上段に
出版社による あらすじ に沿った範囲での内容
下段に
個人的な感想を
ネタバレ気にせず、配慮なし で
書いてます。
ネタバレが お嫌な方
下段は、お読みになりませんように🙇
主人公 朔也(30歳手前)は、母と ふたりきりの暮らしで
ある日、母から
自分はもう十分生きたから…と
〈自由死〉をしたいのだと打ち明けられる。
母はまだ、七十歳。大病も難病もない。
当然、拒否る朔也。
母からの もう十分生きた という言葉と
最後の時には、朔也にそばにいて欲しい という言葉も
受け容れることができずに拒否る。
そうするうちに
母は、なんと事故に遭って
生前望んでいた、朔也に看取られながら逝く という希望も叶わず
突然、死んでしまった。
母を喪って
朔也は、AIで人を再現・作成する会社に、母の作成を依頼する。
なぜ、母は〈自由死〉を望んだのか。
母の突然の事故死で
永遠に答えを得られなくなってしまった疑問。
朔也は それに縛られてしまった。
ゆえに
AIで母を再現して
その答えを得たいと考えた。
ただし、作成されたAIに
母としての知識、経験、人格を学習させていって
その積み重ねで、生前の母に近づけさせなくてはいけない。
そのため、朔也は、自分の知らなかった母の人脈や過去を
改めて探る必要があったし
それに触れていくことになる。
子供が、"母親" とだけ、認識していた
"ひとりの女性" の過去。
知らなかった "母親" 以外の、母の顔。
自分の出生の真実。
そして
母を手繰るうちに出会った人との、関わり。
朔也は始終
〈本心〉というものに翻弄され続けているように見える。
他人の本心にも。
自分の本心にも。
本心とは、たとえ相手が
「本心です」と言っても、それが本当かどうか、わからないもの。
自分が、これが本心だ!と思い込んでも
実は、違ったりも するもの。
朔也は
母の、自分の、関わる相手の 本心へと
注意深く、しかし丹念に思いを巡らせる。
自分の欲望についても考えるが
それに気づいても
それよりも、相手の気持ちを察して
なんなら優先して
誠実に考える。
だからか
最後の章で、彼は
少し大人びて、前を向いた青年に変化している。
人の〈本心〉に対して
答えは、すぐに出ないかもしれない
いや、いくら考えても
答えなんかないのかもしれない。
それどころか、考えることで
ますますわからなくなる かもしれない。
けど
ああだろうか、こうだろうかと 迷いながらも
誠実さをもって、人について考えるなら。
それは
無意味や、無駄ではないんだ と
思えた。
ただ
朔也よ。
そんなに、自分より相手を優先していては。
確かに、ドロ沼にはならないだろうけど…
少し、さみしくはないかい?と
わたしが彼の母だったら
そう思うだろう。
人も
自分も
大事にね。
あと
いろんな物事の描写の言葉が
すごく工夫されてるというか
ありきたりではない表現だけど
ちゃんと ああ、わかる。と思わされるもので
そこが興味深かった。