上段に あらすじ 


下段に

個人的な感想を

ネタバレ気にせず、配慮なし で

書いてます。


ネタバレが お嫌な方

下段は、お読みになりませんように🙇




『吉丸事務機株式会社』

この 小さな会社で起こる
人間関係のもつれや、行き違い。



会社勤めって、 「働く」って

なんだか せつない。



そんな気持ちに寄り添う
連作短編集。



 




会社 という一箇所に集まって

それぞれの事情を抱えた人たちが、働く。




するとそこに

各々の性格もあいまって

様々な軋轢や すれ違い、思惑が生じ
人の間を 行き来する。







若い女性上司と

コネ入社で
ひとクセあり
周囲から浮いている新人女性部下とが

やっとの思いで築いた信頼関係。

それが、仕事上のすれ違いで
いとも簡単に壊れる様。





口を開けばハラスメント発言だらけ。
スマートに仕事ができず風采の上がらない
中間管理職の男性。

家庭でも会社でも
情けない立ち位置に立たされることが多く

また自らも
その役割を甘んじて受け入れ、生きる 悲哀。





会社では、人望篤く有能な男性が
家庭では妻と冷たい関係に陥ってしまっている。 
同じ人物なのに、なぜ。





などなど

いくつかの
会社勤め人のエピソードが詰まっている
本作の中で





今、ちょっと話題にもなっている
"子持ち様"
のケースもあって。

その章に
一番、痛みを感じた。



かつて、厳しい新人教育をしていた女性社員が
産休を終えて、会社に復帰した。



自宅や会社近くの保育入所は叶わず 

幼い子を
どうにか決まった、通勤圏外にある保育園に預けての、復帰。



彼女の出勤は、いつも遅刻ギリギリだし

退社は
終業時間 その瞬間か、微妙に早い時間 だった。

そうしないと
登園・退園時間に 合わせられないから。
 



そんなママさん社員の課には

なぜか終業時間間際になると
問い合わせの内線電話が頻繁にかかってくる。 


電話が3コール以上鳴っても

新人に「電話は3コール以内に取る!」と叩き込んでいたはずの彼女は

受話器に手を伸ばして取るフリ 仕草はするものの


課内の、他の誰かが仕方なく電話に出るまで
それ以上は決して動かない。

受話器を取らない。




耐えかねた誰かが 電話に出た瞬間

お先に失礼します と言って
職場を飛び出していく。




その言動は
自らが 以前、新人たちに施していた教育とは
まったく真逆で。

そんな姿は やはり 
同僚や後輩からの反感を買った。




それ以外にも
子供の突然の体調不良での、急な休みが度重なる。

社員が 順番で回すはずの
土曜出勤も 免除される。



仕事のしわ寄せは すべて
ママさん社員 以外の人に おっかぶさってくる。

仕事を上積みされた社員は、疲弊する。



後日
ご迷惑をかけました と
職場でクッキーを配られても…。

むしろ

有給休暇を取ったら何かお菓子を配らねばならない

という、新たなヘンな習慣になってしまって
迷惑でしかない。
 




助け "合って" 仕事をしましょう。

わかっているけど
助け  "合えて ない"。

子や、家庭のない社員が
助けてばかりだ としか思えない状況。 



日を追うごとに
ママさん社員と一緒に働く日々が  重なるごとに

仕方ない と、頭で思っていても

不公平感は
増すばかり。




同部所の社員は
みんなイラつく。

疲れも手伝って。



かつて、新人教育でしごかれ
辛い思いをさせられた相手が 

今は、子供を盾に
平気で 自分の押し付けた厳しいルールやマナーを
破っているようにか見えなくて。




そんなふうに思ってしまう 自分を 
そのまま受け入れられずに もやもやする人もいれば
 



生じるイライラの赴くまま、ストレートに
ママさん社員に冷たく当たる人も ついに 出てくる。




ある日の終業時間 間際に
また内線がかかってきた。

例のごとく、電話に手を伸ばす仕草は見せるが
決して受話器を取ろうとしない、ママさん社員。



それを横目に
他の社員たちが 次々と

「今日は用事があって、すみません」と声をあげ

鳴る電話を無視して、オフィスを出て行った。




鳴り続ける電話と
残されるママさん社員。




もう一人。 独身の中堅女子社員。
結局、電話は、彼女が受けた。


ママさん社員の言動に割り切れない思いを抱きながら

そんな自分を嫌だ とも思っていたのは
彼女だった。


彼女は
終業後、子供の迎えのために
髪振り乱して駅まで走るママさん社員の姿を
見かけたことがあったのだった。






このストーリーで
"悪" である人は いるだろうか?



終業間際の電話を、ママさん社員に取らせる状況を作ろうと
さっさと退社した社員たちでさえ

わたしには、悪 には、思えない。


こんなに "しわ寄せ" がこなければ
彼女らも そんな行動には出なかったのでは?
と 思うから。




じゃあ、なんなんだろう。

"悪い" のは。




社会や会社の 制度や、仕組み?

強くなりすぎた
個人の権利意識?




今は 働いてもいない
世間のリアルからは、取り残されたババーなわたしだが

今 持ち上がってるらしい
働く場での "子持ち様" 現象は

なんだか、痛い。



「子育ては大変なんだから、助け合って〜」とか
「もっと優しい世の中に〜」と主張する
親となった社員の言うことも、わかる。



では、と
親社員に優しい職場になると

親でない社員にとっては、優しくない職場になる という反動が くる。

それへの救いは、あるんだろうか?




現状って

個人の良識や忍耐に 頼りすぎてる?

だから、不満がたまってしまって 噴出する?



その 不満が溜まったとき
自分は、どんな人間になるのか。

不満を 噴出させる?
それとも
踏みとどまる?


踏みとどまるのは、美徳に思えるが

問題については、その個人内で秘されてしまって
世間が考える機会に 繋がらない気もする。



だけど
陰湿なやり方(子を持つ社員への嫌がらせや、あてこすりetc.)
も、悲しいものがある。




うーん。いくら考えても

ババーには
答えが出せないので

ここで思考放棄することにする真顔もやもや






あと
短編集な本書だが

各章には一貫して
『信頼』というものが描かれているように思う。 



どんな立場同士でも
互いへの『信頼』が崩れたとき
その関係は、破綻する。(そりゃそうだ)



上司と部下はもちろん。
恋人でも
夫婦でも

…親子 で あっても。




どうだろう。
『信頼』とは、なんだろう。



自分の意見を相手に押し付ける のではなく


まずは
相手の思いや、様子や、言葉に
意識を向けて 認識することからはじまる ように思う。



他者への 理解
に 向けての 努力 

から、はじまる。  



かな。
(つい
自分のことばかり、叫んでしまいがちになる けど ね。)