- 密やかな結晶 (講談社文庫)/講談社
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460冊目、小川洋子著『密やかな結晶』読了。
次々に「消滅」が起こる島を舞台にした小説。
この小説における「消滅」とは、物体がなくなることではなく、そのものに対する記憶が失われていくこと。
例えばある朝「薔薇」が消滅したら、人々はそれを抵抗することなく静かに受け入れ、薔薇を見ても心を動かされることがなくなり、やがてその姿も思い出せなくなっていく。
一方、消滅したものの記憶を保持し続ける人々も存在し、そのような人々は、ナチスのユダヤ人迫害を思わせる秘密警察による「記憶狩り」の対象となる。
小説家である主人公は、編集者の男性を「記憶狩り」から守るために自宅に匿うも、やがて自らの肉体をも消滅し始めてしまう。
……というのが、簡単なあらすじ。
読了後にアマゾンの内容紹介を読んだら、「現代の完璧な消滅・気化への希み」を描いた作品だと書かれてあったので、私はこの小説を全く理解していないと思う。
それというのも、読んでいる間ずっと、私はこの本をホラーだと思っていたから。
小川さんが書かれる文章があまりに美しく、読み終わってしまうのがもったいないほどだったから、それによって幾分か中和されていたけれども……「消滅」が怖すぎて、とてもじゃないけど私は希めなかった。
読み終わった今では、冷静に考えてみると、解らないでもないんだけど。
脳味噌が作った世界で生きているのが人間だから、記憶がなくなれば過去に悩まされることもないし、ただただ「今」だけを生きていればいいんだから、楽だろうとは思う。
でも、楽だけど、楽しくはないだろうな。
余談。
日本が侵略されるとか、宇宙人が攻めてくるとか、そういう危機的な状況を想像すると、私は何故か昔から「英語を学ばなきゃ」と一番に思う(笑)
日本から亡命しなきゃいけなくなっても英語が話せれば別の国で不自由なく暮らせる可能性が高いし、世界規模の災害が起こったら重要な情報はまず英語でやりとりされるだろうから。
でも、この本を読んでからは、本当に必要なのはこの本の登場人物である「おじいさん」が持っているような能力かも、と思うようになった。
詰まった排水管をなおしたり、隠し部屋に換気扇を取り付けたり、ね。