのです。(労務管理者として、大問題。食事中の労働については、別に休憩時間を多く取っているとは言っていましたが。)

 

結論的に言いたいのは、問題解決の手法を知っていても、経験数や知見が多くても、解決しない問題は山ほどあり、最終的に必要なのは“人の心を読む力”だということです。

人の心理を理解できない人は、問題解決できない事例も多いことでしょう。

これは、ロジカルシンキングの達人と言われる人も、人の心を理解できない人は居ます。

人の心のロジカルを理解していないからです。

そういう人は、共感したり、共鳴する能力も低いと感じています。

 

問題は大きなものから小さなものもあります。 ロシアのウクライナ侵攻も問題です。

このような大きな問題は、ロジカルシンキングだけでは解決できないのです。

経験や知見があっても、何ともならない問題があるのです。

そこには、人々の心が密接に関係しているので、理屈通りにはいきません。

小さな問題についても、同じです。 問題のある所に人が関与している限り、人の心を理解できないと問題は解決していきません。

ですから、手法に記載できるはずもなく、そこに必要なのは共感、共鳴する力だと思うのです。

        手法、知見、経験、寄り添う心

これらが揃わないと、真の問題解決には至らないように思うのです。